コラム

かつての「甲子園の星」、あの輝きをもう一度…藤浪晋太郎と北條史也は虎の救世主となるか

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阪神・藤浪晋太郎 (C) Kyodo News

阪神を襲ったアクシデント


 奇しくも2人揃っての“緊急招集”だった。

 糸原健斗、岩貞祐太、陽川尚将ら計7人が新型コロナウイルスに集団感染したタイガース。チームは今季限定で新設された「特例2020」に則り、25日に濃厚接触者も含めた計10人の登録を抹消。代替選手として二軍から大量9人を昇格させた。

 二軍の遠征先だった名古屋から急遽、ナイターが行われる神宮球場へ移動するメンバーの中には、藤浪晋太郎や北條史也もいた。


藤浪晋太郎の再出発


 本来なら29日からスタートする13連戦中に先発予定だった藤浪の役割は、すぐに明確になった。

 26日のヤクルト戦の5回。前日からブルペン待機していた右腕は、1-1の場面で2番手として登場。レギュラーシーズンでは、新人だった2013年以来となる、キャリア2度目のリリーフ登板だった。

 三塁側ファールゾーンにあるブルペンで肩を作り始めた段階からファンは身を乗り出すなど、注目度は圧倒的。しかし、イニングをまたいだ6回に村上宗隆に特大の決勝ソロを被弾。6敗目を喫し、久々の中継ぎはほろ苦いものとなった。


 それでも、失敗を引きずってはいられない。藤浪は早々とリリーバーの心構えを身を持って体感することになる。

 翌27日も、6点リードの8回にマウンドへ。プロ入り後初の連投に臨み、1回を1安打無失点。前夜の悔しさを晴らす力投で勝利に貢献した。


 コロナ禍で岩貞、岩崎と勝ちパターンの面々が不在。矢野監督も「中(中継ぎ)で使おうかなと思ってます。いろいろ台所事情が大変なので」と明かしたように、大きすぎる穴を埋めるべく背番号19に白羽の矢が立った。

 甲子園に帰ってきた29日には、3点リードの8回に登場してこれで“3連投”。今季最速159キロの直球を投げ込むなど、スタンドを沸かせるパフォーマンスを見せて零封。

 「死ぬほど緊張しました。先発の時とは違って、人の勝ちがかかった場面で投げることがこんなに緊張するとは思ってませんでした」

 どこか初々しさのにじむコメントからも、必死さが伝わる。

 8年目の今季は2年ぶりの白星を挙げたものの、好投が続かず9月中旬に二軍降格。予期せぬ形で巡ってきたチャンスを生かすべく、“新天地”で奮闘していく気概だ。


かつての「甲子園のスター」


 そして、もう一人。北條もライバル・木浪聖也の離脱で出番がやってきた。

 今春から遊撃のレギュラーを争ってきた構図も、結果を残せず脱落。8月下旬に二軍降格してからは再昇格できないでいた。

 そんな気持ちが表れたのは一軍合流後、初めての打席だった25日。3点劣勢の9回、先頭打者でヤクルトの守護神・石山泰稚のフォークを左前に運んで意地を見せた。


 言うまでもなく、藤浪と北條は甲子園が生んだスターとして揃ってタテジマに袖を通したファンにとって胸躍る存在。そんな2人が、プロの舞台でもがき苦しんでいる…。

 今年で言えば、藤浪が登板する試合で北條が失点につながる失策を犯す場面も何度かあった。そんなシーンを見る度に「北條といつか甲子園のお立ち台に立ちたい。高校野球から見ている人も喜んでくれると思うので」という藤浪から聞いた言葉を思い出す。


 文句なしの結果を残してつかんだ昇格切符ではない。ただ、チームの緊急事態で必要とされたことを、彼らが力にしないわけがない。今こそ、2人の底力を見たい。


文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)
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