競合不可避?「3人の有力候補」
10月26日に迫ったプロ野球ドラフト会議。今年は新型コロナウイルスの影響で多くの公式戦が中止となり、例年以上にプロ側の判断が難しくなっているが、そんな中でも上位候補に浮上してきた選手は決して少なくない。
そこで今回は、いよいよ迫ってきた“運命の日”を前に、現時点での「ドラフト1位候補」に注目。1カ月後には注目の的になっているであろう、今年の逸材たちを紹介したい。
ここ数年は高校生に指名が集中したが、今年の中心になりそうなのが大学生。その中でも最初の入札で重複する可能性が高いのが、早川隆久(早稲田大)・伊藤大海(苫小牧駒沢大)・佐藤輝明(近畿大)の3人になるだろう。
早川はリーグ戦通算成績でも負け越していることからも分かるように、実力はありながらも安定感に乏しいところがあったが、最終学年で一気に凄みを増してきた。
8月に行われた春のリーグ戦で最速155キロをマークすると、秋のリーグ戦でも明治大戦で17奪三振の快投。プロでも貴重な本格派の先発サウスポーとして、人気を集めることになりそうだ。
一方の伊藤は、下級生の頃から大学日本代表で抑えとして活躍。9月21日に行われた函館大戦でも、延長10回の激闘の末に0-1で敗れたものの、自責点0で19奪三振という抜群のピッチングを披露。20人を超えるスカウトの前で、改めてその実力を示した。
また、早川は完全な先発タイプだが、伊藤は先発・リリーフどちらでも力を発揮できるというのも魅力。入団後の起用法にも注目が集まる。
佐藤は巨人の1位候補として名前が挙がると、そこから一気に注目度が増した左のスラッガー。
まだまだ粗さが残り、プロでも最初は率を残すことに苦労する可能性が高いが、恵まれた体格を生かしたフルスイングは迫力十分。その長打力は日本人離れしたものがある。
加えて、大柄ながら脚力もあり、三塁と外野を守れるというのも長所。若手の中軸候補が不足している球団の指名が集中することになりそうだ。
即戦力投手ならトヨタ自動車・栗林良吏
即戦力という意味では、社会人の注目右腕・栗林良吏(トヨタ自動車)がNo.1と言えるだろう。
社会人1年目の昨年から見事な投球を見せていたが、9月に行われた都市対抗予選でも、相手を寄せ付けないピッチングを披露。さらに安定感が増したように見える。
コンスタントに150キロに迫るストレートと、多彩な変化球を高いレベルでコントロールすることができており、試合を作る能力の高さは見事だ。
1年目からローテーション入りの可能性が高いだけに、先発のコマ不足に悩む球団には最も欲しい投手といえる。
高橋宏斗のプロ志望で状況一変!
そして、ここまでに挙げた4人以上の人気になる可能性があるのが、高校生の快速投手・高橋宏斗(中京大中京)だ。
8月に行われた甲子園交流試合でも150キロ台を連発する圧巻のピッチングを見せており、昨年のドラフトで3球団が競合した奥川恭伸(星稜→ヤクルト)と比べても遜色ないレベルと言える。
ただし、高橋は早くから大学進学を希望しており、10月に入ってもプロ志望届を提出していなかった。それが10月6日、ついにプロ入りを表明したことで状況は一変。ここからの「ドラ1」戦線はガラリと変わってくることだろう。
さらに、高校生でもう一人「1位指名」が確実視されているのが、九州の大型右腕・山下舜平大(福岡大大濠)だ。
昨年まではまだまだ細く、大学進学が有力と思われていたが、この1年で見違えるほど体格が立派になり、スピードも150キロをコンスタントに超えるようになってきた。高橋に比べると完成度は劣るものの、スケールの大きさでは上回っているように見える。
将来のエース候補を確保したい球団が単独1位指名を狙うことも十分に考えられるだろう。
さらに、抽選を外した後の外れ1位、もしくは競合を避けての単独指名候補として有力なのが、中央大の牧秀悟と五十幡亮汰。
牧は右の強打者タイプで、内野であればどこでも守れるというのが大きな特長。打撃の確実性では、冒頭で触れた佐藤を大きく上回っている。
五十幡は、プロでも即No.1となれる脚力が最大の武器。肩の強さも申し分なく、守備と走塁の能力は群を抜いている。中軸候補を補強したい球団は牧、外野のリードオフマンが欲しい球団は五十幡を狙うことになりそうだ。
高橋についてはまだ進路が流動的だが、ここまで名前を挙げた8人は現時点でドラフト1位当確と言ってもよいだろう。残りの4人、高橋の動向次第では5人については、抽選を外す球団によって変わってくることになりそうだが、その候補については次回のコラムで取り上げたいと思う。
☆記事提供:プロアマ野球研究所