パでは8年連続で左打者が「首位打者」
昨年3月、日米をまたいで28年間のプロ野球人生に終止符を打ったイチロー氏。1990年代の前半に彗星のごとく現れた日本のスーパースターは、過去20年以上にわたって野球少年たちが最も憧れる存在であった。
イチロー氏や、その同時期に活躍した1歳下の松井秀喜氏が野球少年たちに与えた影響は大きく、彼らをマネて左打ちを試したという選手はたくさんいることだろう。
すべてがその影響とは言い切れないものの、近年のパ・リーグは首位打者を争う選手のほとんどが「左打ち」。2010年代で見ても、2010年の西岡剛(両打ち)と2011年の内川聖一(右打ち)以外、2012年から2019年までは8年連続で左打者が首位打者に輝いているのだ。
パは3割打者が0、セもわずかに2人だけ
首位打者を争う選手だけでなく、「右打ちの3割打者」が大きく減っている昨今。
同じく2010年代のパ・リーグでは、のべ64人が打率3割を記録した一方、そのうち右打者は22人。割合にして34.4%。3人に1人しか右打者がいなかった、ということになる。
一方、セ・リーグでは傾向が異なる。2010年代の3割打者はパ・リーグよりも多い80人。このうち、右打者は49人と、割合にして61.3%。パの1.8倍近い数字になっている。同期間の首位打者も、10人中7人が右打者だった。
そんな中、今季は3割常連の右打者が軒並み苦戦。10月8日終了時点で、9人いる3割打者のうち右打者は宮﨑敏郎(DeNA)と鈴木誠也(広島)の2人だけ。鈴木も正確には打率.2997となっており、がけっぷちにいる。
現在.316の宮﨑は、2017年に首位打者に輝いた実績を持つだけに、残り24試合で3割を下回るようなことは考えにくい。
しかし、もしここから大不振に陥って3割を切るようなことがあれば、「両リーグで右打ち3割打者が不在」ということになり、これは2リーグ制となった1950年以降で史上初の事態だ。
個人のタイトルに注目が集まる時期ではあるが、ここからは打者成績表の中の「右打者」にも注目していただきたい。
文=八木遊(やぎ・ゆう)