持ち味を生かして結果を残す
間違いなく、将来ヤクルトの主軸を担う選手になるであろう。大分の明豊高校から18年ドラフト4位で入団した濱田太貴だ。
高卒1年目となる昨季は、ファームで打率.254、8本塁打、52打点をマーク。9月には一軍の舞台を経験したが、2試合のみの出場に終わった。2年目の今季は、8月12日の巨人戦(東京ドーム)に代打で登場し、巨人の菅野からセンターへプロ初安打を記録。球界のエースから記念の一打を刻んだ。
その後は二軍に降格したものの、9月15日に再び一軍登録。同17日のDeNA戦(神宮)で「1番・右翼」でスタメンに名を連ねると、迎えた5回の第3打席。カウント0-1から左中間スタンドへプロ初本塁打を放ち、大器の片鱗を見せた。
この日の試合前に「チャンスをいただいているので、1打席1打席をすべて大切にして、自分のいいところをアピールできたらいいなと思います」と話していたが、持ち味の積極性でしっかりと結果を残した。
「追い込まれる前に」
積極的な打撃スタイルは子どもの頃から築き上げてきた。
「追い込まれたら打つのは厳しいと思うので、追い込まれる前にとか初球とか、甘い球がくると思うので、そこは小さい時から意識してやっています」
もちろん相手投手が簡単にファーストストライクを取りにくるとは限らないが、その気概こそ、20歳の若武者が持つ魅力である。今後は、その磨き上げた持ち味を成長の糧にしていきたい。
濱田を二軍監督時代から知る高津臣吾監督は「去年からずっと見ていて、いずれ大きいのを打てるバッターとして見ていた」と、大きな期待を寄せている。
スタメン出場の際は「1番」、あるいは「6番」や「7番」を任せていたが、9月25日の阪神戦(神宮)では初めて5番に抜擢した。
濱田本人は「いい打順は打ちたい」とクリーンアップへの意欲をのぞかせる。同じ九州出身で1学年上の4番・村上宗隆との「MH砲」が、チームを背負って立つ日もそう遠くないはずだ。
ここまで28試合に出場して27三振と粗さも目立つが、10月に入ってもフルスイングを変えることはない。9日の広島戦(マツダ)では5回に守備から途中出場し、6回の第1打席でレフトスタンドへ3号アーチ。「いい角度で上がってくれた」と2ボールから豪快な一発を放ち、勝利に貢献した。チームのムードを一変させる一振りは、ヤクルトファンに希望を与えてくれる。
ヒーローインタビューではまだ初々しさの残る濱田。これから何度もお立ち台に上がるシーンが増えていくはずだ。佳境を迎えたペナントレース。濱田のアピールは、最後まで続く。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)