一躍、ドラフトの目玉に
ドラフト会議まであと3週間を切った10月6日、大きなニュースが飛び込んできた。大学進学を第一希望としていた高橋宏斗(中京大中京)が、プロ志望に転じたのだ。
その一報が出たのは14時過ぎ。筆者は東都大学野球の取材で神宮球場のスタンドにいたが、視察していたスカウト陣もその話題で持ちきりとなっていた。
今年の有力候補は大学生が多く、投手であれば早川隆久(早稲田大)や伊藤大海(苫小牧駒沢大)、野手であれば佐藤輝明(近畿大)に人気が集中すると見られていたが、ここ数年は高校生の有力候補を重視する球団が増えていることを鑑みると、高橋に切り替える球団が続出することも十分に考えられる。
そこで、今回は高橋を狙うべき球団、高橋にとってプラスが多い球団について探ってみたい。
将来の「エース候補」が不足する巨人
まず、高橋を狙いたい球団となると、将来のエース候補が不足しているチームとなる。そうなるとまず真っ先に思い浮かぶのが巨人だ。
現状としては菅野智之が大エースとして君臨しているものの、かねてからの夢であるメジャー移籍が現実味を帯びてきており、もしかすると今年が巨人でのラストシーズンとなるかもしれない。次代のエース候補獲得は急務だ。
今季は高卒2年目の戸郷翔征がブレイクし、昨年のドラフトでも堀田賢慎や太田龍といった将来性のある本格派右腕を獲得してはいるものの、いわゆるアマチュア時代からの「誰もが知る大物投手」は不在。
9月に行われた編成会議後には「強打の外野手が最優先事項」と報道されていたが、チーム編成を考えると高橋を第一候補として考えるべきではないだろうか。
先発投手陣に衰えがみえる楽天
巨人以上に高橋の需要が高いと考えられるのが楽天だ。
今シーズンは新加入した涌井秀章の奮闘もあって何とかAクラスに踏みとどまってはいるとはいえ、チームを支えてきた則本昂大と岸孝之に衰えが見られており、先発に転向した松井裕樹も再びリリーフへと配置転換されている。
過去10年の間に上位指名で獲得した高校生投手はというと、松井以外に釜田佳直や森雄大、安楽智大に藤平尚真がいるが、誰も今シーズンのローテーションに加わることができていない。巨人以上に数年後の先発投手陣が見えない状況となっている。
フォームは少し違うものの、高橋のピッチングスタイルは則本に通じるものがある。そういう意味では、球団にとっても本人にとってもプラスとなる部分は多いだろう。
地元・中日は1位指名の可能性大
無視できないのは、やはり地元の中日だ。
高橋のプロ志望発表を受けて、加藤宏幸球団代表はドラフト戦略について考え直す必要が出てきたとコメントしており、地元の好素材を最優先するという方針を打ち出していることを考えると、1位指名の可能性は非常に高い。
しかし、チーム事情を考えると少し異なる側面も見えてくる。
投手陣は国内FA権を取得したエースの大野雄大の去就が気がかりではあるが、柳裕也に梅津晃大、勝野昌慶や清水達也、さらに山本拓実など、若い年代の有望株は比較的揃っている。
一方の野手は根尾昂、石川昂弥と1位指名で高校生の大物選手を2年連続で獲得してはいるが、若手の有望株は決して多くなく、高齢化が進んでいる外野など手薄な感は否めない。
強打者タイプであれば冒頭で紹介した佐藤、リードオフマンタイプであれば圧倒的なスピードが魅力の五十幡亮汰(中央大)などを優先した方が、チーム事情にはマッチしていると言える。
育成環境はロッテと日本ハムが魅力的
最後に、高橋にとって望ましい球団という視点で考えるのであれば、ロッテと日本ハムが浮上してくる。
ロッテは今シーズン、種市篤暉がトミー・ジョン手術で離脱したが、ほかにも高校卒の若手投手が多く育ってきており、吉井理人投手コーチのマネージメント能力の高さも光る。
昨年入団した“令和の怪物”佐々木朗希の存在も大きく、二人で切磋琢磨してレベルアップしていける環境というのは魅力的である。
日本ハムはダルビッシュ有(カブス)に大谷翔平(エンゼルス)と、高校卒の大エースが誕生してきた系譜が少し薄れているのが気がかりだが、若手に早くからチャンスを与える環境という点は変わっていない。
エースの有原航平がメジャー移籍ということになれば、一気に投手陣の顔ぶれを入れ替える必要があり、そうなった時に抜擢しやすいというのは高橋にとってプラスと言えるだろう。
即戦力という観点では早川や伊藤、栗林良吏(トヨタ自動車)などに比べれば当然劣るものの、高校生としては十分な完成度を誇っており、最終学年で大きく成長した点も高橋の大きな魅力である。
総合的に考えれば、ドラフトの目玉となってもおかしくない存在なだけに、今後の高橋を巡る各球団の動向にぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所