コラム 2020.10.16. 11:01

ヤクルト・五十嵐亮太、己と向き合い戦った23年間

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溌剌とした表情で引退会見に臨んだヤクルト・五十嵐亮太投手(画像=ヤクルト球団)

サイドスローにも挑戦


 今季限りでの引退を表明したヤクルトの五十嵐亮太が、23年間の現役生活を振り返り「プロ野球選手になれて良かった」と素直な気持ちを口にした。

 97年ドラフト2位でヤクルトに入団した右腕は、豪速球が代名詞だった。石井弘寿(現一軍投手コーチ)とのコンビは「ロケットボーイズ」と呼ばれ、04年には当時の日本最速タイとなる158キロをマーク。この年37セーブを挙げて、最優秀救援投手に輝いた。

 そんな右腕が、15日の引退会見で「抑えるためだったらどんな方法でもいいと思った時期もありました。恥ずかしいのであんまり言いたくないんですけど、サイドスローからも投げてみたりした」と明かした。

 かつて、「自分がやっていて足りないと思うことを、そのときに気づいてやっている」と話していたが、野球への飽くなき挑戦が男の原動力となっていた。


トミー・ジョン手術も経験


 09年のオフにはFA権を行使してメジャーリーグに挑戦し、83試合に登板。13年にソフトバンクで日本球界に復帰したあと、19年に古巣のヤクルトへ10年ぶりの復帰を果たした。

 23年間リリーフとして打者と対峙してきた五十嵐だが、常に自分自身とも戦い続けてきた。

 昨季、史上7人目となるNPB通算800試合登板が目前となっていた五十嵐に、プロで長く投げ続けることができた要因について聞いたところ、こんな風に話してくれた。

「僕も自分自身で何が正しいかわかっていない部分もあるので難しいんですけど、一番は怪我をしないように、どうやって1年間、もしくはその先を見据えて取り組んでいくかというところは常に心掛けています。やっぱり肩を怪我してしまうとなかなか復帰は難しいので、肩だけは故障しないようにとは思いますね」

 06年に右肘靱帯を断裂し、トミー・ジョン手術を受けた。07年のシーズンをリハビリに費やし、08年には見事カムバックを果たす。怪我とも向き合いながら、マウンドに立ち続け、ここまで日米通算905試合に登板してきた。

 プロの世界で生きていく上で「誰よりも速い球を投げるということが必要なことだと選択した」という五十嵐。それでも「時間が経つにつれてそれだけではやっていけない。生きていくためにどうするかを考えた。対応能力は高い方ではないんですけど、自分なりに考えて選択してきた道は悪くなかった」と胸を張った。

 今の自分に何が必要か――。プロとして己と向き合い、戦い続けたセットアッパー。引退試合に向けては「見ている方を、まだまだできるんじゃないかという思いにさせたい」と力強く語った。背番号「53」が、ファンの胸をもう一度熱くさせるはずだ。


取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)

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