開幕13連勝とともに飾ったメモリアル勝利
巨人・菅野智之は、NPB通算100勝の記録達成まで残り13勝として今季を迎えた。
腕を先に動かす新投球フォームに変えた効果は抜群で、開幕戦から負けなしで勝ち進み、2004年に岩隈久志が記録した開幕投手からの12連勝をクリア。この時点で通算99勝として、10月6日のDeNA戦に登板した。結果はご存じのとおり、7回3失点でまとめ、開幕投手からの13連勝とともに、NPB通算100勝目を飾っている。
10月13日の対広島戦で今季初黒星を喫し、その記録を伸ばすことはできなかったが、それでもプロ入り8年目、通算192試合目の登板での達成は、かなりのスピード記録だ。そんな通算100勝達成時、歴代の投手たちはどんな成績を残していたのだろうか――。
レジェンドたちを上回る勝率をマーク
調べたのは平成元年(1989年)以降に入団した投手で、菅野同様にプロ入り8年目以内に通算100勝を挙げた投手たちの成績。菅野を除くと、わずか6人しか達成していなかった。なお、在籍球団は通算100勝達成時点のものになる。以下が100勝達成時の年齢、試合数、成績、そして通算成績だ。
<7年目>
▼ 野茂英雄(1989年入団)
年 齢:27歳(ドジャース)
試合数:185試合
成 績:16勝11敗 防御率3.19
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通 算:201勝155敗 1セーブ 防御率3.86(※日米通算)
<8年目>
▼ 西口文也(1994年入団)
年 齢:30歳(西武)
試合数:215試合
成 績:15勝10敗 防御率3.51
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通 算:182勝118敗 6セーブ 3ホールド 防御率3.73
▼ 上原浩治(1998年入団)
年 齢:31歳(巨人)
試合数:191試合
成 績:8勝9敗 防御率3.21
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通算成績:134勝93敗128セーブ 104ホールド 防御率2.94(※日米通算)
▼ 松坂大輔(西武/1998年入団)
年 齢:25歳
試合数:191試合
成 績:17勝5敗 防御率2.13
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通 算:170勝108敗 2セーブ 3ホールド 防御率3.5(※日米通算)
▼ ダルビッシュ有(2004年入団)
年 齢:25歳(レンジャーズ)
試合数:177試合
成 績:16勝9敗 防御率3.90
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通算成績:164勝94敗 1ホールド 防御率2.69(※日米通算)
▼ 田中将大(2006年入団)
年 齢:25歳(ヤンキース)
試合数:176試合
成 績:13勝5敗 防御率2.77
――――――
通算成績:177勝81敗 3セーブ 防御率2.94(※日米通算)
西武一筋で21年にわたり現役を続けた西口文也以外は、全員メジャーに移籍しているように、プロ入りから8年目までに100勝を達成した選手たちは、NPBでも驚異的な成績を残した選手ばかりだ。通算成績を見ても、メジャー移籍後に本格的にリリーフへ転向した上原を除けば、全員が通算で150勝以上をマーク。そして全員が、NPBの投手タイトルの最高峰である沢村賞を受賞している。
また、通算100勝までにかかった試合数を見ると、もっとも少なかったのはメジャー初登板の試合で通算100勝を決めた田中将大。176試合での達成はNPB史上でもスタルヒン(165試合)に次ぐ2位に相当する記録だ。メジャー移籍前年(2013年)に挙げたシーズン24勝がペースを上げる要因となった。
今回達成した菅野は192試合目での達成。松坂大輔や上原浩治には1試合及ばなかったが、通算100勝時点における菅野の通算勝率は「.680」と、松坂(.637)や上原(.658)を上回った。一時は勝ち星に恵まれない時期もあったが、今季達成した開幕13連勝で勝率を大きく引き上げたようだ。
これから先、菅野はどのようなキャリアを歩み、どのような成績を残していくのか――。日本を代表する右腕の今後を楽しみにしたい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)