指名人数は減るかと思われたが…
10月26日に行われた2020年のドラフト会議。新型コロナウイルスの影響で12球団がそれぞれの部屋に分かれ、史上初めての“リモート形式”での開催となったが、指名自体にはどのような傾向があったのだろうか…。あらゆる視点から分析してみたい。
まず例年との違いといえば、何といっても公式戦の大幅な減少だ。中止となった主な全国規模の大会を挙げると、以下の通りとなっている
<高校野球>
8月:全国高等学校野球選手権
11月:明治神宮野球大会
<大学野球>
6月:全日本大学野球選手権
11月:明治神宮野球大会
<社会人野球>
5月:全日本クラブ野球選手権
7月:社会人野球日本選手権
高校野球の春季大会や、大学野球の春季リーグ、社会人野球の日本選手権出場権がかかる対象大会もほとんどが中止。4月から6月の3カ月間は数えるほどの公式戦しか行われなかった。
となれば、選手を獲得するプロ側の判断材料も必然的に減り、それによって支配下で指名する選手も減るのではないか…というのが事前の予想だった。
しかし、ふたを開けてみると、支配下で指名された人数は昨年と全く同じ「74人」。育成選手に関しては、昨年の33人を大きく上回る「49人」が指名される結果となっている。
様々な事情はあるにせよ、今年の候補選手は実力者が多く、いわゆる豊作だったと言うことができそうだ。
予想通り?「大学生」の躍進
一方で、その内訳を見るとまた違った側面も見えてくる。
この5年間に支配下で指名された選手を「高校生」「大学生」「社会人」「独立」の4カテゴリーごとに分けてみると、以下のような結果となった。また、かっこ内の数字は全体に占める割合を示している(※2016年日本ハム6位の山口裕次郎は入団を拒否したため、ここではカウントしない)。
<高校生>
2016年:34人(39.5%)
2017年:30人(36.6%)
2018年:37人(44.6%)
2019年:35人(47.3%)
2020年:30人(40.5%)
<大学生>
2016年:33人(38.4%)
2017年:23人(28.0%)
2018年:26人(31.3%)
2019年:25人(33.8%)
2020年:32人(43.2%)
<社会人>
2016年:18人(20.9%)
2017年:23人(28.0%)
2018年:18人(21.7%)
2019年:11人(14.9%)
2020年:10人(13.5%)
<独立リーグ>
2016年:1人(1.2%)
2017年:6人(7.3%)
2018年:2人(2.4%)
2019年:3人(4.1%)
2020年:2人(2.7%)
こうして見ると、大きく人数を増やしたのは「大学生」であることがよく分かる。
2016年以来の30人オーバーとなり、全体に占める割合では過去5年で最高の数字に。今年のドラフトは早くから大学生が中心になると言われていたが、支配下の指名に関してはその通りの結果となったと言えそうだ。
一方、過去2年間大きく数字を伸ばしていた高校生は減少となった。
高校生の場合、短期間で成長する選手も多く、それを確かめる機会である春季大会が行われなかった影響は大きかったと言えるだろう。くわえて、毎年春・夏の甲子園でブレイクする選手も少なからず存在しており、その二大大会が行われなかったことも大きな影響を与えている。
社会人についても微減となっているが、これは昨年から続いている傾向であり、今年に限ったことではなさそうだ。
企業チームの減少はいったん歯止めがかかり、新規参入チームも出てきてはいるが、今シーズン終了後には三菱重工関連のチームが統合されるなど、再び厳しい状況が続いている。独立リーグに新たな活躍の場を求める選手も増えていくことになりそうだ。
大きく人数を増やした「育成指名」
次に育成選手のデータをみていこう。
<高校生>
2016年:10人(35.7%)
2017年:19人(59.4%)
2018年:9人(42.9%)
2019年:16人(48.5%)
2020年:22人(44.9%)
<大学生>
2016年:7人(25.0%)
2017年:10人(31.3%)
2018年:6人(28.6%)
2019年:11人(33.3%)
2020年:21人(42.9%)
<社会人>
2016年:2人(7.1%)
2017年:0人(0.0%)
2018年:1人(4.8%)
2019年:0人(0.0%)
2020年:0人(0.0%)
<独立リーグ>
2016年:9人(32.1%)
2017年:3人(9.4%)
2018年:5人(23.8%)
2019年:6人(18.2%)
2020年:6人(12.2%)
まず大前提として、社会人の企業チームの選手は育成ドラフトでは指名しないというルールがあることから、指名されている選手はクラブチーム所属の選手のみということで非常に少ない数字となっている。
今年の特徴としては高校生・大学生ともに過去5年間で最多の数字となったという点が挙げられる。特に大学生は昨年の倍近い数字となっており、支配下での指名と同様に豊作だったことが伺える。
しかし、高校・大学ともに増加した原因はそれだけではないだろう。
選手の獲得に動いているのはプロだけではなく、大学や社会人チームもスカウティングを行っている。こちらもプロ側と同様に判断材料が少なかったゆえに、大学からの推薦や、社会人からの内定を出すのが例年以上に厳しいと言われていた。
それが高校生・大学生ともに、過去最多のプロ志望届提出と育成選手の大量指名に繋がったとみられる。
今年のドラフトで指名された育成選手の中には、岡本大翔(米子東→巨人・育成1位)や、笠島尚樹(敦賀気比→巨人・育成3位)、宇田川優希(仙台大→オリックス・育成3位)、佐野如一(仙台大→オリックス・育成5位)などは、育成でのプロ入りに難色を示していると報道されている。
当然、プロ側は事前に「育成での指名であれば入団しない」という情報は掴んでおり、それでも今年のような状況であれば翻意も可能と判断したようだ。この指名については賛否両論があるが、これもコロナ禍による影響の一つであることは間違いない。
様々な影響があった今年のドラフトだが、結果として昨年より多くの選手が指名を受けたことは、プロ野球界にとってもアマチュア球界にとっても喜ばしいことではないだろうか。ここから一人でも多く、ファンを熱狂させるようなプレーを見せる選手が飛び出してくることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所