コラム 2020.12.17. 20:00

苦悩の中で見えた新たなツール【コロナ禍の野球を検証する】

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ファン感謝イベントで来季のチームスローガンを発表する阪神・矢野監督=甲子園(代表撮影)

第3回:オンラインの活用


 今年の流行語大賞は「三密」、毎年恒例の京都・清水寺で行われる今年の漢字一文字も「密」。世相を表す表現はコロナに明けて、コロナに終わった。

 コロナ禍のスポーツ界も苦悩の1年となった。東京五輪の延期を始め、野球やサッカーらプロスポーツの開催、さらには学生スポーツでは部活動すら満足に行われない異常事態に直面した。これらに限らず芸術やイベントなども「不要不急」の枠から除外されて、表現の場を失う。世界中がコロナに翻弄された。

 12月。ようやくレギュラーシーズンを終えたプロ野球界では、恒例のファン感謝デーが行われた。しかし、例年のように満員のスタンド風景はなく、選手との触れ合いも限定的。ここにもコロナの影は色濃く残っていた。

 同月11日、巨人の「2020シーズン感謝祭」は、相撲の聖地・蔵前国技館で行われた。本来であれば本拠地の東京ドームで開催されてきたイベントだが、今年は開幕の延期に始まり、120試合のシーズン短縮や先行きが不透明な事情も手伝って例年通りとはいかなかった。集まったファンも抽選で選ばれた2300人だけ。あとはオンラインで会場の様子を楽しむしかない。

 これに先立つ5日には、ソフトバンク、ロッテ、阪神ら6球団が同様の催しを行ったが、それぞれにコロナ禍の工夫が凝らされていた。

 変わったところでは、西武が高級ホテルで行ったファン感か。メイン会場の新高輪プリンスホテルには、選手らと共に前売りチケットを購入したファン261人が着席、ソーシャルディスタンスを確保しながら高級弁当とノンアルコールドリンクを楽しみながら交流の場を満喫。この模様は他会場と「ニコニコ動画」を通じて配信され、ファンからの質問に選手が答えるなど相互交流が施された。

 多くのチームは同時期にオンラインでの野球教室も開催して「ウィズコロナ」の時代の新様式に取り組んでいる。

 6月19日に開幕した当時は無観客。やがて7月中旬から上限5000人の制限を設けて試行錯誤を続けて来た観客動員は、9月に入ると収容人数の50%、さらには横浜スタジアムでは「東京五輪への技術検証」として約86%にあたる2万7850人の入場も認めた。こうした危機的な特殊事情の中で光が当てられたのがオンラインの活用だった。


コロナが促進させた新たな取組


 プロの興行とは、ファンがあって成り立つのは自明の理だ。

 各球団の収支を見ると、約半数は観客動員による収入が占める。これに球場でのグッズを含めた物販や球団によっては電車利用による収入なども親会社を潤している。それが今季は観客動員ゼロから出発して最後まで満員のスタンドは望めない。シーズン当初に関西大学の宮本勝浩名誉教授が試算したプロ野球全体の経済損失は約720億円とされている。近年でこれだけ暗い材料の揃ったシーズンもなかった。

 こうした中で、各球団がこれまで以上に積極的に取り入れたのがネットの活用である。球場に足を運べないファンとの交流や、チーム側からの情報発信。また選手とファンを結ぶツールとしてオンラインの活用が強みを発揮した。

 ビジネス面でも日頃は球場で販売していたグッズをネットに広げることにより、全国展開も可能になる。ある球団の営業担当は「今後の新しいスタンダードになっていく可能性を感じる」と手応えを口にする。これまで球場にやって来るファンを中心に展開されていたビジネスが時代と共に変化していくのは当然のことだ。しかし、そうした意識変革をコロナが加速させたのなら何とも皮肉な出来事である。

 選手たちは、ファンが球場に詰めかけた時、改めてその有り難さを痛感している。声は出せなくても拍手の大きさで熱を感じた。

 オンラインによるファン感謝デーを終えた阪神の矢野燿大監督は「何年後かに、ああいうこともあったと話せる時が来ることを信じてやるしかない。貴重なファン感やったと思う」と語っている。

 苦しんだ分だけ、得た教訓もまた大きい。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

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