現代の“再生工場”は?
12月7日に神宮球場で行われた『プロ野球12球団合同トライアウト』。今季限りで選手契約を結ばないことを伝えられた選手たちが、来季の現役続行をかけて戦いに挑んだ。
今年出場した選手の中では、風張蓮(前ヤクルト)のDeNA入りが早々に決まり、ほかにも宮台康平(前日本ハム)がヤクルトと契約を結ぶなど、チャンスを掴んだ選手が続々と出てきている。
一度「戦力外」となった選手が復活することは非常に稀なことではあるが、かつては野村克也監督時代のヤクルトで多くの選手が戦力となり、その手腕は『野村再生工場』とも言われた。
そこで今回は、戦力外となった選手を獲得して再生している現代版の再生工場はどの球団なのか、過去5年間のデータから検証してみたい。
なお、ここでは合同トライアウトに参加せずに再契約先が決まった選手と、独立リーグを経て復帰した選手も含め、メジャーから復帰した選手と外国人選手については対象外とした。
近年の「戦力外選手」獲得数
※2015年~2019年のオフ▼ ロッテ:10人
田中靖洋(2015年:前西武)
三家和真(2016年:前広島)
猪本健太郎(2016年:前ソフトバンク)
柴田講平(2016年:前阪神)
李 杜軒(2017年:前ソフトバンク)
大隣憲司(2017年:前ソフトバンク)
細川 亨(2018年:前楽天)
茶谷健太(2018年:前ソフトバンク)
西巻賢二(2019年:前ロッテ)
鳥谷 敬(2019年:前阪神)
▼ ヤクルト:9人
坂口智隆(2015年:前オリックス)
鵜久森淳志(2015年:前日本ハム)
榎本 葵(2016年:前楽天)
大松尚逸(2016年:前ロッテ)
田代将太郎(2017年:前西武)
寺原隼人(2018年:前ソフトバンク)
嶋 基宏(2019年:前楽天)
今野龍太(2019年:前楽天)
長谷川宙輝(2019年:前ソフトバンク)
▼ DeNA:9人
久保裕也(2015年:前巨人)
白根尚貴(2015年:前ソフトバンク)
田中浩康(2016年:前ヤクルト)
武藤祐太(2017年:前中日)
中川大志(2017年:前楽天)
中後悠平(2018年:前ロッテ)
中井大介(2018年:前巨人)
古村 徹(2018年:前DeNA)※独立リーグを経て復帰
高城俊人(2019年:前オリックス)
▼ 楽天:8人
栗原健太(2015年:前広島)
川本良平(2015年:前ロッテ)
山内壮馬(2015年:前中日)
金 無英(2015年:前ソフトバンク)
細川 亨(2016年:前ソフトバンク)
久保裕也(2016年:前DeNA)
渡辺直人(2017年:前西武)
由 規 (2018年:前ヤクルト)
▼ 西武:5人
竹原直隆(2015年:前オリックス)
松井稼頭央(2017年:前楽天)
廖 任磊(2018年:前巨人)
松坂大輔(2019年:前中日)
森越祐人(2019年:前阪神)
▼ 巨人:4人
山下亜門(2018年:前ソフトバンク)
中島宏之(2018年:オリックス)
田中豊樹(2019年:前日本ハム)
八百板卓丸(2019年:前楽天)
▼ 中日:3人
多村仁志(2015年:前DeNA)
岩崎達郎(2016年:前楽天)
松坂大輔(2017年:前ソフトバンク)
▼ 日本ハム:3人
米野智人(2015年:前西武)
実松一成(2017年:前巨人)
金子千尋(2018年:前オリックス)
▼ オリックス:3人
大田阿斗里(2015年:前DeNA)
岩本 輝(2018年:前阪神)
成瀬善久(2018年:前ヤクルト)
▼ 阪神:2人
柳瀬明宏(2016年:前ソフトバンク)
山崎憲晴(2017年:前DeNA)
▼ ソフトバンク:0人
▼ 広島:0人
“野村再生工場”のイメージ通り…?
最も多いのはロッテの10人。この中で最も戦力となったのが田中だ。勝ち試合での登板こそ多くないものの、昨年は44試合に登板して4勝・2ホールド、防御率2.72という成績を残した。
今年は故障で8試合の登板に終わったものの、来季も貴重なリリーフ右腕として期待がかかる。その他は主力クラスの活躍を見せている選手はいないが、茶谷や西巻ら今後の成長が見込める若手に期待だ。
ロッテに続くのがヤクルトとDeNAの9人。ヤクルトは何と言っても坂口の存在が大きい。
入団した2016年から3年連続で150安打以上を放ち、2018年には8年ぶりに打率3割をクリアするなど、見事な復活を遂げた。野村監督時代の選手たちをも上回る活躍ぶりだ。
ほかにも鵜久森や大松、田代も貴重な一軍戦力となり、長谷川と今野の若手2人も今後に期待がかかる。獲得した選手の成功率という意味ではNo.1と言えるだろう。
DeNAも武藤や中井、高城の3人が現在も戦力となっており、上手くチームの弱点を補っている印象だ。
その一方で楽天、西武はそれなりに選手を獲得しているものの、あまり戦力にはなっていないのが現状だ。
楽天は渡辺、西武は松井と松坂といった、かつての主力に“最後の場”を与える狙いの獲得も目立つ。再生という意味では機能しているとは言い難い。
改めて見てみると、再生に成功した選手の数ではヤクルトが頭一つ抜けており、ロッテとDeNAが続いている印象だ。
今年も冒頭で触れたトライアウト参加選手以外に、内川聖一(ソフトバンク→ヤクルト)や福留孝介(阪神→中日)、さらには能見篤史(阪神→オリックス)といった大物も、球団の構想から外れて新天地へ移籍している。
彼らは果たして再び一軍の戦力として輝くことができるのか…。そのあたりも来季の注目ポイントのひとつとなるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所