防御率は改善も…
コロナ禍で短縮シーズンとなった今季。田中将大は3勝3敗に終わり、渡米後初めて勝ち越すことができなかった。
思い起こせば、開幕前の7月上旬。打撃練習でチームメートのジャンカルロ・スタントンが放った打球が頭部を直撃。軽度の脳震とうという診断だったが、大事をとって、約10日遅れで開幕を迎えた。
シーズンに入ると、脳震とうの影響は感じさせず、計10試合に登板。3勝3敗、防御率3.56をマーク。防御率を前年の4.45から大幅に良化したが、各種データを掘り下げて見ると、投球内容自体は決して良くなかった。
まず目についたのが、ピンチでの粘り強さに欠けていた点だ。
今季の得点圏被打率は.321(28打数9安打)。分母が少ないため、あくまでも参考程度だが、メジャーで自己ワーストだった2019年の.295から悪化した。ただし、防御率が良かったのは、そもそも得点圏の場面が少なかった影響が大きい。
球種の割合を見ると、今季の田中はスライダーを多投していたことが分かる。その割合は実に37.7%に達し、2番目に多いスプリットの24.8%を大きく上回った。
一方で、そのスライダーの被打率は.260。19年までの通算.190と比較すると、今季のスライダーは打ち込まれていたことがわかるだろう。
去就にも注目が集まる
改めて、メジャー7年目の今季は、防御率の“見栄え”こそ良かったが、実際は苦しいシーズンだった。
それを証明するのが、FIP(Fielding Independent Pitching=守備から独立した投球内容)という指標だ。FIPを簡単に説明すると、守備の関与しない与四球・奪三振・被本塁打という3項目だけで投手を評価する指標である。
3項目以外の、例えばゴロやフライはチームの守備力や運に左右されてしまう。そのため、野手が関与しないプレーだけを抽出したものだ。この数値は防御率と同じように、数値が低いほど投手のパフォーマンスが高いということになる。
説明が長くなってしまったが、今季の田中のFIPは4.42。これはメジャー7年間でワーストだった。防御率との乖離は大きく、イメージ以上に苦しいシーズンだったことは間違いない。
期待されたポストシーズンでは、2試合に登板して0勝1敗、防御率12.38と散々な結果に終わり、後味の悪い終わり方となったしまった。
来季は再びピンストライプのユニホームに袖を通すのか。それとも他チームのユニホームを着るのか…。どちらにしても、真価の問われる1年となりそうだ。
文=八木遊(やぎ・ゆう)
田中将大
ポジション:投手投打:右投右打
生年月日:1988年11月1日(32歳)
身長・体重:191センチ・99キロ
出身地:兵庫県
<今季成績>
登板:10試合
投球回:48.0回
防御率:3.56
勝敗:3勝3敗
奪三振数: 44個
奪三振率:8.25
与四死球:10個