コラム 2020.12.30. 11:09

炎上騒ぎや乱闘を招く事態にも…プロ野球・2020年の「失言&暴言」まとめ

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“3密”回避を徹底も… (C) Kyodo News

“異例のシーズン”に起こった珍事


 新型コロナウイルスの感染拡大により、ペナントレースの開催も危ぶまれた2020年のプロ野球…。

 開幕は予定よりも3カ月遅れ、当初は「無観客」の状態からのスタート。「交流戦」や「オールスター戦」も中止となり、セントラル・リーグでは「クライマックスシリーズ」も中止に。シーズン途中にコロナの感染者が出たチームもあったが、どうにか120試合の日程を全チームが消化することができた。


 まさに“異例のシーズン”となった今年の戦いだが、いまになって振り返ってみると、本当にさまざまな出来事があった。そこで今回は、「プロ野球B級ニュース」でお馴染みの久保田龍雄氏に、2020年の野球界で起こった“珍事件”を掘り起こしてもらった。

 第3回目は、「失言&暴言 編」だ。


広島・會澤翼への危険球で…


 コロナ禍が続くなか、さまざまな対策を立てながら行われた2020年シーズン。球場の入場者制限などで、テレビやネットで観戦するファンも増えたことから、実況アナの“失言”も、例年以上に論議の的になった。


 頭部死球に対する実況アナの発言が不適切として炎上騒ぎになったのが、7月31日の巨人-広島だ。

 1点を追う広島は5回一死、會澤翼がこの日2度目の打席に立ったが、巨人の先発・畠世周の2球目、149キロ直球を頭部に受け、両手で頭を押さえ込みながら倒れ込んだ。

 一歩間違えば命にもかかわりかねないシーンに場内はざわついたが、それ以上に騒然となったのが、テレビ中継を見ていたファンだった。

 會澤が頭部死球を受けた直後、この試合を中継していた日本テレビの上重聡アナは「あーっと、頭へのデッドボール。ジャイアンツここでアクシデントです」「ジャイアンツ、アクシデント。畠、危険球退場です」などと、明らかに巨人寄りの実況。たしかに、この日が474日ぶりの先発だった畠にとっては、あと2つアウトを取れば、勝利投手の権利を得るところまできていた。

 しかし、だからと言って、頭にボールをぶつけられた選手よりも、危険球退場になったことで勝利が幻と消えたことのほうが“アクシデント”だったと受け止められるような言い方は、配慮を欠いていたと言わざるを得ない。

 これにはネット上でも「いや、アクシデントは頭部死球を当てられた広島だろ」「頭部死球当てといて、『ジャイアンツにアクシデント』って何よ。プロなら言葉選べよ」など、非難の声が相次いだ。


 幸い、頭頂部をかするような当り方だったため、會澤はすぐに立ち上がり、自力で一塁まで歩いた。そして、いったんベンチに下がり、治療を終えて再び姿を現すと、両軍ファンから大拍手が贈られた。

 たとえ、読売の系列局であっても、この場面ではやはり會澤を気遣うほうに比重を置くべきだったし、“松坂世代”の一人として、PL学園~立大のエースとして活躍した野球人の上重アナには、なおさら配慮が欲しかったというのが、ファンの共通の思いだろう。


ベンチ前の声出しでまさかの炎上騒ぎ


 試合前にチームの声出し役として口にした言葉が、「相手投手に対して失礼」と炎上する結果を招いたのが、巨人の3年目の内野手・北村拓己だ。


 8月4日の阪神戦で記念すべきプロ1号を放った北村は、翌5日の試合前、ベンチ前の円陣で声出し役に指名されると、「相手ピッチャー、藤浪(晋太郎)さんですけど、当てられる前にしっかりバットに当てて、初回からエンジン全開でいきましょう!」とナインを鼓舞。

 与死球の多い藤浪を揶揄するような発言内容はともかくとして、円陣の中で発した言葉だったので、ふつうならオフレコの話で済んでも不思議のないところだ。北村も内輪でのやり取りを前提に、冗談めかして言ったと思われる。


 ところが、このシーンを映した動画が、球団オフィシャルのSNSにて投稿されてしまい、多くのファンの目に触れたことから、炎上騒ぎに発展する。

 その後、動画はすぐに削除され、謝罪文も投稿されたのだが、すでにネット上で拡散されたあととあって、ファンの間で発言の是非をめぐり、激論が交わされた。

 「相手をリスペクトするくらいはしてほしい」と非難の声が上がる一方、「北村が炎上する理由がわからない。常に勝気でいなければ、連戦連勝は難しいんですよ」と声出しを擁護するファンもいて、グラウンド外での“伝統の一戦”もヒートアップ。 

 いつどこで動画が流出するかわからないご時世だけに、改めてプロ野球選手は日頃のどんな言動にも細心の注意が必要という教訓を残した。

 ちなみに、試合は巨人が4-1で勝利したが、両軍とも死球はゼロ。藤浪も味方の拙守絡みで4失点ながら、8回を被安打4、奪三振7、与四球1の自責点1と、グラウンド外の論争など、どこ吹く風の好投だった。


“3密”乱闘寸前の事態が勃発


 コロナ禍で“3密”の徹底が叫ばれるなか、暴言がきっかけで、ソーシャルディスタンス無視の乱闘騒ぎが起きたのが、10月3日のヤクルト-広島だ。


 事件が起きたのは、ヤクルトが0-13と大きくリードされて迎えた、8回裏・ヤクルトの攻撃中。一死一塁で、青木宣親が2ボールから菊池保則の3球目、143キロ直球を左ふくらはぎに受けた。あまりの激痛に、青木は患部を押さえて倒れ込み、トレーナーに肩を抱かれるようにして退場した。

 代走・中山翔太が送られて試合再開となったが、次打者・山田哲人が打席に入ると、広島ベンチから「(死球を)もう一発」という意味のヤジが聞こえてきた。

 これに対し、近くにいたヤクルト・森岡良介三塁コーチが「何がもう一発や!」と激怒。たちまち両軍ナインがグラウンドに飛び出し、本塁付近で“密状態”の小競り合いに発展した。


 混乱のなかで、広島・佐々岡真司監督から事情を確認したヤクルト・高津臣吾監督が選手たちをなだめ、乱闘は寸前で回避されたが、試合再開時に警告試合が宣告。ヤジを原因とする試合中のトラブルは過去にもあったが、今季は入場者制限や大声禁止、鳴り物応援自粛などで球場全体が静かになり、ふだんより聞こえやすくなっていたのも事実である。

 これをきっかけに、故意死球をほのめかすような暴言は、封印といきたいものだ。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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