コラム 2021.01.04. 07:09

今秋ドラフトの目玉になるか…? 筑波大・佐藤隼輔の実力に迫る

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筑波大・佐藤隼輔投手 [写真提供=プロアマ野球研究所]

スカウト陣の注目を集める“本格派サウスポー”


 コロナ禍に揺れた2020年が終わり、新たな年がスタート。年明け早々から「緊急事態」という文字が散見されるなど、まだまだ予断を許さない状況が続いているが、時計の針は止まってはくれない。ドラフト戦線は既に動き始めている。

 プロアマ野球研究所では、今年も引き続きドラフト候補を取り上げ、その実力を分析してご紹介していきたい。

 今回は、高校時代は大きな大会と無縁ながら、今や大学球界を代表する投手に成長を遂げた“本格派サウスポー”を取り上げる。


▼ 佐藤隼輔(筑波大)
・投手
・182センチ/81キロ
・左投左打
・仙台高出身

<リーグ戦通算成績>
22試(125.2回) 8勝4敗 防御率1.07
奪三振122 被安打87 与四死37 自責点15
奪三振率8.74 被安打率6.23 四死球率2.65 WHIP0.99

<主な球種と球速帯>
ストレート:140~151キロ
スライダー:120~132キロ
チェンジアップ:120~130キロ

☆クイックモーションでの投球タイム:1.18秒


公立の仙台高校出身


 昨秋のドラフトでは早川隆久(早稲田大→楽天1位)が投手で1番人気となったが、その早川と近いレベルまで評価を上げる可能性を秘めたサウスポーとが佐藤隼輔(筑波大)である。

 早川が高校時代に3度甲子園に出場し、U-18日本代表にも選出されていたのとは対照的に、佐藤は公立の仙台高校所属だったこともあって、東北大会への出場経験もない。しかし、全く無名だったかというとそういうわけではなく、3年時には東北でも屈指の左腕として評判を集める存在だった。


 そのピッチングを実際に見たのは、2017年夏の宮城大会:対名取北戦のことである。

 スタンドには10球団のスカウトが集結していたが、その前で被安打5の18奪三振という圧巻のピッチングを見せた。当時の取材ノートを読み返すと、この日の最速は140キロとそれほど目立つ数字ではないが、上手くボールの出所を隠したフォームで肘の使い方が柔らかく、変化球でも腕の振りが変わらないため打者はタイミングをとることができていなかった。


 結局、高校卒業時点ではプロ志望届の提出を見送ったが、筑波大進学後も佐藤は見事な成長を見せている。

 1年春こそ体作りで登板はなかったものの、秋には5試合・25イニングを投げて無失点と最高のデビューを果たす。初登板からの公式戦無失点は、その年の横浜市長杯(首都大学・神奈川大学・千葉県大学・関甲新学生・東京新大学の5連盟から上位2校が集う大会で、例年であれば明治神宮大会の出場権をかけて行われる)も含めて最終的に44回2/3まで伸び、2年春のリーグ戦後には日米大学野球の大学日本代表にも選ばれた。


フォームの安定感が最大の長所


 高校時代から変わらない佐藤の長所は、フォームの安定感にある。

 軸足一本で真っすぐきれいに立ち、しっかりとためを作ってから左右にぶれることなく直線的にステップして、体の近くで縦に腕を振ることができている。これは早川とも共通する長所である。

 左右のぶれが少ないということは、当然それだけコントロールも安定しているということ。時折シュート回転することはあるものの、腕を振って両サイドに速いボールを投げ込める。


 高校時代は140キロ程度だったストレートも順調にスピードアップを果たしており、昨年の日米大学野球では最速151キロに到達。この時はリリーフでの登板だったが、現在は先発でもコンスタントに145キロを超えるまでになっている。

 ボールの出所が見づらいうえに、これだけのスピードがあるというのは打者にとっては大きな脅威。また、左投手はクイックが苦手なことも少なくないが、佐藤は右投手と比べても十分速いタイムをマークしている。これもフォームに無駄な動きがない証明と言えるだろう。


 そして、デビューした1年秋から常に結果を残し続けているという安定感も見事だ。

 これまでの4シーズンの防御率を見てみると、0.00(1年秋)、2.35(2年春)、0.47(2年秋)、0.56(3年秋)と防御率0点台を3度マークしている。筑波大の所属している首都大学リーグはここ数年、投高打低と言われているが、全体的なレベルは全国でも屈指だけに、その中でこれだけの数字を残せるのは並大抵のことではない。


「ドラフトの目玉」になるために必要なこと


 サウスポーでスピードのある投手というと、コントロールに難があるケースも多いが、佐藤はそのようなこともなく、無駄な四死球の数も少ない。1年前の早川と比べても、あらゆる面で上回っているように見える。

 これから佐藤が“ドラフトの目玉”になるために必要なのは、早川が見せたような最終学年でのさらなる成長と、大舞台での結果だけ。秋のリーグ戦は変則日程でわずか3試合の登板に終わり、12月に予定されていた大学日本代表候補合宿も中止となったが、今一度体を鍛え直してピッチングを見直すには良い期間だったのではないだろうか。

 筑波大が出場を逃した横浜市長杯では、同じサウスポーの鈴木勇斗(創価大)が一気に評価を上げてきたが、春には佐藤もドラフトの目玉にふさわしい圧巻の投球を見せてくれることを期待したい。


☆記事提供:プロアマ野球研究所
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