『B魂』第12回・佐野皓大
ソフトバンクの周東佑京、ロッテの和田康士朗、巨人の増田大輝など、走塁のスペシャリストが躍動した2020年。オリックスでは、佐野皓大がシーズン終盤に存在感を示し、最終的には24個の盗塁を記録したことに加えて失敗は4回と、成功率の面からも上々の数字を残した。
その佐野の好走塁が勝利を呼び込んだのが、11月4日の楽天戦。同点で迎えた8回裏、一死走者なしから佐野が内野安打で出塁すると、続く西浦颯大は二直に倒れたが、吉田正尚が四球を選んで二死一二塁に。打席に入ったモヤの打球は一二塁間を襲うも、深い位置にいた二塁手・浅村がグラブに当てて素早く本塁へ送球。三塁を回ってホームを狙った佐野が間一髪でタッチを掻い潜り、1点を勝ち越した。
これには中嶋聡監督代行も「佐野の足が最大限に活かされた走塁だった」と評価し、「走るだけじゃなくて、走らないプレッシャーも覚えていって欲しいし、いいタイミングで走るのも勉強。いろんなことが彼のスキルに繋がってくれれば」と、さらなる成長に期待を寄せていた。
内野安打で二塁から一気にホームを陥れる“神走塁”を披露した佐野は試合後、「自分が出れば何か起こるかなと思った。塁に出なきゃ始まらないので、打ち方も変えて。追い込まれたのでノンステップで前に何とか飛ばそうと思った」と、フルカウントから叩きつけた打球で内野安打を放った場面を振り返り、「試合に出させてもらってるので、いろいろ勉強出来てるのかなと思う」と、打席での対応にも手応えを口にしていた。
その打撃面ではスイッチヒッターに再挑戦し、課題だった左打席でも長打を放てるようになるなど、走塁以外の面でも成長の跡を見せた2020年。契約更改では微増ながら最下位に沈んだチームの中でアップを勝ち取り、その後の会見では新シーズンに向けて明確な目標を掲げた。
「目標だった20盗塁は達成できたけど、チームは最下位で悔しいシーズンになった。体力のなさも痛感したので、オフには初動負荷のトレーニングを中心に行い、今の100%を80%でできるような体作りをしていきたい。来シーズンはレギュラーを奪取して、出塁率4割、40盗塁を目標に頑張っていく」。
シーズン終盤は1番で起用されることも多く、自身に求められる役割はしっかりと理解している。まずは塁に出て投手にプレッシャーをかけていくこと、そして得点圏に進んでより多くの得点に絡むことだ。昨季の出塁率は「.262」で、4割超えは規定打席に到達した打者ではわずか5人しかいない狭き門。簡単な目標ではないが、そのラインに少しでも近づくことができれば、自身のレギュラー奪取に加えてチームの課題でもある得点力不足が解消されることは間違いない。
昨季ブレイクした周東に続く存在となれるかーー。オリックスの“韋駄天”がどのような活躍を見せるのか、引き続き注目していきたい。
文=どら増田