コラム

メジャー移籍不成立の菅野智之にのしかかる2022年問題【白球つれづれ】

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巨人・菅野智之 (C) Kyodo News

白球つれづれ2021~第2回・MLBと菅野智之


 これが現在のMLBの実情と言うべきか?

 ポスティングシステムを行使してメジャーリーグへの移籍交渉を続けて来た巨人・菅野智之投手が日本時間8日、今季のメジャー行きを断念して、巨人残留を発表した。

 昨年12月に所属球団である巨人がポスティングの申請を行い、メジャー球団による菅野争奪戦が始まった。1カ月の期限内に獲得の意思を明らかにしたのはパドレス、ジャイアンツ、メッツ、ブルージェイズらの6球団。交渉期限の切れる日本時間1月8日午前7時の2分前まで話し合いは行われたという。最後まで粘ったのはパドレスだと、米球界関係者は証言する。

 パドレスと言えば、このオフに18年のサイヤング賞投手であるB・スネルをレイズから、昨季ナ・リーグ最多勝を獲得したダルビッシュ有をカブスから相次いで獲得して驚かせた。パ軍が引き継ぐ2人の総年俸は実に1億ドル(約104億円)。それでも、菅野獲得はこのオフの最大のターゲットだったというから恐れ入る。

 菅野自身もメジャー移籍の希望条件として優勝の狙えるチームを視野に入れていた。西海岸の南部に位置するサンディエゴも温暖な地で投手にとっては調整がしやすい。米国メディアではパ軍を「今季のワールドシリーズの大本命」に指名するなど相思相愛の関係と見られたが、最後は条件面での折り合いがつかなかったようだ。さしもの大補強軍団もダルビッシュらに大枚をはたき過ぎたという事か。


コロナ禍と不透明な先行き


 日本の誇る大エースを迎えるには、あまりに時期が悪すぎた。

 昨年は7月に開幕して、レギュラーシーズンを60試合で終えたMLB。それが各球団の経営面を直撃し、このオフの補強策に大幅な遅れを呼んでいる。ヤンキースからFAとなった田中将大投手らも、未だに所属先が決まらない異常事態が続いている。パドレスら数球団以外は財布のひもを締めたまま、様子見を決め込んでいるのが実情だ。

 さらに、混迷の度を深めているのがコロナ禍の先行きの不透明さである。すでにMLBでは通常2月から開始するフロリダ、アリゾナのキャンプ施設の使用禁止を選手側に通達した。現地時間の1月10日現在、米国の感染者数は2233万人を超え、死者は37万人を数えている。1日の感染者が20万人を超えるなど終息の気配は見えない。

 今季のメジャーは2月下旬にオープン戦を開始して、4月2日(日本時間)に開幕と発表されているが、すでに一部メディアでは5月まで開幕延期と報じられている。今季も162試合のペナントレースが行われないようだと、球団経営の更なる悪化もあり得る。

 「多くの球団のGMはコロナ感染拡大の中、選手に大きな投資はしにくい。開幕まで選手契約は“長期戦、我慢比べ”になる」と担当記者は分析する。


来オフを見据えた動きも!?


 菅野の交渉代理人を務めたJ・ウルフ氏は、ポスティング移籍の不成立後に6球団の年俸提示額が、信じられないほど似通っていて不快な気持ちになった」と、舞台裏の一端を明らかにした。球団間の談合を示唆する発言だった。

 また、交渉期間中に米球団側から「巨人から菅野にオプトアウト(契約破棄条項)付の4年契約が提示された」との極秘情報まで流れている。これも獲得に失敗した時、ファンに対する言い訳として使われたと指摘するむきもある。

 コロナによって身動きの取れないMLBの現状は、来オフに晴れてFAを行使して再挑戦を視野に入れる菅野を再び苦しめそうだ。大きな要因はもう一つある。今オフにはFAとなる超大物選手が目白押しなのだ。

 ドジャースのC・カーショー、アストロズのJ・バーランダー、ナショナルズのM・シャーザーなど、いずれも過去にサイヤング賞を受賞した別格エースがずらり。彼らの去就が決まらなければ菅野らの行く先も決まらない上に、今季以上の巨額が動けば、それ以外のビッグマネーを用意できない球団も出て来る。

 ひとまず巨人残留に原辰徳監督はニンマリ、侍ジャパンの稲葉篤紀監督も東京五輪の金メダル奪取に計算が立てやすくなった。今季に更なる成績を残して1年後のメジャーリーガーを目指す菅野が来年こそ夢を成就するのか?
太平洋間の波は今年も大荒れ模様と言うしかない。


文=荒川和夫(あらかわ・かずお)
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