秋には目玉候補になっているかも…?
コロナ禍に揺れた2020年が終わり、新たな年がスタート。そんな中で2021年も年明け早々から「緊急事態宣言」が発出されるなど、まだまだ予断を許さない状況が続いているが、時計の針は止まってはくれない。ドラフト戦線は既に動き始めている。
プロアマ野球研究所では、今年も引き続きドラフト候補を取り上げ、その実力を分析してご紹介していきたい。
今回は、関西の大学球界を代表する強打のショートにスポットを当てる。
▼ 野口智哉(関西大)
・遊撃手
・181センチ/83キロ
・右投左打
・鳴門渦潮高出身
<リーグ戦通算成績>
63試合 打率.321(234-75) 本塁打2 打点33
267打席 二塁打13 三塁打4 四死球33 盗塁6
出塁率.404 長打率.436 OPS.840
<各塁へのベスト到達タイム>
・一塁到達:4.16秒
・二塁到達:8.05秒
<50メートル走>
・手動計測:6.10秒
(2019年11月の大学日本代表候補合宿)
関西学生リーグを代表する選手に成長
投手に比べると、有力候補が少し寂しい印象を受ける大学生の野手だが、そんな中で貴重な「打てるショート」として注目を集める可能性が高いのが野口智哉(関西大)だ。
鳴門渦潮高時代の3年夏には甲子園に出場。初戦で日本文理に敗れたものの、野口自身は2安打を放ち、リリーフとして上がったマウンドでも最速140キロを超えるスピードを披露して注目を集めた。
関西大に進学すると、入学直後からレギュラーの座を奪い、2年秋と3年秋には2季連続(※3年春は新型コロナウイルスの影響でリーグ戦中止)で遊撃手のベストナインに輝くなど、関西学生リーグを代表する選手となっている。
そんな野口の直近のプレーを見たのは、2020年秋のリーグ戦。京都大戦(9月13日)と、立命館大戦(9月27日)だった。
京都大戦では第2打席でレフト前へのヒット、続く第3打席では貴重な追加点の足掛かりとなるツーベースを放つ2安打の活躍。立命館大戦ではヒットこそ出なかったものの、豪快なフルスイングでスタンドを沸かせ、ショートの守りでは6度あった守備機会を全て落ち着いた軽快なプレーで処理。チームの勝利に貢献した。
野口の良さはまず181センチ・83キロという堂々とした体格でありながら、プレーにスピード感があるところだ。決して派手なプレーを連発するわけではないが、重心の上下動が小さく目線がぶれずに、素早く動けるフットワークは大学生の中でも圧倒的に目立つ。
また、先述したように投手としても140キロを超えるボールを投げるだけの地肩の強さがあり、低くて正確なスローイングは安定感十分。ランニングスローなどのプレーを軽々とこなし、スナップスローも上手い。
ねじり切れんばかりのフルスイング
この1年間で大きく進歩を見せたのが、バッティングである。
下級生の頃から全身を使ったフルスイングは目立っていたが、この秋はさらにその姿勢が顕著になり、背中まで豪快に振り抜く姿は、吉田正尚(オリックス)の大学時代を彷彿とさせるまでになっていた。
冒頭で紹介したリーグ戦通算成績をみても、決してホームランが多いバッターではないが、この状態を維持することができれば、来年は一気に長打が増えることが十分に期待できるだろう。
また、全身がねじり切れんばかりのスイングを見せながらも、これまでの5シーズンのうち4シーズンで打率3割5分を超えるなど、高いミート力を維持している点も、吉田正尚と通じる長所である。
さらに、カウントや場面に応じてスイングを変えることができ、広角に打ち分ける上手さを持ち合わせている。加えて、各塁の到達タイムと50メートル走のタイムも十分に俊足と呼べる数字だ。
体つきやプレースタイルは鳥谷敬(現・ロッテ)と重なるところがあり、1年から休むことなく試合に出続けている体の強さも共通点だ。スピードに関しては大学時代の鳥谷の方が上だが、フルスイングの迫力とヘッドスピードは野口の方が上回っているように見える。
春のリーグ戦で高い打率を維持したまま狙い通りに長打が増えてくれば、2021年のドラフト会議で一気に野手の目玉候補に浮上してくる可能性もあるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所