六大学が誇る注目の左腕
コロナ禍に揺れた2020年が終わり、新たな年がスタート。そんな中で2021年も年明け早々から「緊急事態宣言」が発出されるなど、まだまだ予断を許さない状況が続いているが、時計の針は止まってはくれない。ドラフト戦線は既に動き始めている。
昨年は新型コロナウイルスの影響で多くの公式戦や大会が中止に追い込まれたが、限られた機会の中で輝きを放った選手は決して少なくなかった。プロアマ野球研究所では、今年も引き続きドラフト候補を取り上げ、その実力を分析してご紹介していきたい。
今回は、ドラフト上位での指名が期待される東京六大学野球のサウスポーを紹介する。
▼ 山下 輝(法政大)
・投手
・188センチ/95キロ
・左投左打
・木更津総合高出身
<リーグ戦通算成績>
8試(11.0回) 2勝1敗 防御率0.82
奪三振11 被安打6 与四死6 自責点1
奪三振率9.00 被安打率4.91 四死球率4.91 WHIP1.09
<主な球種と球速帯>
ストレート:142~151キロ
カーブ:110~114キロ
スライダー:123~126キロ
ツーシーム:128~132キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.34秒
早川と同じ“木総”の出身左腕
今年の東京六大学のサウスポーで、最も注目を集める存在となりそうなのが法政大の山下輝だ。
高校時代は早川隆久(早稲田大→楽天1位)の1年後輩にあたり、下級生の頃はファーストを守っていた選手。2年秋からエースとなると、3年夏には見事な投球を見せてチームを甲子園出場に導き、本大会では初戦で敗れたものの、U-18侍ジャパンにも選出された。
だが、大学進学後は故障に苦しんで低迷。最初の2年間はリーグ戦に登板することもできず、ようやく本領を発揮したのは昨年8月に行われた春のリーグ戦のこと。初戦の東京大戦で3点リードの9回に初登板し、打者3人で片付けると、翌日の早稲田大戦ではタイブレークとなった延長10回からマウンドに上がり、無失点で切り抜けてチームのサヨナラ勝ちに大きく貢献した。
この試合は現地で取材していたが、走者を背負っても気負うことなく、しっかり腕を振って最速151キロをマークしている。最終的に全5試合中4試合にリリーフで登板し、5回を投げて無失点。被安打はわずかに1という見事な成績を残した。
大型投手にありがちな「もっさりした動き」は残っているものの、高校時代と比べて明らかにフォームの躍動感がアップしたように見える。体があまり沈み込むことがなく、倒れこむようにして投げるスタイルはアメリカの投手に近く、ボールの角度も申し分ない。
もうひとつの特徴がテイクバックの動きだ。早めに肘をたたみ、体の近くで沿うようにして腕を振るため、打者からはギリギリまでボールの出所が見えない。近い腕の使い方では、星野伸之(元オリックスなど)が思い浮かぶが、そのようなフォームでありながら、星野のような遅い球ではなく、150キロを超えるスピードがあるのが得難い長所である。
一方、変化球で素晴らしいのが、決め球となるツーシームだ。ストレートと腕の振りもボールの軌道もほとんど変わらずに鋭く沈む。相手打者は腰が砕けたように空振りすることも少なくない。加えてスライダーや緩急をつけるカーブも操り、ストレートを見せ球にして、変化球で勝負できる点もまた評価できる。
スケール感はドラフト上位級
投手としてのスケール、投げているボールのレベルは、間違いなくドラフト上位候補と言えるものである。ただ、気になるのはコンディション面だ。
春のリーグ戦から約1カ月後に行われた秋のリーグ戦では出遅れ、シーズン終盤には登板しているものの、ストレートの勢いは落ち、持ち味のコントロールに苦しむ場面が多かった。フォームに致命的な欠点があるようには見えないが、少し上半身の力みが目立つことがあり、そこから肩や肘に負担がかかりやすくなっている可能性はあるだろう。
ただ、思い返せば高校の先輩・早川も、昨年の春先には肘の不調を抱えていたが、フォームを見直したことで一気にスピードとコントロールがレベルアップしたという経緯がある。山下もまた故障や不調がフォームを見直す良いきっかけとできるか、最終学年での大きなポイントとなりそうだ。
持っているポテンシャルの高さを考えると、過去3年間の成績は到底満足できるようなものではなかった。それだけに、今年は一年を通じて打者を圧倒するようなピッチングを見せてくれることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所