“高卒1年”でのNPB挑戦へ…
待ちに待った“球春”の到来──。2月1日のプロ野球・キャンプインから、徐々に話題が増えていく野球界。アマチュア球界も同様で、新チームの幹部やNPB以外に進む選手の進路情報が活発に報じられるのがこの時期。新シーズンへの期待がふくらむ季節がやってきた。
なかでも今年目立っているのが、独立リーグに進む高校生の有力選手たちだ。高校卒業後にNPBを目指す場合、大学では4年後、社会人を経た場合は3年後の再チャレンジとなるのだが、独立リーグの場合は1年目からドラフトの指名対象となることができる。
近年のドラフト会議でも、独立での戦いを経た10代の選手がNPBの扉をこじ開けているように、早くから高いレベルに挑戦できるというメリットを魅力的に感じる高校生プレイヤーも多いのだろう。
そこで今回は、高校卒1年目ながら今秋のドラフト候補となる可能性を秘めた、「独立リーグに進む予定の有力選手」を紹介していきたい。
最注目はBCリーグ・埼玉に進むハイレベル右腕
高校時代から大きな注目を集めた投手と言うと、長尾光(ノースアジア大明桜→埼玉武蔵ヒートベアーズ)の名前がまず挙がる。
同学年に佐々木湧生と橘高康太、さらに1学年下には今年のドラフトで上位候補といわれる150キロ右腕・風間球打といった力のある投手が揃っていたチームの中でも、早くから主戦として活躍。昨年夏の秋田県・独自大会では、準決勝で14奪三振の2失点完投、決勝でもリリーフで3回1/3を無安打に封じる好投を見せ、チームの優勝に大きく貢献した。
左足が高く上がっても姿勢が崩れることがなく、ゆったりとしたモーションで下半身をしっかり使って投げられるのが特長。フォームの流れがスムーズでなおかつ動きにメリハリがあり、上からきれいに腕が振れるのでボールの角度も申し分ない。
加えて、肘の使い方に柔らかさがあるのも長所。少しスライダーに頼るところがあり、そのせいもあってか体が一塁側に流れるのは課題だが、コンスタントに140キロ台中盤をマークするストレートの勢いも申し分ない。体作りが進んでストレートにさらに力強さが増せば、NPB各球団も放ってはおかないだろう。
ヤクルト・奥川に似たフォームを操る男
もう一人、早くから評判となっていた投手が、高田竜聖(遊学館→石川ミリオンスターズ)だ。
入学直後からベンチ入りを果たすと、2年夏の石川大会では、甲子園準優勝を果たすことになる星稜を相手に3回途中からリリーフ登板。6回1/3を投げて1安打・無失点という快投を見せている。
その後、秋は少し調子を落としたものの、甲子園での高校生合同練習会では6人の打者を相手にノーヒット、2奪三振としっかり結果を残した。
175センチとそれほど上背があるわけではないが、2年夏に投げ合った奥川恭伸(ヤクルト)と雰囲気の似たフォームで、シャープな腕の振りが光る。昨年秋はまだまだ細身という印象だったが、夏には体つきもたくましくなっており、140キロ台前半のストレートは数字以上の勢いを感じる。高校生にしては完成度も高いだけに、チームでは一年目から先発として期待できそうだ。
その他にも、東京ドームでの合同練習会で147キロをマークして注目を集めた西浜勇星(関東学園大付→群馬ダイヤモンドペガサス)や、四国屈指の本格派で2年春には甲子園でも先発した平安山陽(松山聖陵→徳島インディゴソックス)、東北屈指の左腕といわれた太田大和(山形中央→埼玉武蔵ヒートベアーズ)あたりが注目株。
さらに、故障で実績はないものの、大器と評判だった大型右腕の玉置隼翔(和歌山東→愛媛マンダリンパイレーツ)や、千葉県内ではともに注目を集めた斎藤鳳人(成田→栃木ゴールデンブレーブス)と菅谷大紀(日体大柏→埼玉武蔵ヒートベアーズ)なども、楽しみな存在となる。
パンチ力に期待の大砲候補
一方、野手で最も独立リーグ入りに驚かされたのが石川慧亮(青藍泰斗→栃木ゴールデンブレーブス)だ。
高校では入学直後から中軸を任され、関東でも屈指のパンチ力を誇る右の強打者。特に強烈なインパクトを残したのが、東京ドームで行われた合同練習会である。
フリー打撃では木製バットに苦しむ打者が多い中でも快音を連発。レフトスタンドに軽々と放り込むパワーを披露しただけでなく、実戦形式で行われたシート打撃でも、打った瞬間にそれと分かるレフトスタンドへの一発を放って見せた。
ちなみに甲子園と東京ドームで行われた合同練習会のシート打撃で、ホームランを放ったのは石川だけ。上背は172センチと小柄ながら、実にたくましい体つきで、インパクトの強さとヘッドスピードは高校生離れしたものがある。外野から見せる返球も力強く、強肩も持ち味だ。独立リーグでも、1年目からその打棒を存分に見せつけてくれることを期待したい。
その他の野手では、抜群のスローイングの速さが光る捕手の古市尊(高松南→徳島インディゴソックス)や、強肩強打が魅力の荒木友斗(加茂暁星→新潟アルビレックスBC)と矢野泰二郎(済美→愛媛マンダリンパイレーツ)など、捕手に有望株が多い印象。
また、3拍子揃った外野手として、甲子園での合同練習会で抜群の存在感を見せた漆原幻汰(豊川→愛媛マンダリンパイレーツ)なども注目の選手となるだろう。
冒頭でも触れたように、実力さえ認められれば、1年でドラフト対象となるのは独立リーグでプレーするうえでの大きな魅力。過去にも伊藤翔(西武)や山本祐大(DeNA)らが1年でのNPB入りを果たしている。
今年も彼らに続くような選手が出てくるのか…。コロナ禍で難しい世の中ではあるが、こうした顔ぶれを見る限りでは、大いに期待できるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所