大学で才能が開花!
コロナ禍に揺れた2020年が終わり、幕を開けた2021年。しかし、年明け早々から「緊急事態宣言」が発出され、そのまま最初のひと月が終了。緊急事態も延長となるなど、まだまだ予断を許さない状況が続いているが、時計の針は止まってはくれない。ドラフト戦線は既に動き始めている。
昨年は新型コロナウイルスの影響で多くの公式戦や大会が中止に追い込まれたが、限られた機会の中で輝きを放った選手は決して少なくなかった。プロアマ野球研究所では、今年も引き続きドラフト候補を取り上げ、その実力を分析してご紹介していきたい。
今回は、東北の大学球界で急浮上してきた、仙台六大学野球の快速右腕を紹介する。
▼ 椋木 蓮(東北福祉大)
・投手
・178センチ/75キロ
・右投右打
・高川学園高出身
<リーグ戦通算成績>
23試(50.1回) 8勝0敗 防御率0.36
奪三振53 被安打27 与四死5 自責点2
奪三振率9.48 被安打率4.83 四死球率0.89 WHIP0.64
<主な球種と球速帯>
ストレート:145~153キロ
スライダー:125~128キロ
フォーク:126~130キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.20秒
高校時代は全国的に無名だった
力のあるリリーフ投手の需要が高まっているプロ野球界だが、今年の候補の中で最も高い適性を見せている投手の一人が、東北福祉大の椋木蓮(むくのき・れん)だ。
山口県の高川学園では2年夏に甲子園に出場しているが、当時は大学でも先輩となる山野太一(2020年ヤクルト2位)がエースとして君臨。聖地のマウンドに立つことはなかった。
その後、3年夏にはエースとなるも、全国的にそれほど名の知れた存在ではなく、山口大会の準々決勝で下関国際に敗戦。高校野球を終えている。
しかし、先輩の山野を追うようにして東北福祉大に進学すると、才能が一気に開花。1年春には主に抑えとして9試合に登板し、無失点の快投を見せると、続く大学選手権で全国デビュー。2試合に登板してチームの優勝に貢献している。
1年の秋には先発も任されて4勝をマークしたが、その後は肘の故障などもあって停滞。ようやく本格的に復帰したのは、昨年秋のリーグ戦からだった。第3節の宮城教育大戦で約1年半ぶりの公式戦登板を果たすと、そこから椋木の快進撃が始まる。
現地取材では「最速153キロ」を計測
筆者はその翌週に行われた東北学院大戦を現地で取材したが、1点リードの9回にマウンドに上がると、打者3人を完璧に抑え込んでチームの勝利に大きく貢献。最初の打者には少し抑え気味に入ったものの、2人目からはエンジン全開で、ストレートの最速は153キロに達した。
結局、椋木は5試合・8回を投げて無失点。被安打はわずかに2で15奪三振という圧巻の成績を残し、抑え投手としては非常に珍しいリーグ戦のMVPにも輝いたのだ。
1年生で大学選手権に出場した時と比べて大きく成長したのは、下半身の使い方と体重移動だ。右足一本で真っすぐきれいに立ち、二段モーションのような動きをつけなくても、しっかりとためを作ることができている。
体重を移動する前に少し重心を下げるのは気になるが、軸足の膝が折れすぎることなく、ゆったりとステップすることができ、着地した左足もぶれることがない。左肩が開かず、体の正面が長く三塁側を向き、リリースに向けて一気に体重を移動して腕を振ることができる。このため、打者はタイミングをとるのが難しい。少しスリークォーター気味の腕の振りだが、肘の使い方の柔らかさがあり、球持ちの長さも大きな特長だ。
フォームのイメージとしては、テイクバックはそこまで大きくないものの、則本昂大(楽天)に重なるものがあり、横に鋭く滑るスライダーの球筋もよく似ている。確認できた球種はスライダーとフォークだけだが、いずれもしっかり腕を振って投げることができ、どちらも決め球として使えるだけのレベルのボールと言えるだろう。
ドラフト1位も十分に射程圏
椋木のもう一つの大きな武器が、高い制球力である。
時折高く浮くことはあるものの、左右のぶれは非常に少なく、内角にも外角にも腕を振って速いボールを投げることができる。
リーグ戦通算成績を見ても、与えた四死球の数は50回以上を投げてわずか5個と、コントロールに苦しむようなことが全くない。150キロを超えるスピードは珍しくなくなっているが、ここまで安定したコントロールを備えている投手は、全国でもそうはいないだろう。
リーグ戦の後に行われた東北地区大学野球王座決定戦の2試合は、延長タイブレークにもつれ込む大接戦だったが、いずれも最後を椋木が無失点で締めて勝ち投手となっている。緊迫した場面でもいきなり速いボールを投げられ、コントロールに不安がないという点は、リリーフ投手にとって大きなアドバンテージであることは間違いない。
今年はエースの山野が抜けるだけに、起用法がどうなるかは不透明だが、リリーフであれば昨年秋のような圧倒的な成績を残す可能性は高い。順調にいけば、本人が「憧れの先輩」と話す山野を超える順位、つまりドラフト1位でのプロ入りも十分に射程圏内にある。
☆記事提供:プロアマ野球研究所