都市対抗でインパクトを残した剛腕
コロナ禍に揺れた2020年が終わり、幕を開けた2021年。しかし、年明け早々から「緊急事態宣言」が発出され、そのまま最初のひと月が終了。緊急事態も延長となるなど、まだまだ予断を許さない状況が続いているが、時計の針は止まってはくれない。ドラフト戦線は既に動き始めている。
昨年は新型コロナウイルスの影響で多くの公式戦や大会が中止に追い込まれたが、限られた機会の中で輝きを放った選手は決して少なくなかった。プロアマ野球研究所では、今年も引き続きドラフト候補を取り上げ、その実力を分析してご紹介していきたい。
今回は、抜群のポテンシャルを秘めた高校卒3年目の社会人右腕を紹介する。
▼ 米倉貫太(Honda)
・投手
・21歳(満年齢)
・184センチ/86キロ
・右投右打
・埼玉栄高出身
<主な球種と球速帯>
ストレート:143~151キロ
カーブ:113~117キロ
スライダー:123~128キロ
フォーク:126~130キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.12秒
「ダルビッシュの恩師」から高い評価
今年で高校卒3年目を迎える社会人投手の中で、プロからの注目を最も集める可能性が高いのがHondaの米倉貫太だ。
高校入学直後から大器として評判の右腕で、1年夏の埼玉大会では早くも先発を任され、その秋からはエースとなっている。
初めて米倉の投球を見たのは2年秋の埼玉県大会・所沢商戦。この試合でも最速142キロのストレートと緩急をつけるカーブ、決め球のスライダーを操り、11奪三振、1失点完投と見事なピッチングを見せていた。
高校・社会人と埼玉のチームでプレーしている米倉だが、出身は福岡県である。埼玉栄に進学する大きなきっかけとなったのが、若生正廣監督(当時)だ。
若生監督と言えば、東北高校の監督時代にダルビッシュ有(現・パドレス)を指導したことでもよく知られているが、その後に九州国際大付属で指揮を執っていたこともあり、福岡の中学で評判だった米倉のもとに足しげく通ったという。
高校2年の冬に米倉に話を聞いた時にも、進学の決め手となったのはやはり監督の存在が大きかったとのことだった。この時の取材では、若生監督に長時間に渡りお話を聞くことができたが、米倉のフォームについて「直す必要がない。まず、故障するような投げ方をしていない」と語っていたのをよく覚えている。
結局、米倉の在学中に甲子園や関東大会に出場することは叶わなかったが、その素材は高く評価され、卒業後は社会人の名門であるHondaへ進むこととなった。
最大の魅力は美しいフォーム
若生監督の話にもあったように、米倉の最大の魅力はそのフォームにある。
184センチという長身ながら、長い手足を持て余すことなく使うことができており、股関節・肩甲骨周り、そして肘の使い方にも非常に柔らかさを感じる。
それほど力を入れていないようでも、しっかりとボールに力が伝わっており、投げ終わった後に体勢が崩れるようなこともない。見ていて“美しい”と形容したくなるようなフォームなのだ。
レベルの高い社会人球界では、この2年間で目立った成績を残すことはできていないが、1年目の3月に行われたスポニチ大会で早くも公式戦デビューを飾り、昨年の春先に行われた明治安田生命とのオープン戦では7回を投げて2失点(自責は0)と、長いイニングでも徐々に試合を作れるようになっている。
直球は“メジャー級”の回転数
そんな中、右腕がそのポテンシャルの高さを見せたのが、都市対抗でのピッチングだった。
準々決勝の西部ガス戦に2番手として登板した米倉は、わずか6球・打者2人にヒットを許したところで降板となったが、自己最速となる151キロをマーク。
さらに驚かされたのが、そのストレートが叩き出した「2600回転」という数字。これはストレート(フォーシーム)の回転数としては、メジャーでもなかなか見ないものである。いわゆる“ボールの質”は、回転効率やリリースポイントの高さも影響すると言われているが、少なくともスピードと回転数に関しては、十分にプロでも上位のものを既に持っていることは間違いないだろう。
あと米倉に必要なものと言えば、社会人での実績である。変化球の制球力にはまだ不安が残り、どうしても一本調子になったところを狙われる傾向にある。ただし、このあたりが改善されてくれば、ストレートについては抜群のものがあるだけに、一気に成績がついてくる可能性も十分にあるだろう。
所属するHondaは昨年の都市対抗で優勝を果たしたが、米倉自身は準決勝・決勝とベンチからは外れていた。その悔しさもバネにして、3年目の今年はさらに大きく飛躍することを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所