打の西武「ゼロ」は意外…?
2021年シーズンに通算2000安打達成という大記録に挑むのが栗山巧(西武)だ。現在、栗山はNPB通算安打で現役4位の1926安打を記録しており、通算2000安打にもっとも近づいている選手である。昨季は西武打線がやや低調だったこともあるが、36歳で迎えたシーズンでチームトップの打率と101安打を記録した。ケガなどで長期の離脱をしない限り、2021年シーズン中の2000安打到達はほぼ確実と見られる。
ただ、栗山の大記録挑戦には、同時に少し意外な記録の達成もかかっている。栗山が2000安打を記録すれば、西武の生え抜き選手としてはじめての2000安打到達者となるということだ。2018年、2019年と連覇を果たした近年はもちろん、1980年代から1990年代にかけての黄金期も含め、西武には「打」のイメージがあることを思えば、やはり意外に感じる野球ファンも少なくないだろう。
もちろん、多くの強打者を輩出した西武は、秋山幸二や清原和博、和田一浩、松井稼頭央ら2000安打到達者を生んでいる。だが、彼らが大記録を樹立したのはいずれも他球団に移籍後のこと。チームとして生え抜き選手の2000安打到達者がいないのは、西武の他、まだ球団としての歴史が浅い楽天だけである。
30年以上ご無沙汰の球団も…
では、他球団の大記録達成者はどんな顔ぶれだろうか。以下は、各球団における直近の生え抜き2000安打到達者だ。
【各球団直近生え抜き2000安打到達者】
・坂本勇人(巨人)
2020年11月8日 ヤクルト戦
・福浦和也(ロッテ)
2018年9月22日 西武戦
・鳥谷敬(阪神)
2017年9月8日 DeNA戦
・荒木雅博(中日)
2017年6月3日 楽天戦
・宮本慎也(ヤクルト)
2012年5月4日 広島戦
・前田智徳(広島)
2007年9月1日 中日戦
・田中幸雄(日本ハム)
2007年5月17日 楽天戦
・石井琢朗(横浜/現DeNA)
2006年5月11日 楽天戦
・門田博光(南海/現ソフトバンク)
1987年8月26日 西武戦
・福本豊(阪急/現オリックス)
1983年9月1日 ロッテ戦
直近の達成者は昨季の坂本勇人。坂本には榎本喜八(東京)が持つ2000安打到達最年少記録の更新という期待もかかっていたが、新型コロナウイルス感染拡大によりシーズン開幕が大きくずれ込んだ影響もあって記録更新を果たせなかったことも話題になった。
また、2018年にロッテの生え抜き選手として1985年の有藤道世以来となる2000安打を達成したのが福浦和也。この年の9月22日に行われた西武戦の8回、先頭で打席に入った福浦は、内角高めに浮いた甘い球を一閃。この右翼線二塁打が福浦の記念すべき通算2000安打であり、現役最後の安打でもある。史上はじめて通算2000安打ジャストで引退したという珍しい経歴を残したことでも知られている。
一方、中高年の野球ファンには懐かしい名前も見られる。多くの球団が2000年代後半以降にも2000安打到達者を輩出しているなか、ソフトバンクは南海時代の門田博光、オリックスは阪急時代の福本豊にまでさかのぼる。ソフトバンクでは松田宣浩が通算1728安打を積み重ねているが、年齢的な壁もあり、果たして大記録達成にまで至るか。
いずれにせよ、栗山の今季にかける思いは例年以上であるはずだ。長くチームを支えてきたベテランが大記録を樹立すれば、ファンの喜びもひとしおだろう。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)