ドラ1・佐藤輝が話題の中心も…?
春季キャンプも、あっという間に折り返し地点を過ぎた。主力や新外国人らの調整も気になるが、阪神タイガースは宜野座に総勢6人のルーキーを連れてきている。
最も注目を集めるのは、すでに“プロ1号”も放った佐藤輝明(ドラフト1位/近大)。前評判通りの大物ぶりを見せつけている。一方、その他の選手が脇役に甘んじているかと言えば、答えは「ノー」だ。
各々の個性を発揮し、チーム内の競争に参戦。今回は、キャンプ前半を終えて投打で目立った2人をピックアップしたい。
“ドラ8”からの下剋上を
投手では、ドラフト8位の石井大智(四国IL・高知)がアピールに成功している。
同2位の伊藤将司、3位の佐藤蓮といった即戦力として期待された2人がフォーム固めや投げ込みに専念するため実戦から離れた中で、ここまでコンスタントに登板。初登板だった7日の紅白戦では1回を2安打・2失点と洗礼を浴びる形となったものの、12日に訪れたチームメートとの再戦では3番手で登板し、1回を三者凡退。近本光司・木浪聖也・大山悠輔の主力を封じて巻き返した。
キャンプ初日から連日、矢野燿大監督が選定している「カッコいい大賞」も手にして笑顔。「前回は相手と勝負できてなかった。(今回は)クイックで投げたりとか、タイミングをずらすという部分でより相手を意識した投球ができた」と手応え十分に振り返った。
育成指名を除けば、チームの同期の中では“最下位”指名からのスタート。立場を自覚するように、1月の新人合同自主トレから入念に肩を作り、宜野座のブルペンでも仕上がりの良さが目立っていた。
史上2人目となる高専出身のNPB選手。四国アイランドリーグplusの高知でもまれ、ハングリー精神を白球に宿す。勝負球はシンカー。右のオーバーハンドで駆使する選手が数えるほどという希少性が習得の理由だ。好投した紅白戦でも、大山から見逃し三振を奪っている。沖縄入り前には「自分の価値を高めたい」と誓った通り、大外から一気にライバルたちを追い抜くべく、加速してきた。
内野争いを熱くする男
野手で勢いが止まらないのは、6位の中野拓夢(三菱自動車岡崎)だ。
7日の紅白戦では、藤浪晋太郎の152キロ直球をバット折られながらセンターに運ぶなど、評判の守備力以上にバットで猛烈アピール。実戦型の新星がレギュラーに近い木浪・糸原の二遊間に割って入ってくれば、内野陣の層はまた厚くなる。
ただし、不本意なのがストロングポイントだった守備ですでに3失策を犯していることだろう。入団以来「まずは守備でアピールしていきたい」と口にし続けていただけに辛い日々を送るが、臨時コーチで招聘された川相昌弘氏の存在が力になりそうだ。
14日にはマンツーマン指導を受ける時間に恵まれ、主に送球を改善。体を大きく使うスローイングを試しており、現役時代にゴールデングラブ賞の常連だった“職人”のエッセンスで本領発揮を狙っている。
本人もしっかりと現在地を捉えている。
「(今までは)試合に少し不安な気持ちのまま入っている部分もある。練習でしっかりと自信をつけてやってきた気持ちで臨めれば、試合での失策数も必然的に減ると思う」
足りない部分を自覚し、補えるだけの時間が今はたっぷり用意されている。
苦い経験も糧に、地力をどれだけこの2月に伸ばせるか。ルーキーたちの初めてのキャンプも、これから正念場がやってくる。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)