第11回:先発枠を争う投手陣の争い
2月1日から始まったヤクルトの浦添キャンプでは対外試合がスタート。先発枠を巡って投手陣が火花を散らす中、高津臣吾監督は「チームが浮上していこうと思ったときに先発投手は絶対だと思っている」と力強く語った。
現在、ヤクルト先発陣の中心にいるのが9年目30歳の小川泰弘だ。昨季は規定投球回数にあと1イニング届かなかったものの、5年ぶりの2ケタ勝利となる10勝(8敗)をマークしている。小川は浦添で行われた2月20日の広島との練習試合に先発。「2ストライクに追い込んでから、少し力んで浮いた球をはじき返された」と反省点を口にしながら、今季初実戦のマウンドを振り返った。
「小川が中心になってその後に誰が続くか、その後に誰が勝てるピッチングをやっていくか」と指揮官が話すように、エースの小川に続く先発の柱を構築することが、チームが浮上するための絶対条件になる。
まず名前が挙げられるのが、昨季4勝を挙げたスアレス、41歳のベテラン・石川雅規、8年目の高梨裕稔といった実績のある顔ぶれだ。若い投手陣では、6年目左腕の高橋奎二や昨季のルーキーイヤーに2勝を挙げた吉田大喜、今季は先発としての期待がかかる寺島成輝、4年目でプロ初勝利を狙う金久保優斗らがいる。
さらに、昨季は上半身のコンディション不良でキャンプは二軍スタートだった6年目の原樹理は、今年は一軍キャンプに参加。「しっかりと投げる回数をこなせている」と、今季の完全復活へ向けて始動。昨季途中で独立リーグの香川から入団し、1勝を挙げた歳内宏明も、先発候補のひとりだ。
奥川、木澤の活躍がカギ握る
そしてカギを握っているのが、2年目の19歳・奥川恭伸、慶応義塾大学からドラフト1位で入団した木澤尚文のふたりだろう。若き両右腕の活躍次第で、チーム成績が大きく左右することは間違いない。
奥川も木澤も一軍キャンプに参加。昨季のチーム最終戦で3回途中5失点というデビューに終わった奥川に対して、高津監督は「ヤクルトのエースに育てていかなければいけないなと改めて強く感じました」と、2年目以降の大きな飛躍に期待している。
今キャンプでは「調子自体もすごく上向きで、いいペースで来ている」と話し、未来のエースの順調な調整ぶりを明かした。
一方、即戦力ルーキーとして期待が高い木澤は、2月21日の楽天との練習試合に2番手でマウンドに上がり、“プロ初登板”を2回1安打無失点で終えた。
力のあるストレートが持ち味の右腕だが、マウンドを降りれば冷静に自己分析ができる。この日、ストレートは最速151キロを計測したが「真っすぐのスピードが出てこそ変化球が生きてくるタイプだと思う。真っすぐだけに頼るタイプではないですけど、自分のバロメーターのひとつ」と振り返った。
期待される先発ローテーション入りについては「ローテーション入りをもちろん目指していますけど、まずは自分自身の課題としっかり向き合って、地に足をつけて一歩一歩やっていきたいと思います」と語る。
奥川と木澤の両ドラ1右腕が順調に段階を踏んでいければ、開幕ローテーションに入る可能性は十分にあるだろう。さらに、小川に続く先発の柱に成長できる要素を十分に秘めている。
3月26日の阪神との開幕3連戦でマウンドに上がるのはどんな面々か。先発枠を争う投手陣の争いが、チームを大きく成長させる。
取材・文=別府勉(べっぷ・つとむ)