2021.03.10 13:00 | ||||
中日ドラゴンズ | 2 | 終了 | 14 | 埼玉西武ライオンズ |
ナゴヤ球場 |
第2回:逆襲を誓うレオ軍団の両雄
今年のキャンプを振り返ると、楽天・田中将大投手の国内復帰が話題を独占した。次に注目を集めたのは阪神・佐藤輝明選手と楽天・早川隆久投手の大物ルーキーたち。巨人のドラフト5位、秋広優人選手も2メートルの長身という話題性に巧みな打撃で高卒新人としては異例の開幕スタメンまで夢は広がっている。
彼らの活躍を心待ちにする一方で、再びペナントレースの主役に返り咲きを狙う男たちもいる。こちらは、その働き次第で優勝予想など吹っ飛ばすほどの破壊力を持っている。西武の山川穂高、森友哉選手の“YM砲”だ。
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今季、西武の下馬評は決して高くない。王者・ソフトバンクと大型補強に成功した楽天が2強に挙げられ、昨年2位のロッテも藤原恭大、佐々木朗希選手ら若手の成長株が育ちつつある。加えて、投手陣だけを比較するとライバルチームに対して見劣りするのも確かだ。
しかし、弱体投手陣であっても18年、19年とリーグ連覇したのはソフトバンクでなく西武だった。投打ともに低調だった昨年も終わってみればAクラスは死守している。そんなレオ軍団に猛打が戻ったらどうだろう? 山川と森の復活こそが、大幅な戦力アップにつながるはずだ。
山賊を牽引した男たちの復活
一昨年のパ・リーグ打撃部門の表彰選手を思い出して欲しい。首位打者に森、本塁打王は山川、打点王が中村剛也で、最多安打が秋山翔吾(現レッズ)。さらに盗塁王に金子侑司と西武の各選手が独占。その結果、チーム防御率(4.35)はリーグワーストでも80勝をあげて優勝を飾った。
この年、打率.256、43本塁打、120打点を挙げた山川は昨年同.205、24本、73打点に終わっている。夏場以降に右足首を痛めて欠場を余儀なくされたとはいえ、半減に近い数字だ。
一方の森も打率.329に23本塁打、105打点の活躍でMVPに輝いたが、昨年は.251、9本塁打、38打点と惨憺たる成績に終わった。こちらは主戦捕手として投手陣をうまくリードできなかったことで、精神的にも追い詰められていったことがスランプの最大の因とも言われている。
持ち前の長距離砲に加えて、より確実性も求めて、山川は昨年、打法改造に挑戦した。従来の左足を高く上げる構えから、すり足に近いステップに取り組んだが失敗。本来の持ち味である打席での“間”がとれず、そこに故障が加わった。再び、元の打法に戻すと、オフには精神面の安定を求めて合気道にも取り組んでいる。
キャンプは二軍で故障の完治を待ちながらじっくりと始動した。その結果が出たのは3月4日の対日本ハム戦。金子千尋投手からオープン戦1号を中越えに放っている。この試合では森も2安打1打点の活躍。2月終盤の練習試合では連戦連敗が続いたが「3番・森、4番・山川」の両雄が揃えば、迫力も格段に違う。
悲願の日本一へ
秋山が抜けた穴を誰が埋めるのか? 上位の出塁率が悪くなれば“YM砲”へのマークはきつくなる。2人の不振が源田壮亮や外崎修汰選手らにも伝染する。悪循環がさらなる空回りを生んだのが昨年のレオ打線だった。逆の見方をすれば、主軸が復活すれば打線全体が息を吹き返す。
一昨年の西武は1試合平均5点以上の得点力を誇り、「野球は投手力を含めた守りから」という定説を覆す強力打線を形成した。そんな状況が戻れば、守護神・増田達至や160キロ怪腕の平良海馬らを擁するストッパー陣が力をつけた今、高橋光成、松本航、今井達也投手らの先発陣は5~6回を4失点でも勝機をつかむことができる。
本拠地・メットライフドームでは3年がかりでボールパーク化をすすめ、総工費約180億円の大改修が完了した。見違えるばかりの新球場を前にして、辻発彦監督は新たな誓いを立てた。
「球団旗の横にチャンピオンフラッグがない。これが唯一失われたもの。奪還して日本一に向かって戦っていきたい」。
自主トレも一緒なら、シーズン中の居残り練習まで共に行うほど山川と森の絆は太い。その両雄が一敗地に塗れた昨季の屈辱を晴らそうと目の色を変えている。彼らがバットマンレースのトップに戻った時、指揮官の野望も現実味を帯びてくるはずだ。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)