関東を代表する左打者
3月19日(金)に開幕する『第93回選抜高等学校野球大会』。2月23日には組み合わせ抽選会も行われ、1回戦の対戦カードも決定した。
「春はセンバツから」という言葉もあるが、今年のドラフト戦線もこの大会から大きく動いていく。プロアマ野球研究所では、この春の大舞台に出場する有力候補も積極的に紹介していきたい。
今回は、関東を代表する左の巧打者を取り上げる。
▼ 吉岡道泰(専大松戸)
・外野手
・180センチ/80キロ
・右投左打
<2020年・秋季関東大会成績>
4試合 打率.444(9-4) 本塁打0 打点3
13打席 二塁打0 三塁打0 四死球4 盗塁0
出塁率.615 長打率.444 OPS1.059
<各塁へのベスト到達タイム>
一塁到達:4.20秒
二塁到達:8.26秒
中学時代の打撃技術が高校トップレベルに匹敵
選抜は初出場となる専大松戸だが、2015年夏には原嵩(現・ロッテ)、渡辺大樹(現・ヤクルト)を擁して甲子園出場。この2人以外にも、上沢直之(現・日本ハム)や高橋礼(現・ソフトバンク)、横山陸人(現・ロッテ)など、近年多くの選手をNPBに輩出している。そんな専大松戸の今年のチームを牽引するのが、4番に座る吉岡道泰だ。
吉岡のプレーを初めて見たのは、2017年8月に行われたリトルシニア(中学硬式)の日本選手権。当時2年生だった吉岡は、江戸川中央リトルシニアの「2番・センター」として出場している。
中学野球の場合は1学年の差が大きく、下級生が目立つことは非常に珍しいが、吉岡は新津・五泉・村松リトルシニアとの試合で3打数3安打・2打点の大活躍を見せ、チームの勝利に大きく貢献して見せた。
結果以上に素晴らしかったのが、その打撃の内容だ。
第1打席は緩いカーブを完璧に呼び込んでレフト前に弾き返すと、第2打席では内角のストレートを鋭く振り抜いてライト前ヒット。そして第3打席は外のストレートを踏み込んで左中間を破るツーベースと、あらゆるボールに見事に対応する打撃技術は、高校生のトップレベルと比較しても目立つものだった。
ちなみに、この大会には1学年上の山村崇嘉(武蔵府中リトルシニア→東海大相模→西武3位)や、木下幹也(世田谷西リトルシニア→横浜→巨人育成4位)も出場しており、こちらも中学生離れしたプレーを見せていたのだが、最も強く印象に残ったのは2年生の吉岡だったことは間違いない。
高校入学後も1年生からレギュラー
専大松戸に進学後も、背番号こそ2ケタながら、1年春から外野の一角に定着。一昨年春の関東大会・健大高崎戦で高校入学後初めてとなるプレーを見たが、その時も2打数2安打・1四球と、1年生とは思えない活躍を見せていた。
その後の新チームからは完全に中軸に定着。昨年秋の関東大会でも3試合すべてでヒットを放ち、4番打者としてチームの準決勝進出に大きく貢献している。
筆者が直近で吉岡のプレーを見たのは昨年11月のこと。関東大会の後に行われた、「Rカップ」と言われる茨城県の竜ヶ崎一高に繋がりのあるチームが集まって行われたローカル大会だ。専大松戸の指揮を執る持丸修一監督が、かつては竜ヶ崎一高で監督を務めていた縁もあって、この大会に出場している。
吉岡は石岡一高との試合で、左右に打ち分ける2安打を放ちチームの勝利に貢献。続く藤代戦では、チームは敗れたものの、第1打席でレフトへのタイムリーツーベースを放ち、存在感を見せた。下級生の頃と比べても明らかに一回り体つきが大きくなり、4番という打順に相応しくなったように見える。
ヘッドスピードや打球の速さも素晴らしい
自然体で、上半身の力を抜いて大きく構えることができており、いかにも打ちそうな雰囲気は十分だ。そして、中学時代から変わらない長所が、タイミングの取り方である。
早めに始動して少し右足を高く上げるスタイルだが、トップの形が安定しており、ステップもゆったりとしていて、踏み込んだ後にも“間”を作ってボールを長く見ることができるのだ。
そのため、体勢が大きく崩されるようなシーンが少なく、凡打でもしっかりミートしている打球がほとんど。ホームランバッターではないが、ヘッドスピードや打球の速さも申し分ない。
脚力もまずまずのものがあるが、残念なのは外野の守備であまり目立たないところだ。
シートノックでも実戦でも、レフトからの返球に速さがなく、相手走者を楽々とホームインさせてしまうシーンもあった。運動能力はあるだけに、もう少し守備の意識も高く持ってもらいたいところ。
ただ、打撃技術という点では全国でもトップクラスであることは間違いない。初の甲子園の大舞台でも、中学時代の全国大会で見せたような鮮やかなバッティングを見せてくれることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所