東の“優勝候補”
いよいよ今週、3月19日(金)に開幕する『第93回選抜高等学校野球大会』。「春はセンバツから」という言葉もあるが、今年のドラフト戦線もこの大会から大きく動いていくこととなる。
プロアマ野球研究所では、この春の大舞台に出場する有力候補も積極的に紹介していきたい。
今回は、優勝候補の一角にも挙げられている常総学院の強力な“2枚看板”を取り上げる
▼ 秋本璃空(常総学院)
・投手
・176センチ/80キロ
・右投右打
<2020年・秋季大会成績>
9試(56.0回) 防御率1.45 WHIP0.98
奪三振54 被安打42 与四死13 失点11(自責9)
奪三振率8.68 被安打率6.75 四死球率2.09
<主な球種と球速帯>
ストレート:135~145キロ
カーブ:105~110キロ
スライダー:120~125キロ
チェンジアップ:110~118キロ
フォーク:120~125キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.20秒
▼ 大川慈英(常総学院)
・投手
・176センチ/70キロ
・右投左打
<2020年・秋季大会成績>
6試(14.0回) 防御率2.57 WHIP1.07
奪三振12 被安打11 与四死4 失点4(自責4)
奪三振率7.71 被安打率7.07 四死球率2.57
<主な球種と球速帯>
ストレート:137~146キロ
スライダー:118~124キロ
カットボール:126~130キロ
チェンジアップ:116~120キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.21秒
高校生の中に大学生が混ざっているような…
昨年は一條力真と菊地竜雅という“超高校級投手”が所属していた常総学院だが、今年も彼らと遜色ないポテンシャルを秘めた2枚看板を揃えている。
秋にエースナンバーを背負ったのが、秋本璃空だ。176センチ・80キロというプロフィール以上に体格がしっかりしており、高校生の中に一人だけ大学生が混ざっているような印象を受ける。
左足を上げた時に右足の踵を浮かせる「ヒールアップ」という動きが入り、少し古典的なフォームで重心が上下動しやすいのは気になるが、ゆったりとしたモーションで投げられ、全体的なバランスは決して悪くない。
テイクバックで右肘を早めにたたみ、体の近くでシャープに腕が振れるのが長所。ストレートはコンスタントに140キロ台をマークし、関東大会の木更津総合戦では最速145キロに達した。
そして、ストレート以上に目立ったのが変化球の精度だ。
スライダー、チェンジアップと対になる変化球で簡単にストライクをとれるほか、時折混ぜる緩いカーブで緩急をつけることができる。ストレートはあくまでも見せ球として使い、決め球として使うことの多い縦のスライダーとフォークを低めに集めるピッチングは安定感が十分だ。
関東大会では決勝の健大高崎戦こそ打ち込まれたものの、その前の2試合はいずれも無失点と試合を作る能力も高い。高めだけでなく、低めのストレートにも勢いが出てくれば、さらに変化球が生きてくることになるだろう。
細身ながら140キロ超えを連発
一方、そんな秋本と変わらないだけの潜在能力を秘めているのが、同じ3年生の大川慈英だ。
県大会ではもうひとつの内容だったが、関東大会の準決勝・東海大甲府戦で先発を任されると、6回を被安打1、無失点とほぼ完ぺきな内容の投球で、チームのコールド勝ちに大きく貢献した。
体つきは秋本と比べると細身だが、肘を柔らかく使うことができるのが大きな特長。ストレートの最速は146キロで、アベレージでも140キロを超えてくるだけのスピードがある。
少し左肩が開くのが早く、肘も下がってシュート回転しやすいのは気になるとはいえ、身のこなしには軽さがあり、フォームに引っかかるようなところがなく、楽に腕を振れるのは大きな持ち味だ。
木更津総合戦では9回から登板して1失点を喫したものの、立ち上がりから140キロ台を連発。いきなりエンジン全開で投げられる点も頼もしい。大川の安定感が増せば、秋本も後ろを気にせずに投げられるようになることは間違いないだろう。
ここ数年、力のある選手を揃えながら、常にあと一歩のところで甲子園出場を逃してきた常総学院。今年の選抜は5年ぶりの出場となるが、総合力は出場校の中でも上位である。
秋本・大川ともに秋の投球を見る限りでは、大学を経由してプロ入りというタイプに見えた。とはいえ、先輩の一條などはひと冬の間に驚きの成長を見せていただけに、2人もそれに続く可能性は十分にある。この春の大舞台での活躍次第では、一気に秋のドラフト戦線に浮上することは十分に考えられるだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所