コラム 2021.03.21. 21:05

阪神・佐藤輝明は歴史を変える男となれるか? 大卒新人のシーズン記録を振り返る

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阪神・佐藤輝明 (C)Kyodo News

想像をはるかに超える大暴れ


 阪神の大型ルーキー・佐藤輝明のバットが止まらない。

 昨秋のドラフト会議では4球団から1位指名を受け、春季キャンプでも視線を集めてきたが、開幕スタメンを目指して出場したオープン戦では持ち前の長打力をいかんなく発揮し、12試合の出場で打率.302(43打数13安打)、6本塁打。9打点をマーク。このオープン戦での6本塁打は、ドラフト制度導入後の新人による最多記録を更新するものだ。

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 ここまでの好成績を収めたとなれば、開幕スタメンは確実。歴代の大卒ルーキー打者が打ち立ててきた記録を更新し、いきなりタイトル争いに参戦することも夢ではないのではないか。

 そこで今回は大卒ルーキーが記録した「新人記録」に注目。ここで調べたのは、1950年以降の大卒ルーキーがレギュラーシーズンで記録した打撃4部門(打率・本塁打・打点・盗塁)における、上位5人の成績である。


やっぱりミスターは凄かった!


▼ 打率
・1位 .314 広岡達朗(1954年・巨人)
⇒『新人王』
・2位 .305 長嶋茂雄(1958年・巨人)
⇒『新人王』
・3位 .303 渡辺 清(1955年・阪急)
・4位 .300 横田真之(1985年・ロッテ)
・4位 .300 高橋由伸(1998年・巨人)
※球団名は当時のもの


 ルーキーイヤーに打率3割を記録した選手は8名いるのだが、うち6名が大卒の選手たちとなる。そのなかでトップだったのが広岡達朗だ。キャリアの通算打率は.240で、どちらかというと守備職人のイメージが強い広岡だが、初年度にキャリアハイとなる.314を記録している。

 ちなみに4位に入った横田真之は、佐藤と同じく阪神に在籍した横田慎太郎の父である。息子の慎太郎は病気を患い若くして引退したが、センスある打撃は父親譲りだった。


▼ 本塁打
・1位 31本 桑田 武(1959年・大洋)
⇒『新人王』『本塁打王』
・2位 29本 長嶋茂雄(1958年・巨人)
⇒『本塁打王』
・3位 26本 森 徹 (1958年・中日)
・4位 25本 村田修一(2003年・横浜)
・5位 22本 原 辰徳(1981年・巨人)
⇒『新人王』
・5位 22本 田淵幸一(1969年・阪神)
⇒『新人王』


 1位である桑田武の31本塁打は、高卒ルーキーの記録を持つ清原和博(1986年・西武)と同じ数字であり、桑田は新人でありながら本塁打王を獲得。その前年には、六大学のスターとして鳴らした長嶋茂雄も29本塁打を放ち、新人選手として史上初となる本塁打王を獲得している。

 ちなみに長嶋はこの年、一塁ベースを踏み忘れて取り消された本塁打が1本ある。もしそのミスを犯さなければ、新人ながらトリプルスリーを達成していたことになる。


▼ 打点
・1位 92点 長嶋茂雄(1958年・巨人)
⇒『打点王』
・2位 84点 桑田 武(1959年・大洋)
・3位 75点 高橋由伸(1998年・巨人)
・4位 73点 森 徹 (1958年・中日)
・5位 67点 広岡達朗(1954年・巨人)
・5位 67点 原 辰徳(1981年・巨人)


 打点は本塁打ともリンクしやすい記録なだけに、顔触れも本塁打部門とさほど変わらなかった。本塁打で2位の長嶋が打点では1位に輝いているが、この92打点で打点王のタイトルを獲得している。


▼ 盗塁
・1位 37個 長嶋茂雄 (1958年・巨人)
・2位 34個 佐々木信也(1956年・高橋)
・3位 33個 渡辺 清 (1955年・阪急)
・3位 33個 本屋敷錦吾(1958年・阪急)
・5位 32個 笘篠賢治 (1989年・ヤクルト)
⇒『新人王』
・5位 32個 伊志嶺翔大(2011年・ロッテ)


 1位は長嶋で、入団3年目までは毎年20盗塁以上を記録していた。本塁打や打点だけではなく、俊足選手としても鳴らしていたことがわかる。

 そんな長嶋に3個差で続いたのが、ロッテの前身球団で活躍した佐々木信也だった。世代によってはフジテレビ「プロ野球ニュース」のキャスターというイメージが強いかもしれないが、ルーキーイヤーには新人史上初の全試合フルイニング出場、新人最多安打記録となる180安打を放つなど活躍した。


 ここまで振り返った大卒ルーキーによる記録を見ると、半世紀以上も前のものが多数を占めた。投手の実力も上がり、ルーキーがいきなり活躍することが難しくなった現代のプロ野球。そんな2021年に、佐藤輝明はどこまで数字を伸ばしていくのだろうか。歴史を変える可能性を秘めた佐藤の1年目に注目が集まる。


文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

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