想像をはるかに超える大暴れ
阪神の大型ルーキー・佐藤輝明のバットが止まらない。
昨秋のドラフト会議では4球団から1位指名を受け、春季キャンプでも視線を集めてきたが、開幕スタメンを目指して出場したオープン戦では持ち前の長打力をいかんなく発揮し、12試合の出場で打率.302(43打数13安打)、6本塁打。9打点をマーク。このオープン戦での6本塁打は、ドラフト制度導入後の新人による最多記録を更新するものだ。
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ここまでの好成績を収めたとなれば、開幕スタメンは確実。歴代の大卒ルーキー打者が打ち立ててきた記録を更新し、いきなりタイトル争いに参戦することも夢ではないのではないか。
そこで今回は大卒ルーキーが記録した「新人記録」に注目。ここで調べたのは、1950年以降の大卒ルーキーがレギュラーシーズンで記録した打撃4部門(打率・本塁打・打点・盗塁)における、上位5人の成績である。
やっぱりミスターは凄かった!
▼ 打率
・1位 .314 広岡達朗(1954年・巨人)
⇒『新人王』
・2位 .305 長嶋茂雄(1958年・巨人)
⇒『新人王』
・3位 .303 渡辺 清(1955年・阪急)
・4位 .300 横田真之(1985年・ロッテ)
・4位 .300 高橋由伸(1998年・巨人)
※球団名は当時のもの
ルーキーイヤーに打率3割を記録した選手は8名いるのだが、うち6名が大卒の選手たちとなる。そのなかでトップだったのが広岡達朗だ。キャリアの通算打率は.240で、どちらかというと守備職人のイメージが強い広岡だが、初年度にキャリアハイとなる.314を記録している。
ちなみに4位に入った横田真之は、佐藤と同じく阪神に在籍した横田慎太郎の父である。息子の慎太郎は病気を患い若くして引退したが、センスある打撃は父親譲りだった。
▼ 本塁打
・1位 31本 桑田 武(1959年・大洋)
⇒『新人王』『本塁打王』
・2位 29本 長嶋茂雄(1958年・巨人)
⇒『本塁打王』
・3位 26本 森 徹 (1958年・中日)
・4位 25本 村田修一(2003年・横浜)
・5位 22本 原 辰徳(1981年・巨人)
⇒『新人王』
・5位 22本 田淵幸一(1969年・阪神)
⇒『新人王』
1位である桑田武の31本塁打は、高卒ルーキーの記録を持つ清原和博(1986年・西武)と同じ数字であり、桑田は新人でありながら本塁打王を獲得。その前年には、六大学のスターとして鳴らした長嶋茂雄も29本塁打を放ち、新人選手として史上初となる本塁打王を獲得している。
ちなみに長嶋はこの年、一塁ベースを踏み忘れて取り消された本塁打が1本ある。もしそのミスを犯さなければ、新人ながらトリプルスリーを達成していたことになる。
▼ 打点
・1位 92点 長嶋茂雄(1958年・巨人)
⇒『打点王』
・2位 84点 桑田 武(1959年・大洋)
・3位 75点 高橋由伸(1998年・巨人)
・4位 73点 森 徹 (1958年・中日)
・5位 67点 広岡達朗(1954年・巨人)
・5位 67点 原 辰徳(1981年・巨人)
打点は本塁打ともリンクしやすい記録なだけに、顔触れも本塁打部門とさほど変わらなかった。本塁打で2位の長嶋が打点では1位に輝いているが、この92打点で打点王のタイトルを獲得している。
▼ 盗塁
・1位 37個 長嶋茂雄 (1958年・巨人)
・2位 34個 佐々木信也(1956年・高橋)
・3位 33個 渡辺 清 (1955年・阪急)
・3位 33個 本屋敷錦吾(1958年・阪急)
・5位 32個 笘篠賢治 (1989年・ヤクルト)
⇒『新人王』
・5位 32個 伊志嶺翔大(2011年・ロッテ)
1位は長嶋で、入団3年目までは毎年20盗塁以上を記録していた。本塁打や打点だけではなく、俊足選手としても鳴らしていたことがわかる。
そんな長嶋に3個差で続いたのが、ロッテの前身球団で活躍した佐々木信也だった。世代によってはフジテレビ「プロ野球ニュース」のキャスターというイメージが強いかもしれないが、ルーキーイヤーには新人史上初の全試合フルイニング出場、新人最多安打記録となる180安打を放つなど活躍した。
ここまで振り返った大卒ルーキーによる記録を見ると、半世紀以上も前のものが多数を占めた。投手の実力も上がり、ルーキーがいきなり活躍することが難しくなった現代のプロ野球。そんな2021年に、佐藤輝明はどこまで数字を伸ばしていくのだろうか。歴史を変える可能性を秘めた佐藤の1年目に注目が集まる。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)