今季はブルペンを支える一員に
8年目の開幕は“初めての景色”が広がった。
阪神タイガースの岩貞祐太は、今季から本格的に中継ぎに転向。昨年は開幕2戦目の先発を託され、2016年にはローテーションの一員として2ケタ・10勝を挙げている左腕だが、今年はキャリアの分岐点とともに球春到来を迎えた。
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開幕カードで早くも存在感を発揮
“リリーフ岩貞”を試されるように、1試合目から出番はやってきた。
1点勝ち越した直後の6回に、藤浪晋太郎の後を受けて登板。代打・荒木にはじまり、その後はトップに返って坂口、そして青木という、出塁されれば山田・村上の中軸に回る嫌な展開を、わずか5球で阻止した。
終わってみれば、2回以降で唯一の三者凡退。一進一退の展開が続いた緊張感溢れるオープニングマッチで、浮き足立つことなく、役割を全うして見せた。
登板日があらかじめ決まっている先発と違い、いつ“お呼び”がかかるか分からないのがブルペン。昨季も途中から経験していたとは言え、岩貞にとって「適性」が問われる部分だった。
開幕2戦目。前日とは違った状況で出番が巡ってくる。6回裏二死一・二塁。先発の青柳晃洋がソロを被弾して点差は4点となり、さらに2四死球でピンチを背負ったところでコールされた岩貞の名前。痛打されれば接戦で終盤に持ち込まれかねない場面だったが、元山飛優を渾身の147キロ直球で中飛に仕留めた。
そのまま勝ち切り、チームは開幕2連勝。3戦目の登板はなかったが、敵地での開幕カード3連勝のなかで、背番号17の2試合連続ホールドが渋く光った。
キャプテンとしての自覚も胸に
“新天地”で輝くための準備も整えてきた。
1月はタイガース時代から師弟関係を結んできたオリックスの能見篤史と沖縄県内で合同自主トレを敢行。同じく先発からリリーフに働き場を移していた先輩に、心得はもちろん、調整法の詳細までを聞いた。
「成功談だけでなく、能見さんがこうやったら良くなかったとか。そういう話も聞けた」
具体的には、キャンプ中の投げ込みに関して、球数の総数は先発時と変えずに、ブルペン入りの回数を増やす。2日間で200球投げていたものを、50球ずつ4日間に分ける、というようにだ。連投を想定しながら、体のキレもしっかりと出していくアプローチで仕上げた。
左の強打者と対峙するワンポイント、2戦目がそうだったようにイニングを跨いでの起用と、期待される役割は単なる「勝ちパターンの一員」にとどまらない。何より、胸に刻まれた「C」マークがそれを表している。
今季から務める投手キャプテン。広い視野、頭の回転の速さ、多くの後輩が慕う人間性…。藤川、能見と大黒柱が去った投手陣を率いる存在として、適任であることは間違いない。
「みんな良い状態ですし、これを継続しながら。疲労が来る時もあるんですけど、助け合いで乗り切っていきたい」
開幕3連勝の要因には佐藤輝明の衝撃デビュー、サンズの3本塁打など派手なトピックも挙がる一方で、“新米リリーバー”の奮闘もしっかり加えておかなければいけない。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)