チームの先発防御率は驚異の「1.88」
4月11日、DeNA戦に登板したガンケル(阪神)が勝利投手となり、開幕から負けなしの3戦3勝とした。直球は140キロ台中盤ながら、スライダー、ツーシーム、スプリット、カットボールを巧みに投げわけてDeNA打線に的を絞らせず、6回1/3を被安打3、1失点(自責1)に抑え込んだ。
開幕から対戦カードがひとまわりして、阪神は11勝4敗0分と開幕ダッシュに成功。その大きな要因のひとつにガンケルら先発投手の安定がある。開幕からここまで、先発投手が5回をもたずに降板した試合が1試合もないチームは、12球団で阪神とロッテのみ。
ただ、阪神とロッテではその内容にいくらか隔たりがある。ロッテの先発防御率は「3.55」。今季、先発投手が打ち込まれる傾向にあるパ・リーグでは優秀な数字だが、一方の阪神の数字はなんと「1.88」。開幕直後の数字であり、リーグの違いもあるため単純に比較はできないが、この数字は当然ながら12球団ダントツの数字だ。
ちなみに、セ・リーグにおけるチーム防御率2位は広島と巨人の「2.95」。続いて中日が「2.96」で4位、ヤクルトが「4.44」で5位、DeNAが「4.58」で最下位と、先発防御率がそのままペナント順位に直結している。
「野球は先発投手で決まる」を地でいく今季の阪神
ここで、驚異的な数字を残している阪神先発陣のここまでの成績を振り返ってみる。
【2021年シーズン阪神先発成績】
藤浪晋太郎 防御率2.50 3試合(18回)1勝0敗 5失点(自責5)
青柳晃洋 防御率1.35 3試合(20回)2勝0敗 3失点(自責3)
ガンケル 防御率0.96 3試合(18回2/3)3勝0敗 2失点(自責2)
西 勇輝 防御率1.93 2試合(14回)1勝1敗 3失点(自責3)
伊藤将司 防御率2.25 2試合(12回)1勝0敗 3失点(自責3)
秋山拓巳 防御率2.77 2試合(13回)1勝1敗 4失点(自責4)
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先発全体 防御率1.88 15試合(95回2/3)9勝2敗 20失点(自責20)
先発陣全員の防御率が3点未満であり、チーム内におけるワースト防御率が秋山拓巳の「2.77」。もちろん、これも先発投手として十分に優秀な数字だ。今季、制球力が格段に増している青柳晃洋とエースの西勇輝が防御率1点台、ガンケルに至っては0.96と、投手に対する評価の常套句ではあるが、阪神の先発陣は「安定感抜群」としか言い様がない。
近年の阪神の強みは、中継ぎ陣の安定にあるといわれてきた。しかし、今季の快進撃を支えているのは間違いなく先発陣だ。開幕ローテーション入りを果たした投手全員がローテーションに穴をあけることなく先発マウンドに上がり、そして結果も出している。
もちろん、このローテーションがシーズンの最後まで続くことはないかもしれない。しかし、今季の阪神の投手層は分厚い。ここに新外国人のアルカンタラやチェンが控えており、春季キャンプで右脇腹を痛めた高橋遥人も復帰に向けて順調に調整中だという。現在のローテーションが崩れたときには、その穴をきっちり埋められる投手がいると期待していいだろう。
球界には「野球は先発投手で決まる」という言葉もある。今季の阪神は、「JFK」の名で親しまれた勝利の方程式でペナントレースを制したかつての阪神とは異なるかたちでの優勝を、見せてくれるかもしれない。
※数字は4月11日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)