静岡の伝統校が誇る185センチ左腕
東海大相模(神奈川)の10年ぶり3度目の優勝で幕を閉じた今年の選抜高校野球大会。
「春はセンバツから」という言葉もあるように、今年のドラフト戦線が本格的に動き出す大会ということで、連日多くのスカウト陣が甲子園球場のネット裏に詰めかけていた。
一方で、2年ぶりに開催された晴れ舞台の裏で、甲子園出場が叶わなかったチームも夏に向けて動き始めている。
3月6日に対外試合禁止期間が終わり、各チームが練習試合を再開。センバツに出場するチームの実戦については連日報じられたが、当然ながらニュースで取り上げられていないチームの中にも楽しみな選手も少なくない。
そこで今回は、静岡の進学校に現れたプロ注目の“大型サウスポー”を取り上げたい。
▼ 沢山優介(掛川西)
・投手
・185センチ/82キロ
・左投左打
<主な球種と球速帯>
ストレート:137~144キロ
カーブ:108~115キロ
スライダー:120~125キロ
チェンジアップ:120~122キロ
☆クイックモーションでの投球タイム:1.38秒
「185センチ」以上の高さを感じる姿勢の良さ
センバツ開幕直前の3月14日、静岡・掛川西のグラウンドで行われた静岡高校との練習試合。県内でも屈指の伝統校同士の対戦とあって、バックネット裏のスタンドには試合開始の1時間以上も前から多くのオールドファンが詰めかけていた。
スタンドから熱視線を送っていたのはファンだけではない。この日は4球団・5名のスカウトの姿もあった。その“お目当て”と見られるのが、掛川西のエース・沢山優介である。
1年夏からベンチ入りすると、昨年夏には140キロを超えるスピードをマーク。秋の静岡県大会は初戦で強豪の藤枝明誠に敗れたものの、東海地区でも屈指の存在と見られている大型サウスポーとして注目を浴びている。
この日も先発マウンドに上がったが、まず目を引くのがその長身とマウンドの立ち姿だ。チームを指導する大石卓哉監督に試合前に少し話を聞いたところ、「姿勢だけはいいですよ」と謙遜気味に話していたが、その言葉の通り、185センチという上背以上に大きく見える。
また、長身を持て余すことなく、上手く操ってスムーズに腕が振れるというのも大きな長所。少しテイクバックで左肩が下がる動きが入るものの、いわゆる“ギクシャク”したような感じはなく、高い位置から腕を振り下ろすことができるため、ボールの角度はかなりのものがある。
試合では、立ち上がりこそ少しリリースが定まらず、いきなり二死満塁のピンチを招いたものの、しっかりと腕を振って後続を抑えると、2回以降は安定したピッチングを披露。
5回に不運な当たりもあってツーベース2本で1点は失ったものの、県内随一の実力校である静岡高を相手に5回を4安打、1失点と上々の投球を見せた。
久々の甲子園出場、そしてプロ入りに向けて…
ストレートの最速は143キロをマーク。驚くような数字ではないが、コンスタントに140キロ前後をマークしており、ストレートの勢いに大きなムラがなかった。この日は風も強く、対外試合が明けたばかりの時期ということを考えると、夏までにはさらに球速があがる可能性が高いだろう。
変化球はカーブやスライダー、チェンジアップと一通りのボールを操るが、まだコントロールはアバウトで、確実に頼れるボールがないというのは今後の課題となる。
ただ、それでもスライダー、チェンジアップともしっかり投げ切ったボールは打者の手元で鋭く変化して空振りを奪うことができていた。その良いボールを投げられる割合が増えてくれば、ストレートも生きてくるはずだ。
掛川西は沢山の後を受けて登板した右腕の榊原遼太郎も、最速で140キロをマーク。4回を投げて2点は失ったものの、6奪三振、四死球0と見事な投球を見せた。榊原の存在も、沢山にとっては大きなプラスである。
県立の進学校でありながら、過去に春夏9度の甲子園出場を果たしている掛川西。しかし、2009年の春以来、甲子園出場から遠ざかっている。
プロ選手も、立正大からセガサミーを経て2012年のドラフト4位でDeNAに入団した赤堀大智が最後。この日スタンドに詰めかけたオールドファンからの期待の声も大きかったが、沢山は甲子園出場とドラフト指名のどちらも十分射程圏に捉える潜在能力を秘めた選手であることは間違いないだろう。
夏には、さらにスケールアップしたピッチングを見せてくれることを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所