鴎の未来を担う9人のルーキーたち
今季は開幕から栗林良吏(広島)、牧秀悟(DeNA)、若林楽人(西武)、伊藤大海(日本ハム)など、新人選手の躍動が例年以上に目立つ。
千葉ロッテマリーンズのルーキーたちも他球団の新人に負けじと、プロ初登板となった3月28日のソフトバンク戦の5回から13イニング連続奪三振を記録するドラフト1位の鈴木昭汰をはじめ、同3位の小川龍成、同4位の河村説人など“新人王”候補、そして将来が楽しみなルーキーたちがいる。
#35 鈴木昭汰(22)|投手|左投左打
法政大時代の4年間は、「体づくりとスピードアップを心がけてやっていました」と、高校時代から体重は4年間で約10キロアップの80キロ、ストレートのスピードも高校時代から約10キロ近くアップ。大学4年のオープン戦では、最速153キロをマークした。
春季キャンプは一軍スタートをきり、2月13日からの対外試合では「自分の持ち味である強気のピッチングと打者を抑えにいく姿勢をしっかり見せていきたい」とコメント。持ち味を存分に発揮し開幕ローテーションを掴み取った。
初勝利こそ挙げられていないものの、その投球内容は安定感抜群。まずはひとつ、キッカケとなる白星を掴んでもらいたい。
#56 中森俊介(18)|投手|右投左打
高校のときから自身で考えてトレーニングをしたり、投げることを意識してきた中森は、プロの世界でもその姿勢は変わらない。
プロ入り後初めてブルペンとなった2月9日には、振りかぶって10球を投じた後、「右足の軸足一本で立ったときに、軸がしっかりして立てているのか確認するために、セットで投げました」と自分の判断で、11球目から3球連続でセットポジションで投げ込んだ。
再び大きく振りかぶって7球、最後にセットポジションから1球を投げ、この日は捕手を立たせて合計21球を投げ込んだ。
「9回を投げていくうえで、下半身の力が大切になってくると思います。しっかり下の力を体幹を通じて、指先のリリースまで力を伝えられるようにと思ってやっているので、下半身、体幹というのを意識してやっていきたいと思います」
プロの舞台で活躍するために、今はその下地を作っている最中だ。
#57 小川龍成(23)|内野手|右投左打
“大学ナンバー1ショート”と呼ばれたその高い守備力は本物だ。守備を見ていると、打球に対しての1歩目のスタートがはやく、ボールを捕球してから握り替えるまでのスピードもはやい。
「日頃のキャッチボールのときから自分の最速に近い握り替えというか、キャッチボールは少しミスしてもいいくらいで、なるべくはやく握り替えるように意識しています」
持ち味は反復練習で掴んだ努力の賜物。「高校時代も当時の監督さんであったり、コーチの方にそういう風にやるように言われていましたが、大学になってその意識がより強くなりました。大学時代に握り替えは向上できたかなと思います」と振り返るように、学生時代からボールの握り替えのはやさを“常に意識”して取り組んできた結晶だ。
3月19日に行われた巨人とのオープン戦で、スライディングした際に右膝を負傷し途中交代。
開幕一軍を逃し、状態が気になるところではあるが、元気にプレーすることができれば、守備面では大きな戦力となる。
#58 河村説人(23)|投手|右投右打
河村は春季キャンプ中の取材で「まずは抑えるのが一番」と話していたが、その言葉通り、2月の対外試合から6試合連続で無失点に抑えるなど、アピールに成功し開幕一軍入りを果たした。
最速150キロを誇るストレートに、自身が武器と話すフォーク、春季キャンプ中に捕手陣から高く評価を受けたカーブ、さらにはスライダー、カットボールといった球種を持つ。
身長192センチから投げ下ろすストレート、落差の大きいフォークは魅力的で、4月8日のオリックス戦で紅林から空振り三振に仕留めたストライクゾーンからボールゾーンに落ちる132キロのフォークは素晴らしいボールだった。
小野郁、ハーマンといった“勝ち試合の8回”を担う投手が不調なだけに、結果を残し続ければ、“勝ちパターン”で投げる可能性を秘めている。
#59 西川僚祐(18)|外野手|右投右打
高卒新人ということもあり、一軍の出場はないが、ファームでのプロ初安打を本塁打で達成した。高校通算55本塁打を放った“長打力”が最大の魅力で、春季キャンプの打撃練習では「ボールを上から叩いて、距離を出すこと」を意識して取り組んだ。
春季キャンプ中は「打撃練習もそうですけど、走塁、守備練習をイチから教えてもらい、学べているのは良いのではないかなと思います」と話し、「ノック以外でも守備であったら、高校野球でもやるような基本的なこともプロ野球でもイチからやるというのは、プロに入っても基礎基本が大事だということがわかりました」と、改めて“基本”の重要性を再認識した。
プロの世界に飛び込んだばかりの西川は、自身の将来について、「日本を代表する右バッターになれたらいいなと思います」と目標を掲げる。
マリーンズと言えば、長らく長打力不足に喘いでおり、直近10年でシーズン30本塁打以上放った選手は2019年のレアードのみ。
そういった意味では、3年目の山口航輝とともにルーキーの西川には将来的に長打力で、大きな期待がかかる。
#122 谷川唯人(18)|捕手|右投右打
捕手ということもあり、春季キャンプ中は毎日のように投手の球を受けて勉強した。
プロの投手の球を実際に受けてみて分かること…。
「球の勢いは(高校生と)違いますし、1人1人自分の長所をわかって投げられている。それは受けていてもしっかりとわかります。自分は高校から入ってきているので、その変化というのは苦労しています。早くキレ、速さに慣れていかないといけないなと思います」
春季キャンプ中はとにかく、たくさんの投手の球を受け、特徴を覚えた。
さらに、「毎日受けた投手は、ノートに取っています。早く特徴を覚えていきたいなと思っています」と、宿舎に戻ってからも投手の特徴や1日の練習を振り返る。
マリーンズの捕手陣は20代後半の選手が多く、育成選手ではあるが、高卒からプロ入りした谷川にかかる期待は大きい。
#121 小沼健太(22)|投手|右投右打
小沼は最速151キロのストレートに変化球はスライダー、カットボール、フォークなど、ストレートに近い球速の変化球を投げる。ファームでは、勝ち試合の9回で登板することも多く、4月9日の西武との二軍戦では1-0の9回からマウンドに上がり、打者3人で打ち取ってセーブを挙げた。
春季キャンプ中のブルペンでは“強いボールを投げること”、それから“変化球の精度”を意識して投げ込み、捕手陣からはカットボールの評価を高く受けたそうだ。
「今まではカットボールとスライダーで勝負していったんですけど、NPBに入ってからはフォーク。身長が高いぶん、フォークも武器になると思うので、ブルペンでもフォークを意識して練習しています」と春季キャンプ中に話していた。
4月9日の西武戦ではジョセフに投じた初球のフォークは、ストライクゾーンからボールゾーンに落ちる良いフォークだった。ファームで結果を残し、1日も早く背番号“二桁”を勝ち取りたい。
#124 山本大斗(18)|外野手|右投右打
「バッティング、そのなかでもホームランを打ってしっかりアビールしていきたいです」
春季キャンプ中のオンライン取材で、力強く意気込みを語っていた山本大斗は、3月20日に行われたDeNAとのファーム開幕戦でプロ初打席・初本塁打を放った。
「バッティングが売りで、プロ野球の世界に入らせてもらった。しっかりキャンプで磨いてアピールしていきたいと思います」。
そのなかでも“長打力”を武器にしている。プロの世界に飛び込んできて自身の打撃に春季キャンプ中、「自分より全然上の選手がいるので、その選手を見習ってこれからの練習に取り組んでいきたいと思っています」とプロのレベルの高さを実感していた。
打席内での雰囲気があり、3月23日の日本ハムとの二軍戦で、柿木の低めの変化球を見逃し、四球を選んだときも外角のストレートを冷静に見送っていた姿はとてもルーキーとは思えなかった。
#129 佐藤奨真(22)|投手|左投左打
「そこまで球は速くないんですけど、速くなくても抑えられるところを見て欲しいです」。
ストレートの最速は143キロで、大学時代の平均球速は135、6キロ。スピードは速いとはいえないが、ストレートを速く見せることで打者を打ち取っていく。
ストレートを速く見せるために「バッターのスイングとか間とかを見て、相手の嫌がるタイミングで投げたり、緩急もそうですけど、フォームもいろいろと(打者が)見えにくいような投げ方だったりを追求してやっていました」と打者を打ち取るために、工夫を凝らした。
投球の割合でいうと「去年だと少しカットボールが少ないのかなという割合ですね」とのこと。「自分のなかではカットボールが安定して投げられる。よく使うボールです」と自信を持っている球種のひとつだ。
ファームでも3月25日の日本ハム戦で、公式戦デビューを飾り、1回を打者3人に対しわずか15球で打ち取った。
鈴木、河村はすでに一軍の戦力として活躍しており、高卒の西川、山本の2人は右の大砲候補としてファームで腕を磨く。野手では安田尚憲、藤原恭大、和田康士朗、山口航輝、投手では種市篤暉、土居豪人、古谷拓郎、佐々木朗希といった楽しみな若手が多く、今年プロ入りしたルーキーたちも、彼らとともに数年後、強いマリーンズを築いてくれるはずだ。
文=岩下雄太(いわした・ゆうた)