2021.04.18 14:00 | ||||
阪神タイガース | 10 | 終了 | 7 | 東京ヤクルトスワローズ |
甲子園 |
スタメン抜擢後、中野が6試合連続安打と絶好調
虎のドラ6ルーキー・中野拓夢(三菱自動車岡崎)がその存在感を増している。春季キャンプ中やオープン戦から打撃・守備ともに評論家の絶賛を集めた中野だが、シーズン開幕後は代打や代走としての出場が続いていた。しかし、そんな出場機会が限られるなかで5割超の打率をキープ。4月10日のDeNA戦から遊撃のスタメンに抜擢されると、以降6試合連続でヒットを連ね、「.467」という高打率を維持している。
4月18日のヤクルト戦でもその打撃が光った。一時はリードを8点に広げていた阪神だが、終盤に山田哲人の3ランが飛び出すなどして点差は3点にまで縮まる。詰め寄られた直後の7回の攻撃では、大山悠輔とサンズの連打で無死二、三塁のチャンスをつくるも、佐藤輝明と坂本誠志郎が凡退。阪神側からすれば、このまま無得点に終われば嫌な流れになりそうなところだったが、続く中野が持ち味の高いミート力を発揮して左翼前へ2点適時打をマーク。再びゲームの流れを阪神に引き寄せた。
その後の8回には失点につながる送球エラーを犯してしまったが、中野の守備力は高い。その他の守備機会では、初回に山田が放った三遊間の深い位置へのあたりを難なくさばくなど安定したプレーを披露。プロ入り時点からもともと守備力を評価されているだけあり、阪神の春季キャンプで臨時コーチとして中野を指導した川相昌弘氏(元巨人他)もメディア等でその守備力を絶賛している。
ルーキーの台頭により出場機会激減中の北條と木浪
近年の阪神においては、遊撃手の固定、その守備力向上が大きな課題であり、中野の台頭はよろこばしいことだ。しかし、プロというステージで長いシーズンをとおして活躍することは簡単ではない。ルーキーであり、身長171cm体重69kgと小柄な中野が、シーズンの最後までスタメンを張れる体力を持ち合わせているかは不透明だ。他球団の研究が進み、プロの壁に阻まれて打撃の調子を落とすこともあるだろう。
そんなときこそ、北條史也や木浪聖也らチームの先輩たちの奮起に期待したい。ふたりとも、鳥谷敬(現ロッテ)の後継者として遊撃のレギュラー定着を期待され、これまで何度となくチャンスを与えられてきた。とくに北條は光星学院(現八戸学院光星)時代の甲子園での大活躍もあって藤浪晋太郎に次ぐ2012年ドラフト2位で入団。大きな期待を寄せられてきた選手でもある。しかし、北條、木浪ともに守備に課題を残し、いまやすっかり中野の陰に隠れてしまっている。
遊撃の開幕スタメンとして今季をスタートした木浪は、4月7日の巨人戦を最後にスタメン出場はなく、途中出場した4月9日のDeNA戦では課題の守備で1イニング2失策。打率も.「192」と低迷している。北條に至ってはいまだスタメン出場がなく、与えられた打席はわずか「4」にとどまり今季はここまでまだ無安打だ。
4月18日のヤクルト戦では、中野が2点適時打を放った直後に代打として登場した北條が、ボールカウント3-0から真ん中付近の甘い直球に手を出すも捉えきれず、結果は捕邪飛。代打という難しい立場ではあったものの、中野と対照的な打席となってしまった。野球ファンにとってルーキーの活躍は本当に楽しくうれしいものだが、「再びスタメンを奪ってやる!」という、北條や木浪の意地も見てみたいとも思うもの。
そして北条や木浪の奮起は、チームの総合力にも大きく関わってくる。ここまで15勝4敗で貯金11と首位を走る阪神だが、ペナントレースにはなにが起こるかわからない。中野が調子を落としたときに彼らがしっかりと活躍することができれば、16年ぶりのリーグ優勝も現実味を増してくることだろう。
※数字は4月18日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)