2021.04.21 17:45 | ||||
千葉ロッテマリーンズ | 6 | 終了 | 5 | 北海道日本ハムファイターズ |
ZOZOマリン |
4月連載:予測不能な開幕~第4回・新人たちの明暗
スポーツとは、時として残酷な結末をもたらすものだ。勝者と敗者。その差はあまりに大きい。
日本ハムのドラフト1位ルーキー・伊藤大海投手が悲運に泣いている。
21日に行われたロッテ戦に4度目の先発。今季は貧打に泣く打線が中盤に5点を先制すると、伊藤も6回まで散発2安打無失点の快投を見せていた。
疲れの見え出した7回に3失点を喫するが、リードを残したまま後続投手に後を託してマウンドを降りた。あとは待望の初勝利を待つだけだった。
ところが、8回に1点差と追い上げられ、さらに最終回二死から信じられないドラマが起こる。新守護神の杉浦稔大投手が岡大海選手にまさかの一発被弾でサヨナラ負け。新人にはあまりに気の毒な結末だった。
23イニング連続三振&4戦連続QS
この試合で伊藤は快記録を打ち立てている。プロ初先発となった3月31日の西武戦からこの日のロッテ戦4回まで、実に23イニング連続三振の快挙をやってのけたのだ。球団では80年の木田勇氏以来41年ぶりの新人タイ記録。連続イニング奪三振記録としては、ソフトバンクのデニス・サファテ投手が記録した43イニングなど上はいるが、新人がデビュー直後からとなると史上初となる。
今季の通算奪三振38もリーグトップで、奪三振率13.15は12球団でも断トツの1位である。これだけ出色のルーキーなのに22日現在の投手成績は0勝2敗だから悲劇のプロ人生すべり出しと言っていい。
伊藤の投球の跡を振り返ってみる。
3月31日:6回1失点 被安打4、奪三振8 <西武戦>
4月 7日:7回3失点 被安打4、奪三振11<ソフトバンク戦>
4月14日:6回2失点 被安打7、奪三振9 <西武戦>
4月21日:7回3失点 被安打5、奪三振10<ロッテ戦>
先発投手が責任を果たす指標と言われるクオリティースタート(6回以上を3失点以内)は100%、2ケタ奪三振は2試合に上る。ちょっとした運とチームに勢いがあれば4連勝をしていてもおかしくない。それが1勝もできていないところに今の日本ハム最下位の病巣がある。
1点、2点、1点、5点、これが伊藤の登板日にチームが記録した得点だ。つまりロッテ戦を除いては打線が沈黙。打者陣が奮起すれば、リリーフ陣が守り切れない。
開幕直後の10試合を1勝7敗2分け、チームに本塁打が記録されたのは10試合目と、球団ワースト記録を塗り替える最悪のスタート。7日のソフトバンク戦では好機に凡退した主砲の中田翔選手がバットをへし折り、ベンチ裏で転倒して目を負傷するなどムードも悪くなるばかりだった。
ようやく、打線に当たりが出てきたら、今度は投手陣が怪しくなる。直近の1週間では堀瑞輝、宮西尚生らの中継ぎエース格が打ち込まれ、ストッパーの杉浦まで沈んだ。こうなると単に巡りあわせとばかり言っていられない。伊藤の初勝利を逃した試合後に「本当に申し訳ない」と、栗山英樹監督は声を振り絞ったが借金8の現実はあまりに重い。
反転攻勢の鍵は……
伊藤の評価は依然として高い。某評論家は「スライダーの切れが素晴らしいし、コントロールもいいので大崩れしない。もうすでにチームのエース格」と語る。
球団初の“道産子”ドラフト1位。常時150キロ近いストレートに加えて自慢のスライダーを自在に操り、カウント球にもウイニングショットにも使える。そこにツーシームやカットボールを駆使して三振の山を築く。昨年オフにはエースの有原航平がメジャーのレンジャースに移籍。手薄な先発陣にあって、上沢直之投手以外に勝ち星の計算できる人材は見当たらない。だからこそ、反転攻勢の鍵は伊藤の登板日に白星をつけることだ。
有原に限らず、ダルビッシュ有や大谷翔平とエースたちが相次いで海を渡っていった。ポスティングシステムを容認し、海外挑戦の門戸を開いてきた球団の宿命だ。しかし、それを埋めるべき清宮幸太郎や吉田輝星選手ら逸材の伸び悩みがチームの苦境に拍車をかけている。投打のかみ合わせの悪さなのか、総合力でライバルチームに劣っているのか。いずれにせよ、生きのいい若手が出て来ない限り先行きは厳しい。
ルーキーの当たり年。佐藤輝明(阪神)、早川隆久(楽天)、牧秀悟(DeNA)らにスポットは当たっているが中身では伊藤も劣っていない。勝負事は白か黒の世界。悲運の先にはきっと歓喜の時が待っている。新人の出世レースはまだ始まったばかりだ。
文=荒川和夫(あらかわ・かずお)