コラム 2021.05.05. 08:29

「宮城で宮城がゼロ封」だけじゃない!名字と同名の土地で大活躍した選手たち

無断転載禁止
(楽天生命パーク)宮城で勝利した宮城

オリの19歳左腕が快進撃


 オリックスの2年目左腕・宮城大弥が開幕から先発ローテを守り、チームを牽引している。

 急性胃腸炎による一時離脱はあったものの、ここまで5試合に登板して3勝負けなし、防御率は1.53。何より19歳とは思えぬ“貫禄”で注目を集めている。




 なかでも圧巻だったのは、4月4日に楽天生命パーク宮城で行われた楽天戦。

 4回途中から13打者連続アウトを記録するなど、8回を2安打・無失点の快投。翌日のスポーツ紙には「宮城が宮城でゼロ封」の見出しも躍った。

 もとより、沖縄県出身の宮城は宮城県とは縁もゆかりもないのだが、名字と“同名の土地”でヒーローになった男たちは、過去にも存在した。



市役所が表彰するケースも!


 生まれて初めて訪問した街で2日続けてヒーローになり、「この土地が大好きになりました」と“第2の故郷”のような親近感を抱いたのが、ロッテ・松本尚樹だ。


 1999年6月1日、長野県の松本市野球場で行われた日本ハム戦に「7番・二塁」でスタメン出場した松本。

 2-1とリードの4回二死二塁のチャンスで、関根裕之から中越えにシーズン1号・通算3本目となる本塁打を放ち、勝利の立役者になった。

 試合後、松本は「松本が松本でホームランを打ちましたよ!」と冗談めかして“同名のご利益”を強調したが、話はそれだけでは終わらなかった。


 翌2日、引き続き松本で行われた日本ハム戦は、3-3のまま延長戦に突入。

 ロッテは12回一死一・二塁で、前日のヒーロー・松本が黒木潤司のストレートを中前にはじき返し、4-3で勝利した。

 試合後、松本は「5打席安打がなかったので(4打数無安打1四球)、気持ちを高ぶらせて打席に入りました。この土地がヒットを生んでくれましたよ。この土地が大好きになりました」と2日連続の“松本効果”に大喜びだった。


 そして、このコメントが市民の大反響を呼んだことから、松本市役所は急きょ、翌日の移動日に松本駅のホームで松本を特別表彰。

 かくして、和歌山県出身の松本にとって、松本は生涯忘れられない土地となった。


投打二刀流の外山が「富山」でヒーローに


 漢字の表記は異なるものの、読み方が同じ富山でヒーローになったのが、ヤクルトの投打二刀流・外山義明だ。


 県営富山球場で行われた71年5月18日の巨人戦。ヤクルトは8回まで1-4とリードされ、敗色濃厚だったが、最終回に武上四郎の2打席連続ソロで反撃の狼煙を上げる。

 さらに犠飛で1点差に追い上げ、なおも二死一塁という場面で、三原脩監督は「代打・外山」を告げた。

 投手ながら5月16日の阪神戦でも代打逆転二塁打を放っており、近鉄時代にも永淵洋三を“投打二刀流”で売り出した三原監督の秘蔵っ子的存在だった。


 すると、外山はその期待に見事応え、カウント1ボール・2ストライクから山内新一の4球目が内角高めに入ってくるところを右越えに逆転2ラン。見事勝利をもたらした。

 これには仕掛け人の三原監督も、「外山が富山で打った。自然の演出の妙ですな」とビックリ。

 9回裏にはエース・松岡弘を投入したが、投手コーチに外山のリリーフを進言されて迷ったこともあり、「お客さんから“外山”と言われれば、使ったところだ」とリップサービス。

 確かに「富山で外山が投げる」演出も見たかった気がする。


現役選手のエピソードも…


 石川が石川でヒーローになったのが、2004年4月25日に金沢市の石川県立野球場で行われた中日-ヤクルト戦だ。


 ヤクルトの先発は、肘痛からの復活を目指す石川雅規。開幕から2連敗中の左腕に白星をプレゼントしようと、初回からヤクルト打線が爆発する。

 1番・佐藤真一から5連続長短打を川上憲伸に浴びせて3点を先取。なおも二死満塁で石川が自ら右中間に走者一掃の二塁打を放って6-0。さらに2回に3点、3回にも古田敦也の満塁弾で4点を加え、13-0と大きくリードした。

 ここまでは良かったが、石川は4回二死から味方の連続エラーなどで3点を失うと、6回にも3安打を集中されて2失点とピリッとせず、一死を取っただけで降板。だが、リリーフ陣が踏ん張り、13-7で、待望のシーズン初白星を手にした。

 「(打撃は良かったが)ピッチングのほうは全然ダメ」と反省しきりの石川だったが、この1勝を弾みに、同年は1年目から3年連続2ケタとなる11勝を挙げた。

 ちなみに、この試合では中日のルーキー右腕・石川賢も5回からリリーフ。2回無失点でプロ初登板を飾っている。


 また、読み方は異なるものの、同名の「長野」で大活躍したのが、巨人時代の長野久義だ。


 2014年9月2日に長野オリンピックスタジアムで行われた広島戦。右膝を負傷して以来、10試合ぶりに「1番・右翼」でスタメンに名を連ねた長野は、1点を先行された1回裏、右前安打で出塁し、坂本勇人の逆転弾を呼び込む。

 さらに1点リードで迎えた2回二死二塁のチャンスに、野村祐輔の内角シュートに詰まりながらも、左前にタイムリー。7回にも追加点につながる右前安打を放つなど、4打数3安打1打点の猛打賞で勝利に貢献した。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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