「九州アジアリーグ」の注目株
現在、国内の独立リーグといえば、2005年にスタートした『四国アイランドリーグplus』と、2007年にスタートした『ルートインBCリーグ』の2つがメインとなっている。
このほか、『さわかみ関西独立リーグ』、『北海道ベースボールリーグ』があるが、前出の2つと比べると歴史も浅く、リーグのレベルにも大きな差がある。そんななか、今年から発足した“もうひとつの独立リーグ”が、『九州アジアリーグ』である。
加盟している球団は、熊本を本拠地とする「火の国サラマンダーズ」と、大分を本拠地とする「大分B-リングス」。
新興のリーグではあるが、「火の国サラマンダーズ」には都市対抗野球に2度出場した実績のある社会人野球の熊本ゴールデンラークスに所属した選手の多くが移籍している。
高校~大学時代から注目された選手もいるため、その実力をチェックすべく、4月24日の徳島インディゴソックス(四国アイランドリーグplus)との交流戦が行われる熊本に足を運んだ。
ドラフト候補となりそうな3投手の実力は…?
試合は序盤から火の国サラマンダーズ打線が活発で、徳島の投手陣を圧倒。最終的に3本のホームランを含む13安打を放ち、11-4と地元で大勝したが、ドラフト候補という意味で注目したのが3人の投手だ。
まず1人目が、6回から2番手で登板した西島篤である。
長崎国際大・硬式野球部の1期生であり、在学中はチームの一部昇格に貢献。当時から145キロを超えるストレートを投げており、九州では少し評判となっていたが、大学卒業時点でプロからの指名はなく、熊本ゴールデンラークスに進んでいる。
この日は打者3人をノーヒット、1奪三振と安定したピッチングを披露。たくましい体格とオーソドックスなフォームから投げ込む最速148キロのストレートは威力十分で、バットをへし折る場面が見られた。
今年で大学卒3年目の25歳という年齢を考えると、ドラフト指名のハードルは高いが、力のあるボールを投げるリリーフタイプはどの球団も欲しいだけに面白い存在と言えそうだ。
▼西島 篤
・年齢:25歳
・身長/体重:183センチ/90キロ
・投打:右投右打
・経歴:九州文化学園高→長崎国際大
最速149キロの“若き右腕”
つづいて2人目は、8回からマウンドに上がった水野喬日。
静岡の湖西高校時代にも評判となっており、3年前の夏の大会でもそのピッチングを見ている。当時の印象では、馬力はあったがフォームのバランスはまだまだで、スピードは最速140キロにとどまっていたことから、高校からのプロ入りは難しいという印象を受けた。
その後、熊本ゴールデンラークスで2年間を過ごしたが、高校時代と比べると躍動感が明らかにアップした。この日の最速は、両チームで登板した10人の投手の中で最も速い149キロをマーク。不運な当たりのヒットもあって、3人の出塁を許したが、最終的には無失点に抑えたところにも成長が感じられた。
西島と比べると、コントロールや変化球は課題が残ったものの、今年で21歳という若さは大きな魅力。素材の良さを評価する球団が出てくることも十分に考えられる
▼ 水野喬日
・年齢:21歳
・身長/体重:177センチ/83キロ
・投打:右投右打
・経歴:湖西高
150キロ連発でソフトバンク三軍を封じた
そして3人目。最も強いインパクトを残したのが、最終回に登板した石森大誠だ。
遊学館高時代は3年夏に小孫竜二(現・鷺宮製作所)の控えとして甲子園に出場。東北公益文科大ではエースとして活躍した。2019年3月に行われたJR東日本とのオープン戦でそのピッチングを見たが、最速141キロのストレートは数字以上に勢いがあり、サウスポーらしいボールの角度も光っていた。
この日は1イニングの登板ながら、ストレートの最速は148キロ。打者3人をパーフェクト、1奪三振と圧巻の投球で試合を締めくくった。大学時代と比べて、ゆったりと軸足に乗せてからステップし、体重移動にスピードが出てきたようだ。
スムーズに肘が高く上がり、指にかかった時のボールの角度は抜群。スライダーを右打者の外角に狙って決めることができる。本格派サウスポーながら、コントロールが安定している。
ちなみに、石森は4月27日のソフトバンク三軍との交流戦でも最終回のマウンドに上がり、150キロを連発して3者連続三振に抑えている。
同じサウスポーで有力な候補と言われている森翔平(三菱重工WEST)と比べても、ボール自体は全く劣っていないように見えた。これだけ力のあるボールを投げ込むサウスポーは非常に貴重な存在だけに、今後高い注目を集めることは間違いないだろう。
▼ 石森大誠
・年齢:24歳
・身長/体重:178センチ/80キロ
・投打:左投左打
・経歴:遊学館高→東北公益文科大
コロナ禍で独立リーグの運営は厳しい状況にあるが、今回紹介した3人のピッチングからは、そんなモヤモヤを吹き飛ばすような勢いが感じられた。
今後も、NPB球団から注目を集めるような選手が、九州アジアリーグに次々と登場することを期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所