コラム 2021.05.11. 07:09

快挙目前から暗転…「ノーノー寸前」から負け投手になったあまりに不運な男たち

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2011年のヤクルト-広島戦・前田健太に悲劇が… (C) Kyodo News

今季はメジャーで乱発!


 達成できそうで、なかなか達成できない「ノーヒットノーラン」の快挙。

 今季はメジャーリーグで早くも4人もの達成者が出ているが、日本のプロ野球では昨年8月にヤクルト・小川泰弘が達成したのを最後に出ていない。




 NPBの公式サイトでも達成者がまとめられている「無安打無得点試合」。

 長い歴史の中で82人・93度の達成があったが、過去には“あと一人”で快挙を逃すパターンというのも多々ある。

 それも、その場合は終わってみれば1安打完封勝利というケースがほとんどなのだが、なかには初安打を許した後に一転、負け投手となってしまった不運な男たちもいる。



虎の伝説の助っ人も…


 まず紹介するのは、阪神のジーン・バッキーである。

 1963年5月26日の大洋戦。バッキーは9回一死までパーフェクトに抑えるが、ここから土井淳に四球を与えたあと、稲川誠の三塁前送りバントが二塁悪送球となり、たちまち一・三塁のピンチを招いてしまう。

 つづく島田幸雄を投ゴロに打ち取り、ノーヒットノーランまであと一人に迫ったものの、次打者・浜中祥和を遊ゴロに打ち取ったかに思われたが、打球が吉田義男の捕球直前で二塁ベースに当たり、痛恨のタイムリー安打になってしまう。


 その裏、阪神は無得点に終わったため、0-1の惜敗…。

 不運な敗戦投手になったバッキーは、ノーヒットノーランをふいにしたばかりでなく、プロ初勝利まで逃してしまった。


 その他にも、0-0から負け投手になった例では、ヤクルトの村中恭兵も2008年5月3日の巨人戦で、9回一死まで無安打に抑えながら、亀井義行に初安打を許したのをきっかけに崩れ2失点。

 そこから2番手・五十嵐亮太も阿部慎之助に3ランを浴びるなど、一挙5点を失う大どんでん返しに泣いている。


巨人相手の快挙が目前で…


 2人目は中日の佐藤公博。

 1966年9月26日の巨人戦。佐藤は8回まで3四死球のみの無安打・無失点に抑え、「無安打は7回頃に知り、やれそうに思った」と確信を深めていた。

 1-0で迎えた9回裏も、簡単に二死となったが、この日2三振と当たっていない柴田勲に初球、外角寄りシュートを左中間に流し打たれ、快記録は幻と消える。

 さらに王貞治を敬遠して二死一・二塁となり、次の打者・森昌彦に初球の内角高めを右翼席に運ばれ、佐藤は勝利目前からまさかの逆転サヨナラ負けを喫した。


 同年、巨人は7月31日の広島戦でも、9回二死に黒江透修が安仁屋宗八から初安打を記録。シーズン二度にわたって「あと一人」でノーヒットノーランを阻止している。

 前年の1965年から前人未到の9連覇がスタートしており、最後まで試合をあきらめない不屈の精神がチームに浸透していた結果と言えるだろう。


巨人を完全試合寸前まで追い詰めたが…


 球団創設以来、一度も完全試合をやられたことのない巨人。

 そんな相手を8回二死までパーフェクトに抑えながらも、直後に暗転劇が待ち受けていたのがヤクルトの松岡弘だ。


 1972年8月17日の巨人戦。松岡は力の投球で、7回まで一人の走者も許さず、2-0とリードした8回も王を二ゴロ、長嶋茂雄を左邪飛に切って取った。

 しかし、「バットを短く」の国松彰コーチの指示に逆らい、バットを目一杯握った槌田誠に、98球目をしぶとく中前に落とされ、ついに記録ストップしてしまう。


 「オレは短くなんか持って、打てやしねえもの。長く振ったからこそ、詰まったってヒットになったんだ」という槌田。それにしてやられた松岡は、グラブを叩きつけて悔しがった。

 「全身の力が抜けていくのを抑えることができなかった」という松岡は、次打者・上田武司に初球を左翼席中段に運ばれ、あっという間に2-2の同点。さらに9回にも、先頭の滝安治に右越え三塁打を浴び、柴田の中犠飛であっさり勝ち越された。

 許した3安打のすべてが失点に結びつき、負け投手になった松岡は「槌田はともかく、上田は何でもっとじっくり投げんかったのかな」と悔やむばかり。

 結局、18年の現役生活で、ノーヒットノーランは一度も達成できずに終わった。


前田健太が喫した“悪夢”


 9回一死までノーヒットノーランを続けながら、「あと二人」で夢を断たれたのが、広島時代の前田健太(現・ツインズ)だ。


 2011年10月25日のヤクルト戦。前田は8回まで2四球のみの無安打無失点に抑える。

 1-0とリードした9回も、先頭のジョシュ・ホワイトセルを三振に打ち取り、まず一死。ところが、次打者・藤本敦士に初安打となる左越え二塁打を許してから、リズムが狂い、内野安打と四球がからんで満塁のピンチを招く。

 ここが踏ん張りどころとばかりに、前田は続く畠山和洋を二ゴロに打ち取ったが、併殺崩れで同点。気落ちしたところを福地寿樹に左前安打され、悪夢の逆転サヨナラ負けを喫した。


 前田はその前回の登板、10月20日の中日戦でも、7回まで15三振を奪う快投。リーグトップの16三振まであと1、日本記録の「19」も狙える可能性があったにもかかわらず、7回の打席でその記録を知らなかった野村謙二郎監督に代打を送られる手違いがあったばかりだった。

 そして、今度は5日後に「ノーノー未遂」と、ダブルで不運を味わう羽目になったが、雪辱を誓った前田は、翌年4月6日のDeNA戦で、史上74人目のノーヒットノーランを達成している。


板東英二は“ノーヒットワンラン”で敗戦


 最後に変わりダネも。

 9回二死まで“ノーヒットワンラン”に抑えながら、負け投手になった中日の板東英二だ。


 1962年4月8日の広島戦。板東は変化球をコーナーに散らし、4回二死までパーフェクト。

 だが、森永勝治に四球を与えて初めて走者を許すと、二盗を決められたあと、力んで2球続けて暴投を犯し、1点を失ってしまう。

 その後、9回二死から同じ森永に初安打を許し、被安打1・失点1の0-1で負け投手になった。

 当時の新聞は「こんなばかげたことはない」と報じている。


文=久保田龍雄(くぼた・たつお)

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