「甲斐キャノン」をかいくぐり五十幡がチャンス拡大
5月16日、ロッテの佐々木朗希がついにプロ初登板初先発を果たした。この日は、佐々木の他にも奥川恭伸(ヤクルト)、早川隆久(楽天)ら、鳴り物入りでプロ入りした投手たちがそろって登板し、大きな注目を集めた1日となった。
ただ、佐々木らとは別のかたちでファンを盛り上げた選手たちもいる。そのひとりが日本ハムのドラフト2位ルーキー・五十幡亮汰。五十幡は中学3年時の全日本中学校陸上競技選手権大会における100m走と200m走で、日本を代表する短距離走者のサニブラウン・アブデル・ハキームを抑えて優勝したことで「サニブラウンに勝った男」と呼ばれ、ドラフトでも注目を集めた。
五十幡の最大の武器というと、当然ながらその足だ。5月16日の対ソフトバンク戦でもその足が光った。2-2の同点で迎えた土壇場の9回、先頭の渡邉諒が中前打で出塁すると、代走として五十幡が登場。「甲斐キャノン」の名で知られる捕手・甲斐拓也の強肩をかいくぐり見事に二盗を決め、一打サヨナラの場面をつくった。
後続の打者が打ち取られ試合はそのまま引き分けに終わったが、五十幡が本拠地・札幌ドームのファンを大いに盛り上げたことは事実だ。パ・リーグでは西武の若林楽人が16盗塁で盗塁数のトップに立ち注目を集めているが、五十幡も今後、飛躍的に数字を伸ばしていく可能性を十分に秘めている。そう感じさせる盗塁だった。
▼ 2021年シーズン成績:五十幡亮汰
7試合 打率.211(19打数4安打)0本塁打 1打点 3盗塁 1得点
超ビッグプレーで失点を阻止した並木
そして、セ・リーグではヤクルトのドラフト5位ルーキー・並木秀尊も足で魅せた。獨協大学3年時に参加した大学日本代表候補合宿の50m走において、五十幡の5秒42を上回る5秒32を記録したことから、「『サニブラウンに勝った男』に勝った男」と呼ばれている並木。
ほとんどの出場が代走や守備固めとなっている並木は、これまでに与えられた打席はわずかに「4」。しかし、すでに26試合に出場していることからも、その足や、足を生かした守備力に対する首脳陣からの期待の大きさがうかがえる。
同日の対中日戦では、守備で並木の足が輝きを放った。7回の守備から左翼で途中出場し、迎えた8回1死一塁の場面。1点をリードし、左中間・右中間を抜かれることを警戒していたヤクルト外野陣。並木はやや左中間寄りに守っていた。
しかし、打席の木下拓哉が放った打球は左翼ポール方向へと伸びていく。ポジショニングが裏目に出るかと思われたが、並木は快足を飛ばし、グラウンドすれすれで見事ダイビングキャッチ。打球が抜けていればピンチが広がる、あるいは同点とされる場面で見せた超ビッグプレーだった。
▼ 2021年シーズン成績:並木秀尊
26試合 打率.000(3打数0安打)0本塁打 0打点 4盗塁 3得点
佐々木や奥川、早川らに比べれば、五十幡と並木の存在にはビッグインパクトがないかもしれない。しかし、走塁にしろ守備にしろ、快足を生かしたエキサイティングなプレーもまた違った形でファンを魅了する。今後も、「セ・パの新スピードスター」に要注目だ。
※数字は5月16日終了時点
文=清家茂樹(せいけ・しげき)