コロナ禍でもポジティブに
昨年はどこのリーグにも属さず、3年を目処にNPB参入を目標に誕生した琉球ブルーオーシャンズ。沖縄の地から意気揚々と出航するはずが、未曾有のコロナ禍により、錨をなかなか上げられぬ状況に陥った。
入団からわずか3年でDeNAから戦力外通告を受けた大河は昨年、「1年じっくりと沖縄でやって、NPBに復帰してみせる」と強い覚悟を持ってブルーオーシャンズに入団したが、コロナの影響で4月上旬から6月上旬、8月にも活動休止の憂目にあった。
大河いわく「結果を出してアピールするどころか、グラウンドも探して使わせてもらうような状況」だったという。その中でも「3人までなら集まれたので、キャッチボールやティーバッティングなど、できることをとにかく数こなしました」と、前向きに行動した。
しかし、NPBの日程もずれ込む異例のシーズンは、「どのチームが誰をとって、誰を残すのかなども、全くわからない」状況下でもあり、「トライアウトを受けるのは来年にしよう」と決断。 「おかげで慌てずにしっかりと野球に取り組めました」と、先行き不透明な状況をポジティブに捉えられた。
手応えと指揮官からの評価
チーム活動が再開されてからは、「亀澤(恭平)さんや李(杜軒)さんに色々聞きながら」と、元NPBの経験豊富なチームメイトの力を借り、真摯に野球に取り組んだ結果、「昨年よりも、バッティングでも守備でも良くなっていると思います」と手応えを得た。
実際、初の県外遠征となった九州での試合では、途中絶不調に陥ったものの、トータルでは3割の打率をキープ。実戦の中で「足の上げ方を修正して、タイミングを早める」などの調整法も会得し、5月に入ってから行われたNPB球団との対戦では、猛打賞にマルチと好調で、ショートの守備も安定。レベルアップした姿を披露し続けている。
琉球の清水直行監督も「本当に頑張っています。昨年の秋頃から顔つきが変わって、今年は代わりのいないショートのポジションで、クリーンアップとして出続けています。打つ、走る、守るの他に声出しなども行い、チームの中の存在感も増しています」と評価している。
さらに、「怪我と野球や私生活のポカに気をつけて」と、ヤンチャな面もしっかりと把握した上で、「もう一つ二つ大人になっていくことで、チームのことをもっと考えられる選手になってもらいたい。今後の彼の活躍は本当に楽しみです」と目を細めた。
知野直人の存在
そして、ベイスターズでは同い年で同じポジション、今年の自主トレでも「毎日一緒に練習して、飯食って」と、有意義な時間を過ごした知野直人の活躍も、大河の心に火をつけている。
知野は4月24日にプロ入り初の一軍昇格を果たし、現在も奮闘中だ。大河も「自分が広島(二軍との練習試合)で3本打った後、『いま一軍におんの?』とか、『頑張れよ!』なんて電話した2日後にホームランを打って」と、5月26日に初ヒットを初ホームランで記録した盟友の活躍に驚きつつも、喜んでいた。
知野は以前、Twitterの画像に大河とプレーしていた写真を使用し、「23の為にも」と記していた。そのことについて、大河は「嬉しいですよね」と相好を崩したが、自分が1回も上がれなかった舞台での活躍に「刺激になります」と、言葉に力を込めた。
見据える先は
昨年は1度しかなかったNPB球団との対戦も、今年はすでに数試合を消化し、これから先もスケジューリングされる予定だ。プレーをスカウトの前で披露する機会も当然ながら増していく。「頑張るしかないですから。結果でアピールするしかないですし、見てもらってぜひ獲ってもらいたいです。どこでもいいんで戻りたいです」と、大きな目をギラつかせる。
熊本・秀岳館高校では1年からショートのレギュラー、3年生では春夏と甲子園で連続ベスト4の立役者となった。さらには侍ジャパンU-18にも選出され大会首位打者となり、2016年ドラフトで3位指名を受けベイスターズに入団した元プロスペクトだが、現在は試合前に若いチームメイトや先輩たちにイジられながらも和気あいあいと弁当を貪り、笑顔が絶えないチームの中心にいる。
年齢としては23歳で、大卒1年目と同年齢。春には長年交際していた一般女性と籍を入れ、私生活の足元も固めた。元々の高いポテンシャルに合わせ、ハングリー精神も武器にした大河。再びあの輝く場所へ、必ずREVIVEしてみせる。
取材・文・写真=萩原孝弘(はぎわら・たかひろ)