勝ちパターンに異常あり…
快調に白星を重ねてきたタイガースが、今季初めて迎える「踏ん張り所」だ。
6月4日、チームは岩崎優の出場選手登録を抹消。開幕からセットアッパーとして8回を任された左腕は、交流戦に入り5試合中3試合で失点するなど、精彩を欠いた。
今季は27試合に登板して19ホールドポイントを記録するなど、勝ちパターンの一員としてフル回転。
本調子でないとは言え、実績も経験も兼ね備えた男の離脱がチームに及ぼす影響は小さくない。
さらに、5日のソフトバンク戦では、7回に登板した小林慶祐が打球処理の際に左足首を痛めて負傷交代。オリックスから移籍2年目、ここまで18試合に登板するなどブレイクの予感を漂わせていた右腕も、ブルペンから姿を消すことになった。
キーポイントは明らかで「誰がスアレスにつなぐか」だろう。
9回に待ち構えるロベルト・スアレスは、開幕から2カ月以上経った時点で救援失敗ゼロ。5月終了時点で16度あったセーブ機会ですべて成功という質の高い投球を見せているだけに、実質8回を終えた時点でリードを保っていれば勝利は間違いない状況だった。
そして、その助っ人右腕へのバトンリレーを担っていたのが岩崎であり、小林でもあった。
リリーフで逆襲を期す開幕投手
空いてしまった穴をどう埋めるのか…。チームの危機と時を同じくして、キーマンとなる男が昇格してきた。
5日のソフトバンク戦の9回、5点リードのマウンドに向かったのは背番号19。藤浪晋太郎は、岩崎との入れ替わりでコールアップされたことでも分かるように、中継ぎへ配置転換された。
開幕投手を務めながら、不振で4月下旬に降格。先発として再昇格を狙っていたが、「チーム事情がチーム事情なんで任されたところで仕事をする」と、腹を括って合流した。
8日の日本ハム戦では、同点の7回に登板。首脳陣は今後、藤浪を勝ちパターンで投入する考えであることがうかがえた。
先発とは違う重圧、緊張感、力の配分…。そう簡単に務められるポジションでないことは、昨年から本人が一番自覚しているはず。それでも、経験不足を補って余りある「爆発力」を秘めていることを誰もが知っている。
昨年は自己最速の162キロを計測。初めてリミッターを外した姿に、甲子園のスタンドは夢やロマンを重ねた。
今後向かうホールドシチュエーションでどんなパフォーマンスを見せるのか。良い方向に振り切れば、チームは再加速する。
高卒2年目の有望株が登場
そして、もう一人。高卒2年目の及川雅貴の名も挙げたい。
西純矢、佐々木朗希、奥川恭伸と「高校BIG4」を形成した有望株。先発として1年目からファームで育成されてきた左腕は、5月19日にプロ初昇格を果たし、30日の西武戦では中継ぎで早くもプロ初勝利を挙げた。
藤浪と違い、すぐに僅差リードの展開で起用されることは考えにくいものの、躍動感あるフォームから繰り出される150キロに迫る直球にスライダーと、ポテンシャルは一級品。
慣れないリリーフでの登板はもちろん、ブルペンで先輩たちと戦況を見守る時間は得がたい経験となって、根を張り、花を咲かす“肥料”となるはずだ。
藤浪と及川の新旧プロスペクトが挑むブルペンでの戦い──。
2人の姿には「今」と「未来」の希望が見て取れる。
文=チャリコ遠藤(スポーツニッポン・タイガース担当)