タイトルレースに“第3の二世”…?
エンゼルス・大谷翔平の本塁打量産により、今季のメジャーリーグの本塁打王争いは例年以上に注目を集めている。
日本時間27日現在、24本塁打の大谷はア・リーグの2位。2本差の26本塁打でトップを走るのが、ブルージェイズのウラジーミル・ゲレロJr.である。
一方、ナ・リーグのトップは25本塁打を放っているパドレスのフェルナンド・タティスJr.。2人の名前からも分かる通り、ゲレロとタティスはともに父親が元メジャーリーガーという、いわゆる“二世選手”だ。
ともに1999年生まれの22歳。マイナー時代からその将来を嘱望される存在だった。ゲレロは打点でも両リーグトップの数字を叩き出しており、父が達成できなかった主要打撃タイトルの獲得を目指している。
そんな“二世選手”の躍動が目立つメジャーの中で、あまり話題にはあがらないものの、実は「第3の男」がタイトル争いに顔を出している。打率.349で両リーグトップの成績を残す、アストロズのマイケル・ブラントリーだ。
父は元巨人の助っ人!
今季がメジャー13年目、5月に34歳を迎えたベテランの外野手。
通算本塁打は118本とパワー部門ではゲレロやタティスに見劣るものの、シュアな打撃でメジャー通算1507安打。通算打率も.299という好成績を残している。
ただし、決して長打が少ないというわけではなく、2015年には両リーグ最多となる45本の二塁打を放っている。「広角に打ち分ける中距離打者」というイメージだ。
その父、ミッキー・ブラントリーは1986年から4シーズンにわたってマリナーズで外野手を務めた。
1987年には92試合に出場し、打率3割を達成。翌年にはレギュラーを確保して、規定打席もクリアしている。
メジャー通算で32本塁打を放ったが、1990年以降はマイナー暮らしが続いた。
そんな父・ミッキーにとって現役最後のシーズンになったのが1993年、32歳のときだった。
開幕からジャイアンツ傘下の3Aで打率.364と打ちまくったものの、メジャーからは声がかからず、目を付けたのが“日本のジャイアンツ”だった。
その2年前に、巨人の入団テストを受けるも不合格になっていたミッキー。6月下旬に契約を結ぶと、7月中旬に代打で一軍デビューを果たす。
翌日には来日初安打を放ったが、変化球を多投する日本野球に適応できず。結局13試合の出場で、44打数8安打(打率.182)。長打は二塁打と三塁打が1本ずつという結果に終わり、オフに解雇された。
その年を最後に現役から退いたブラントリーは、マイナーでコーチとしてのキャリアをスタート。1999年にはメッツで、2005~2007年にはブルージェイズでコーチを務めた。
父子鷹として注目を浴びるゲレロとタティスの陰に隠れ、その活躍は決して目立ちはしない。しかし、メジャーリーガーとして酸いも甘いも知っているブラントリー。もしかすると、3人の中で最も打撃タイトルに近い存在なのかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)