軟式球で150キロ…怪物中学生として話題に
今年も高校野球の地方大会が各地でスタート。聖地・甲子園を目指す戦いがはじまった。
3年生にとっては泣いても笑っても“最後の夏”…。この世代で最も早く、全国的な注目を浴びた選手と言えば、高知の森木大智だろう。
高知中の3年夏には、球速が出づらいと言われている軟式球で150キロをマーク。全国大会でチームを優勝に導き、“怪物中学生”として全国ネットのニュース番組でも特集が組まれるほどだった。
高校進学後は小さな故障が重なり、昨年はコロナ禍で公式戦が少なかったこともあって、ここまではあまり目立つ結果を残せていないが、この春の四国大会・決勝ではリリーフで最速154キロをマーク。改めてその能力の高さを見せている。
そんな森木を擁する高知高が7月3日、大阪桐蔭と練習試合を行うとの一報を聞いて、大阪府大東市にある龍間運動広場の野球場へ足を運んだ。
▼ 森木大智(高知)
・投手
・184センチ/88キロ
・右投右打
<主な球種と球速帯>
ストレート:144~154キロ
カーブ:116~120キロ
スライダー:126~133キロ
フォーク:138~140キロ
チェンジアップ:127~130キロ
体つきが大きく成長
筆者が初めて現場で森木のピッチングを見たのは、2年前の5月に行われた春季四国大会の高松商戦だ。
リリーフで2回を投げて被安打3の1失点。最速は早くも145キロをマークしている。硬式球での公式戦が初めてだったということもあってか、少し指にかからないボールも目立ったが、ただならぬ素質を持っていることは十分に感じられた。
その時から約2年が経ったが、まず目立ったのがその体つきの充実ぶりだ。
特に太もも回りの筋肉が当時と比べて明らかに大きくなっており、キャッチボールやブルペンでのピッチングから、下半身をしっかり使ってバランス良く投げられていた。
試合が始まって感心したのが、スピードよりもむしろ変化球とコントロールである。
高校生の本格派投手の場合、立ち上がりは制球に苦しむことが多い。しかし、森木はそのような様子は全く見られず、ストレートも変化球も狙ったところに投げ切ることができていたのだ。
特に110キロ台後半のカーブと130キロ前後のスライダーはしっかりと指にかかり、抜けたり引っかかったりするようなボールはほとんど見られなかった。
バランスの安定したフォームでしっかり腕が振れるというのはもちろんだが、指先の感覚もかなり素晴らしいものがある。
ストレートはコンスタントに145キロを超え、筆者のスピードガンでは最速で150キロをマークした。視察に訪れていたプロ球団のスカウトのガンでは、152キロという数字もあったという。
テイクバックできれいに肘が立ち、縦に腕が振れるためボールの角度も申し分ない。特に、右打者のアウトローいっぱいに決まるボールは“糸を引くような”という表現がピッタリ当てはまるボールだった。
12球団のスカウトが集結
その一方で、このストレートが少し甘くなると、きっちりと相手バッターにとらえられていたというのも事実。大阪桐蔭の打者のレベルが高いということはもちろんあるが、森木の方にも当然課題はある。
一つは外角のボールが大半で、内角に速いボールがほとんど来なかったという点だ。
夏の地方大会直前という時期を考え、少し厳しいコースを攻めるのをためらった部分はあったかもしれないが、もう少し内を意識して攻めないと打者に怖さを与えることはできないだろう。
もうひとつがフォームの粘りだ。
左足を高く上げ、スムーズに体重移動することはできているが、ステップしてからリリースするまでの時間が早く、打者にとってはタイミングをとりやすいフォームのように見えた。
もう少しステップする時に“間”を作って、ゆったりとした動きと速い動きのメリハリができるようになれば、ボールのスピードがさらに生きるはずだ。
結局、この日は7回まで投げて被安打9の3失点で負け投手となった。だが、毎回の11奪三振をマークしており、その実力は十分に見せつけていた。
また、大阪桐蔭の3番を打つ、プロ注目の強打者である池田陵真に対しては、明らかにギアを上げていることが分かり、4打席連続で三振を奪っている。長打力だけでなく確実性も高い池田に対し、これだけの結果を残せる高校生投手はなかなかいないだろう。
スタンドには12球団・49人のスカウトが集結。オリックスの福良淳一GMやヤクルトの小川淳司GMなど、編成トップの姿もあった。森木はその前でもしっかりと実力を発揮し、改めてドラフト1位候補であることを示したことは間違いない。
明徳義塾という高い壁に阻まれ、ここまで一度も甲子園の土を踏めずにいるが、最後の夏にその壁を破ることができるのか。今月17日に開幕する高知大会での森木のピッチングにぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所