「01年世代」がアツい!
先日発表された、「松坂大輔引退」の一報。
これによって、“松坂世代”の現役選手が和田毅(ソフトバンク)ただ一人となることも大きな話題となった。
この「松坂世代」に代表されるように、同学年から複数のスターが輩出された“黄金世代”がいつの間にか一大勢力となり、プロ野球界を席巻するというのは過去に何度もあった。
そんな中、松坂が引退を発表した2021年夏、プロ野球界で勢力を拡大しようと頭角を現してきた世代がある。
今年「高校卒2年目」にあたる2001/2002年生まれの選手たちだ。
ドラフト時に大きな注目を集めた佐々木朗希(ロッテ)と奥川恭伸(ヤクルト)が今年揃ってプロ初勝利をマーク。
さらに、同じドラフト1位でもいわゆる“ハズレのハズレ1位”だった宮城大弥(オリックス)は、ひと足先にプロ1年目でデビューと初勝利を飾ると、今季はローテーションの一角として9勝1敗と大活躍。9勝はチームのエース・山本由伸と並ぶリーグトップタイ、防御率2.10も山本に次ぐ2位と、今やリーグを代表する左腕へと成長を遂げている。
この他にも、セ・リーグでは玉村昇悟(広島)がドラフト6位から一軍ローテに定着しつつあり、西純矢と及川雅貴(ともに阪神)や横山陸人(ロッテ)、野手でも紅林弘太郎(オリックス)や黒川史陽(楽天)といったところが一軍で存在感を発揮している。
今後が楽しみな“高卒2年目世代”であるが、この世代の活躍が目立っているのはプロ野球界だけではない。実は、アマチュア球界でもこの世代がアピールを見せているのだ。
今回は来年、再来年のドラフト会議で注目を集める可能性の高い、“高校卒2年目”のアマチュア選手を紹介したい。
東洋大・細野晴希の投球にスカウト陣が熱視線
大学2年生の投手では、細野晴希(東洋大)が早くも再来年の目玉としての呼び声が高い。
上級生にも下級生にも力のある投手が多いチームの中で、この春からエース格として活躍。4月21日の中央大戦では、3安打・14奪三振の完封劇でリーグ戦初勝利を飾った。
コンスタントに145キロを超えるストレートと、変化にバリエーションがあるスライダーは、いずれも大学球界トップクラスの迫力。その活躍を見たスカウト陣からは、「今秋のドラフトでプロ入りした方が良いのでは…」という声も上がったほどだ。
チームは投打が嚙み合わずに二部降格となってしまったものの、東都の二部は全国でも上位のレベルを誇るだけに、今後も高い注目を集めることは間違いない。
細野と同じ東都では、主にリリーフで150キロ近いスピードを誇る西舘勇陽(中央大)と、常広羽也斗(青山学院大)がスケールの大きさで目立つ。
また、常広と同じ青山学院大には、エース格の松井大輔や、1年秋から経験を積む下村海翔などといった楽しみな選手もいる。
さらに東京六大学を見ると、智弁和歌山高時代に夏の甲子園で奥川と投手戦を演じた池田陽佑(立教大)が主戦へと成長している。現在は技巧的な面が目立つが、3年夏に甲子園で見せた球威が戻ってくれば一気に注目を集めそうだ。
ほかにも、サウスポーで面白いのが尾崎完太(法政大)。まだ細身だが、長い手足をフルに使うフォームは迫力十分で、コンスタントに140キロ台中盤をマークする。現在はリリーフだが、来年以降は先発での活躍も期待できる。
地方にも注目投手が目白押し
関西では、藤本竜輝(立命館大)と上田大河(大阪商業大)が双璧と言える存在だ。
ともに高校時代から評判の右腕で、プロ志望なら指名される可能性も高かったが、大学でも順調に成長を続けている。ストレートは既に150キロを超えた。
この春には上田が一足先に大学選手権で“全国デビュー”を果たし、最速151キロをマークして東京ドームの観衆を沸かせた。
藤本はスライダー、上田はフォークと必殺の武器となる変化球を備えているのも魅力で、このまま順調にいけば上位指名の可能性は高いだろう。
地方リーグでは、松本凌人(名城大)が頭一つ抜けた存在となっている。
1年秋から先発に定着すると、この春はMVPとベストナインを獲得。大学選手権では沖縄大戦で3安打完封勝利を飾っている。
躍動感抜群のサイドスローから投げ込む最速150キロのストレートは威力十分で、指先の感覚の良さも目立つ。今後も愛知大学リーグを牽引する存在となりそうだ。
このほかにも、石沢大和(東農大北海道オホーツク)や板垣瑠翼(富士大)、高橋凱(八戸学院大)、古谷龍之介(東北学院大)、後藤凌寿(東北福祉大)、木村仁と坂元創(ともに九州共立大)なども今後が楽しみな投手たちだ。
大学生野手の注目候補は…?
続いて野手を見ていこう。
進藤勇也(上武大)と友田佑卓(日本大)は、不動の正捕手として素晴らしい活躍を見せている。
進藤は大学選手権に出場したすべての捕手の中でも攻守に抜群の存在感を示しており、既に捕手としての総合力は大学球界でも1、2を争うレベルにある。再来年の野手の目玉になる可能性も十分だ。
また、友田には進藤を上回るスローイングの速さがある。下位を打つことが多いが、打撃でもパンチ力と脚力は目立っており、チームも秋から一部へ昇格。その中でどんなプレーを見せてくれるのか、今から楽しみだ。
強打者タイプでは、東京六大学の広瀬隆太(慶応大)と上田希由翔(明治大)が双璧。
昨年秋に一塁手のレギュラーに掴んだ2人。リーグ戦ではハイレベルなベストナイン争いを演じ、最終的には広瀬に軍配があがった。
広瀬は右打ち、上田は左打ちで、堂々とした体格を生かしたバッティングは迫力十分。この春は広瀬がセカンド、上田が外野に回り、守備面のレベルアップも図っている。
その他の野手では、ショートの守備とスピードが目立つ熊田任洋(早稲田大)と松浦佑星(日本体育大)、パンチ力とスピードを兼ね備えた外野手の天井一輝(亜細亜大)なども、早くからチームの中心として活躍している。
社会人野球にも注目株
社会人に進んだ選手は多くないが、投手で忘れてはならないのが、近江高時代に甲子園を沸かせた林優樹(西濃運輸)だ。
昨年は体作りに専念していたが、その甲斐もあって今年は140キロ台中盤をマークするまでにスピードアップ。もともと変化球とコントロールは抜群であり、ストレートに勢いが出てきたことで一気に凄みが出てきた。チームは日本選手権の出場を逃したが、都市対抗予選でも活躍に期待がかかる。
右の本格派では、広沢優(JFE東日本)と河野佳(大阪ガス)が面白い。
広沢は1年目から実戦の経験を積み、長身から投げ下ろすストレートは150キロを超える。今年はここまで目立った成績を残していないが、スケールの大きさは抜群だ。
一方、河野は今年に入って徐々に実戦のマウンドを経験。上背はないが、躍動感溢れるフォームでストレートの勢いは申し分ない。ともに来年は主戦の座を狙いたいところだ。
ほかにも、大畑蓮(西部ガス)と川島隆志(JR九州)といったところは引き続き注目したい。
野手は投手以上に候補が少なくなるが、強打が魅力の捕手・北野樹(JR東日本)や、高い打撃技術で1年目から中軸を任された住谷湧也(西濃運輸)などが有力候補となるだろう。
過去の“黄金世代”を振り返ってみても、高校時代から活躍していた選手ばかりではなく、実は大学や社会人で飛躍した例も少なくない。
ひと足先にプロの世界で奮闘している同世代に追いつけ、追い越せ…。来年、再来年のドラフトで高い評価を受けて、プロの世界に飛び込む選手たちがたくさん出ることに期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所