激戦区・愛知にプロ注目の選手
高校野球界で1、2を争う激戦区として知られる愛知。
特に今年は春のセンバツでその名を全国に轟かせた畔柳亨丞を擁する中京大中京を筆頭に、竹山日向・肥田優心・菊田翔友の3本柱がいる享栄、ほかにも愛工大名電の寺嶋大希や、東邦の知崎滉平などなど…。強豪校に好投手が揃うハイレベルな年となっている。
一方、そんな愛知のなかで野手として最も注目を集めている存在というのが、愛工大名電の田村俊介だ。
練習試合であの奥川恭伸(星稜→ヤクルト)に投げ勝つなど、もとは投手として大きな注目を浴びた男。
2019年の夏には1年生ながら名門の背番号1を任されたが、学年が進むにつれて徐々に野手としての才能を開花させていった。
▼ 田村俊介(愛工大名電)
・外野手兼一塁手兼投手
・178センチ/88キロ
・左投左打
<2021年・春季東海大会成績>
2試 率.375(8-3) 本0 点1
打席10 二塁打0 三塁打1 四球2
出塁率.500 長打率.625 OPS1.125
<各塁へのベスト到達タイム>
一塁到達:4.25秒
二塁到達:8.29秒
左投げなのに三塁を守る?
今年の春先のこと、東海地区担当のスカウトから驚くべき話を耳にした。
スーパー1年生として大きな注目を浴びた田村が、左投げにも関わらず、野手としての幅を広げるために練習試合では三塁で出場をしているというのだ。
高校野球では、部員の少ないチームでは左投げの選手が捕手や一塁以外の内野を守るケースが稀にある。
しかし、愛工大名電といえば言わずと知れた県内屈指の強豪校だ。となると、指導者が「野手・田村」に非凡な才能があると認めている証左に他ならない。
迎えた5月。春の県大会を制した愛工大名電が東海大会に登場。
筆者は田村がどんな進化を遂げているのかを確認すべく、ダイムスタジアム伊勢で行われた岐阜第一戦(一回戦)と、掛川西戦(準決勝)に足を運んだ。
随所に見えた進化の跡
結論から言うと、昨年夏と比べても明らかにスケールアップしている様子が見て取れた。
まず、大きく変わったのがタイミングのとり方。下級生の頃は、打球を遠くへ飛ばしたいという気持ちが強く出過ぎて、反動をつける動きの大きさがどうしても気になった。
それが今では、極めて小さい動きで力強いトップの形を作ることができている。余計な動きがなくなったため、誘うような変化球に対しても余裕を持って見送ることができるようになった。
加えて、体つきが一回り大きくなったことで、ヘッドスピードが上昇。フルスイングはさらに凄みを増している。
岐阜第一との試合でも、第2打席で追い込まれながらも粘りを見せてセンター前に運ぶと、延長12回にはライトオーバーの適時三塁打で決勝点を叩き出す活躍。
翌日の掛川西戦では、プロ注目のサウスポー・沢山優介との対戦できっちりライト前ヒットを放ち、左投手への対応力も見せた。
また、成長を感じさせたのは打撃だけではない。
これまで、脚力は「外野手としてはそれほどでもない」と指摘されていたが、東海大会で放ったシングルヒット2本の一塁到達タイムはいずれも4.2秒台。
ヒットにしては上々のタイムをマークしており、走塁に対する意識も高くなっているのが伺い知れた。
打撃技術は岐阜第一・阪口樂より上
同じ東海地区の“左の強打者”というと、阪口樂(岐阜第一)の名前が真っ先に挙がる。
しかしながら、現時点での打撃技術に関しては、田村が阪口を上回っているように見えた。
夏の愛知大会は、中京大中京・東邦・愛工大名電・享栄の“私学4強”と言われる強豪校がいずれもシード校となっている。
田村が各校の好投手と対戦するのは準々決勝以降になるが、プロのスカウト陣から高い注目を集めることは間違いないだろう。
☆記事提供:プロアマ野球研究所