ルーキーの活躍もあり首位を走った阪神
開幕前こそリーグ3連覇を狙う巨人がセ・リーグ優勝の筆頭に挙げられていたが、思うような快進撃を演じることはできなかった。
新外国人選手のテームズは故障で早々と戦線を離脱。長距離砲として期待の高かったスモークも家族が来日できないことを理由に6月半ばで緊急退団。坂本勇人も右手親指を骨折するなどベストメンバーを組めなかったことが大きかった。また、絶対的エースである菅野智之の調子が上がらないことも響いた格好だ。
巨人がもたつくなか、最大のライバルである阪神が奮起。今季はルーキーの当たり年で、佐藤輝明が新人記録を更新する勢いで本塁打を連発すると、中野拓夢が長らく固定できずにいたショートのレギュラーを摑む。さらに、左腕・伊藤将司もローテーションに入りここまで5勝。そんなルーキーたちの活躍もあり、48勝33敗3分の首位で前半戦を折り返した。
阪神が首位で前半戦を折り返したのは2008年以来13年ぶり、9回目になる。過去8回のうち優勝は3度あるが、もちろんまだまだ油断はできない。
メークレジェンドでまさかの優勝を逃す結果に
ここで調べたのは、2リーグ制になった1950年以降、1位・阪神、2位・巨人という結果で前半戦を折り返したシーズンの前半戦終了時点での勝敗と、最終的な勝敗、並びに順位になる。振り返ると、昨季までに同様の並びは3例あった。
▼ 1972年
・前半戦終了時点の成績:
1位:阪神 38勝29敗1分
2位:巨人 40勝31敗2分(1ゲーム差)
・シーズン終了時の順位:
1位:巨人 74勝52敗4分
2位:阪神 71勝56敗3分(3.5ゲーム差)
▼ 1976年
・前半戦終了時点の成績
1位:阪神 38勝20敗8分
2位:巨人 44勝24敗3分(1ゲーム差)
・シーズン終了時の順位
1位:巨人 76勝45敗9分
2位:阪神 72勝45敗13分(2ゲーム差)
▼ 2008年
・前半戦終了時点の成績
1位:阪神 60勝32敗1分
2位:巨人 51勝42敗2分(9.5ゲーム差)
・シーズン終了時の順位
1位:巨人 84勝57敗3分
2位:阪神 82勝59敗3分(2ゲーム差)
なんと、3シーズンとも巨人が逆転して優勝を飾るという結果に。ゲーム差が1ゲームしか離れていない接戦だった1972年と1976年はまだ仕方ないが、衝撃的だったのは2008年である。
この年からFAで加入した新井貴浩が金本知憲とともに強力なクリーンアップを形成し、下柳剛を中心とした投手陣も安定、開幕5連勝で勢いに乗ると、月間負け越しが一度もないまま前半戦だけで60勝をマーク。なかなかエンジンがかからない巨人を尻目に首位を走り、最大で13ゲーム差、前半戦終了時点で9.5ゲーム差をつけてまさに独走かと思われた。
しかし、この年に開催された北京オリンピックで阪神は新井をはじめ4選手を派遣。その期間中(8月6日~22日)に5勝8敗と負け越して雲行きが怪しくなると、オリンピック終了後には、新井に故障が見つかり戦線を離脱する事態となる。
すると差が縮まり見えてきた虎の尻尾を、巨人は見逃さなかった。上原浩治、阿部慎之助を派遣したオリンピック期間を5勝4敗となんとか持ちこたえ、ふたりが復帰した8月24日以降は27勝15敗1分、なかでも9月に記録した12連勝は巨人の底力をまざまざと見せつけるものだった。また、8月29日以降の阪神との直接対決で7勝1敗と大きく勝ち越したことも巨人の逆転劇を生んだ要因と見ていいだろう。
10月10日の対ヤクルト戦で巨人が勝利し、阪神が横浜に敗れたことで巨人の優勝が決定。のちに、「メイク・レジェンド」と呼ばれる大逆転優勝が実現した。
今季はその年と同様にオリンピックイヤーである。歴史は繰り返すのか、それとも阪神が意地を見せるのか――。
カギを握りそうなのは、やはり直接対決。前半戦は巨人の8勝7敗とほぼ五分の成績で、後半戦の1stラウンドは9月3〜5日。その時までにどのような状況になっているかも気になるところだが、後半戦は“伝統の一戦”からより目が離せなくなりそうだ。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)