聖地でも快投なるか
8月9日、ついに開幕した2年ぶりの夏の甲子園。
『第103回全国高等学校野球選手権大会』は度重なる天候不良により、なんと通算7度の順延を経て大会8日目を迎える。
全国制覇を目指す熱闘はもちろんのこと、秋のドラフト会議に向けてという意味でも楽しみな夏の大舞台。
今年も風間球打(ノースアジア大明桜)を筆頭に、プロ注目の選手が数多く甲子園にやって来ている。
今回は、大会8日目の第1試合で弘前学院聖愛(青森)と対戦する石見智翠館(島根)から、島根大会で圧巻のピッチングを見せたエース右腕を取り上げる。
▼ 山崎琢磨(石見智翠館)
・投手
・185センチ/90キロ
・右投右打
<主な球種と球速帯>
ストレート:137~143キロ
カーブ:110~116キロ
スライダー:120~122キロ
カットボール:126~128キロ
フォーク:123~126キロ
中国地方を代表する注目投手
中国地方でプロから高い評価を得ている投手と言えば、春のセンバツやこの夏の甲子園でも好投した花田侑樹(広島新庄)の名前が真っ先に挙がるが、その花田と並んでスカウト陣の間からよく名前が出てくるのが、山崎琢磨(石見智翠館)だ。
昨年秋はエースとして島根県大会優勝。続く中国大会は初戦で岡山学芸館に敗れてセンバツ出場を逃したものの、恵まれた体格と力のあるストレートが話題となり、高い注目を集める存在となった。
その後、右肩を故障して春は公式戦の登板はなかったが、鳥取で行われた春の中国大会の時には、スカウト陣をはじめ関係者の間で山崎の復調具合が大きな話題となっていた。
そんな“山陰の大型右腕”の実力を確かめるべく、7月27日に行われた島根大会・準決勝の浜田戦に足を運んだ。
威圧感を放つ体躯
この日、「5番・投手」で先発出場した山崎。まず目を引いたのは、その堂々とした体つきだ。
マウンドに上がると、プロフィールの185センチ・90キロという数字以上に、上背も体重もあるように見えた。打者に与える威圧感もかなりのものがある。骨格や筋肉量はもちろんだが、プレー中の姿勢の良さがあるというのが大きいだろう。
フォームで特徴的なのは、体の沈み込む動きが小さいという点。わずかに軸足の右膝が折れる動きはあるものの、重心をそれほど下げることなく、倒れ込むようにしてステップをして、スムーズに腕を振ることができる。
どちらかというと外国人選手に多い体の使い方に見え、体格も日本人離れしたものがあるだけに、山崎にとってはマッチしているように見えた。
少し気になったのは、フィニッシュの時に体が一塁側に流れる点か。もう少し左足の着地が安定してくれば、体格の良さがさらに生きてくるだろう。
球速はまだまだ伸びる?
この日の最速は142キロ。驚くようなスピードではないが、しっかりと体重が左足に乗ってボールに力が伝わっていることから、数字以上に打者の手元で勢いが感じられた。春先に肩を痛めており、故障明けということを考えると、まだまだ速くなる可能性は高い。
また、変化球で素晴らしかったのが、120キロ台後半のカットボール。ストレートと腕の振りが変わらず、同じ軌道で打者の手元で鋭く変化するため、打者は見極めることが難しい。
カーブやスライダー、フォークは少しコントロールがばらついていたとはいえ、カウント球や勝負球としても、頼れるボールがひとつあるというのは大きな長所である。
試合は立ち上がりからテンポの良い投球を展開し、浜田打線を圧倒。2回にはヒット、5回には死球で先頭打者の出塁を許すも、その後は落ち着いた投球で無失点に抑え込んでいる。
活発な味方打線が7点をリードしたということもあって、5回でマウンドを降りているが、被安打2・死球2も3奪三振で無失点。危なげない投球で、チームの勝利に貢献している。
そして、7月30日に行われた大社との決勝戦では、島根大会で初となるノーヒットノーランを達成。奪三振は15個というまさに"圧巻"のピッチングで甲子園出場を決めた。
映像で見る限り、準決勝と比べてフォームに躍動感があり、ボールの勢いも感じられた。故障からの復活途上ということを考えると、まだまだここから調子を上げていくことも十分に考えられる。
夏の甲子園でも、島根大会の準決勝や決勝で見せたような快投に期待したい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所