オリックス躍進の立役者になった若き左腕投手
首位を走るオリックスの立役者となっている選手のひとりが、今季2年目となる宮城大弥だ。
開幕から先発ローテーション入りを果たすと、多彩な変化球と年齢を感じさせない老獪な投球術で打者を翻弄。8月14日には桑田真澄以来、34年ぶりとなる10代投手によるリーグ最速の10勝目をマークし、続く8月21日にはハーラートップの11勝目を飾るなど、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いである。
宮城は2年前のドラフト会議でオリックスから1位指名を受けたが、当時は佐々木朗希(大船渡→ロッテ)や奥川恭伸(星稜→ヤクルト)といった本格派右腕が人気を集めていた。しかし、蓋を開けてみればこの世代で最初に飛躍したのは宮城だった。歴史的に見ても、プロで大成しにくいと言われている高卒左腕ゆえに、この活躍は目を見張るものがある。
約5分の1が一軍登板なしのまま引退
ここで調べてみたのは、1989年(平成元年)以降、ドラフト1位で入団した高卒左腕投手の通算成績。該当したのは宮城を含めて26名いた。
※チーム名は当時のもの、現役選手の通算成績は2021年8月22日現在のもの
※カッコ内はドラフト年
※☆マークは甲子園優勝投手
<1990年代:8投手>
・石井一久(ヤクルト/1991年)
通算成績:524試合登板 181勝139敗4S 防3.80(日米通算22年)
・安達智次郎(阪神/1992年)
通算成績:一軍登板なし(NPB通算7年)
・嘉勢敏弘(オリックス/1994年)
通算成績:136試合登板 3勝7敗 防4.84(NPB通算10年)
野手通算成績:272試合 打率.135 0本塁打 9打点 2盗塁
・前川勝彦(近鉄/1996年)
通算成績:149試合 登板31勝45敗1H 防5.26(NPB通算10年)
・伊藤彰(ヤクルト/1996年)
通算成績:一軍登板なし(NPB通算4年)
・川口知哉(オリックス/1997年)
通算成績:9試合登板 0勝1敗 防3.75(NPB通算7年)
・正田樹(日本ハム/1999年)☆
通算成績:123試合登板 25勝38敗5H 防4.70(NPB通算11年)
・河内貴哉(広島/1999年)
通算成績:166試合登板 16勝28敗23H 防5.06(NPB通算16年)
<2000年代:11投手>
・高井雄平(ヤクルト/2002年)
通算成績:144試合登板 18勝19敗1S17H 防4.96
野手通算成績:968試合 打率.291 66本塁打 386打点 41盗塁(NPB通算19年目・現役)
・柳田将利(ロッテ/2005年)
通算成績:一軍登板なし(NPB通算3年)
・片山博視(楽天/2005年)
通算成績:206試合登板 8勝16敗48H 防3.13(NPB通算12年)
・村中恭兵(ヤクルト/2005年)
通算成績:199試合登板 46勝55敗6H 防4.30(NPB通算14年)
・辻内崇伸(巨人/2005年)
通算成績:一軍登板なし(NPB通算8年)
・吉川光夫(日本ハム/2006年)
通算成績:219試合登板 55勝70敗3S3H 防3.96(NPB通算15年目・現役)
・田中健二朗(横浜/2007年)☆
通算成績:208試合登板 11勝13敗1S50H 防3.86(NPB通算14年目・現役)
・中崎雄太(西武/2008年)
通算成績:15試合登板 0勝0敗 防8.04(NPB通算8年)
・赤川克紀(ヤクルト/2009年)
通算成績:76試合登板 14勝20敗 防4.17(NPB通算7年)
・岡田俊哉(中日/2009年)
通算成績:335試合登板 19勝20敗19S62H 防3.40(NPB通算12年目・現役)
・菊池雄星(西武/2009年)
通算成績:222試合登板 88勝68敗1S 防3.32(日米通算12年目・現役)
<2010年代:7投手>
・松本竜也(巨人/2011年)
通算成績:一軍登板なし(NPB通算4年)
・森雄大(楽天/2012年)
通算成績:28試合登板 3勝6敗 防4.58(NPB通算9年目・現役)
・松井裕樹(楽天/2013年)
通算成績:389試合登板 22勝40敗165S61H 防2.53(NPB通算8年目・現役)
・小笠原慎之介(中日/2015年)☆
通算成績:82試合登板 22勝30敗 防3.96(NPB通算6年目・現役)
・寺島成輝(ヤクルト/2016年)
通算成績:36試合登板 1勝1敗3H 防4.37(NPB通算5年目・現役)
・堀瑞輝(日本ハム/2016年)
通算成績:151試合登板 10勝10敗3S51H 防4.36(NPB通算5年目・現役)
・宮城大弥(オリックス/2019年)
通算成績:19試合登板 12勝2敗 防2.26(NPB通算2年目・現役)
通算50勝を挙げた投手が3人出ているが、一方で一軍登板がないままキャリアを閉じた選手も5人いるなど、当たり外れが大きい印象。そもそもドラフト会議がはじまった1965年以降、通算100勝以上を挙げた高卒ドラ1の左腕投手は江夏豊(1966年/阪神)と石井一久(1991年/ヤクルト)のたったふたりだけである。
一方で、近年目立つのがリリーフとして活躍する投手。2013年のドラフト会議で楽天に1巡目指名された松井裕樹は、いまや球界を代表するクローザーに成長し、岡田俊哉、堀瑞輝も侍ジャパンのユニフォームを着てブルペンを担った経験がある。
急成長を遂げた宮城大弥は、今後どんな投手に成長を遂げるのだろうか。おおいに注目していきたい。
文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)