移籍後13試合で5発!
パイレーツの筒香嘉智が現地時間29日(日本時間30日)、移籍後5本目となるアーチを本拠地の上空に描いた。
カージナルス戦に「6番・右翼手」で先発出場した筒香。4回裏に満塁のチャンスで打席が回ってくると、レフトへ同点犠飛を打ち上げチームに貢献。しかし、それだけでは終わらないのが今の筒香だった。
2点ビハインドの9回裏、一死一、二塁でこの日の第4打席を迎えると、甘く入った初球の変化球をジャストミート。高く舞い上がった打球はライトスタンドを越えて場外へと消えた。
今季が渡米2年目の筒香。開幕から打撃はさっぱりで、レイズとドジャースからそれぞれ戦力外通告を受けた。それでも腐ることなく、マイナーで徐々に調子を取り戻し、今月16日に今季3球団目となるパイレーツと契約を交わした。
加入から僅か2週間、出場13試合ですでに5本塁打を含む9安打を放っている筒香。9安打中、単打は1本だけで、パイレーツではなんと「1.424」という驚異的なOPS(打者を評価する指標のひとつで、長打率と出塁率を足した数字)を残している。この2週間の打撃を見ると、本当に同じ選手なのか疑いたくなるほどだ。
パイレーツ移籍後に突如“覚醒”した理由はあるのだろうか。筒香の昨季と今季移籍前後の成績を、打席内の球数別で比較してみた。
【2020年(レイズ)】
2球目以内:31打席 30打数8安打(打率.267)、2本塁打
3球目以降:154打席 127打数23安打(打率.181)、6本塁打
⇒2球目までに結果が出る確率 16.8%
【2021年パイレーツ移籍前(レイズ&ドジャース)】
2球目以内:22打席 22打数6安打(打率.273)、0本塁打
3球目以降:96打席 81打数10安打(打率.123)、0本塁打
⇒2球目までに結果が出る確率 18.6%
【2021年パイレーツ移籍後】
2球目以内:12打席 11打数5安打(打率.455)、3本塁打
3球目以降:19打席 16打数4安打(打率.250)、2本塁打
⇒2球目までに結果が出る確率 38.7%
渡米1年目の昨季は、コロナ禍のなか60試合制での開催。打率は2割を切ったが、限られた打席数で8本塁打を放った。
注目したのは、打席内で2球目までに結果を残していた割合だ。1年目は16.8%なので、6打席中5打席は相手投手に3球以上投げさせていたことになる。もともとDeNA時代は三振・四球ともに多いタイプで、あまり早打ちというイメージはない。昨季も数字上はそういう傾向がみられた。
今季もレイズとドジャースでは18.6%とほぼその割合は変わらず。たとえ早いカウントで手を出しても、空振りかファウルというケースも多かった。
しかし、パイレーツ移籍後はこの傾向が激変。まだ31打席とサンプル数は少ないが、31打席中、38.7%にあたる12打席で2球目までに結果を出している。昨季と今季途中までの慎重さ?は影を潜め、パイレーツでは早いカウントから手を出して、しかもそれが好結果を生んでいる。
昨季、レイズが筒香を獲得した際、その出塁率の高さが評価されたといわれている。そのためか、1年目は「しっかりボールを見極めよう」という意識が強く働きすぎているようにも見えた。
2度の戦力外というドン底を味わった日本の主砲。好調を維持するカギは、積極的に早いカウントから打ちに出ることかもしれない。
文=八木遊(やぎ・ゆう)