コラム 2021.09.07. 15:15

近代野球ではかなりのレアケース?!「先発登板ゼロの2桁勝利投手」誕生か

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現役ドラフトでDeNAに移籍が決まった佐々木千隼 (C) Kyodo News

ロッテのブルペン支える佐々木千隼がすでに8勝


 混戦模様のパ・リーグのなかでロッテの勢いが増してきた。特に、462得点、97本塁打、90盗塁はリーグ1位と、長打と足を絡めた攻撃がさえ渡っている。

 一方、投手陣のチーム防御率3.93はリーグワースト2位と、打線に頼る場面が多いのが現実(数字はすべて9月6日終了時点のもの)だ。ただ、そのなかで奮闘しているリリーフ陣の一角が、セットアッパーを務める佐々木千隼だ。

 プロ5年目を迎えた佐々木の今季は、開幕からブルペンに定着。持ち味のシンカーを武器に打たせて取る投球術が光り、ここまで40試合に登板。リーグ3位となる17ホールドで、防御率は「1.05」という素晴らしい数字を残している。何よりも、積み重ねた勝ち星は2桁も視野に入る「8」。これはリーグ4位タイとなる。

 佐々木の今季の先発登板は「0」だ。よって、すべて中継ぎとして登板した際に記録した勝ち星となる。中継ぎ投手でありながら現時点でチーム勝ち頭の佐々木千は、このままいくと2010年の浅尾拓也以来となる先発登板ゼロでの2桁勝利も現実味が増してくる。

▼ 佐々木千隼の今季
・40登板(43回)
・8勝0敗17ホールド1セーブ
・防御率1.05

達成者はごく僅かだが、ビッグネームが揃う


 投手の分業化が進んだ近代野球では、先発登板ゼロの2桁勝利はなかなか実現できるものではなくなってきている。そんななか、この記録を達成した投手は、過去にどんな選手がいたのか。調べたのは、2000年(平成12年)以降において、「先発登板ゼロ」で2桁勝利を達成した投手のシーズン成績だ。該当したのは4名いた。

<2000年>
▼ 五十嵐亮太(ヤクルト)

56試合登板 11勝4敗1S 防御率3.11

<2005年>
▼ 岡本真也(中日)

57試合登板 10勝3敗1S17H 防御率3.14

<2008年>
▼ 山口鉄也(巨人)

67試合登板 11勝2敗2S23H 防御率2.32
※新人王受賞

<2010年>
▼ 浅尾拓也(中日)

72試合登板 12勝3敗1S47H 防御率1.68
※最優秀中継ぎ獲得

ピッチャーが打者としての役割を担うため、代打などで継投のケースが増えるからなのか、すべてセ・リーグの投手だった。しかも全員が達成年度には50試合以上に登板し、通算でも300試合以上に登板。まさにタフな投手ばかりである。

 「先発登板ゼロの2桁勝利」を達成した年度においては、所属チームはすべてAクラス入りを果たし、山口がいた巨人と浅尾がいた中日は、その年のペナントレースを制している。強いチームには優秀なセットアッパーがいるという、まさに現代野球の特徴が出ているようにも思う。

 補足になるが、中継ぎをメインにしながら2桁勝利を挙げるも、先発登板がゼロではなかったため条件から外れた投手が3名いた。

<2000年>
▼ 岩瀬仁紀(中日)

58試合登板 10勝5敗1S 防御率1.90(先発登板1)

<2000年>
▼ 小林雅英(ロッテ)

65試合登板 11勝6敗14S 防御率2.13(先発登板3)

<2010年>
▼ 榊原諒(日本ハム)

39試合登板 10勝1敗6H 防御率2.63(先発登板1)
※新人王受賞

 少し他の投手と異なるのが、榊原諒ではないだろうか。大卒2年目のシーズンは主にロングリリーフとして活躍。50試合以下の登板数で10勝を挙げるなど、実力はもちろんのこと打線の援護などにも恵まれた印象がある。新人王を受賞し、翌年も防御率1点台で23ホールドと活躍したが、故障が多くなり、2015年には現役を引退。7年間という現役生活だった。


文=福嶌弘(ふくしま・ひろし)

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