個人タイトル争いも激化!
9月中旬を迎え、メジャーリーグのプレーオフ争いも佳境に入ってきた。
それと同時に熱を帯びているのが、個人タイトルを巡る争いだ。
中でも日本で注目を集めているのが、大谷翔平(エンゼルス)とウラジーミル・ゲレロJr.(ブルージェイズ)、そしてサルバドール・ペレス(ロイヤルズ)が火花を散らすア・リーグの本塁打王争いだろう。現地時間14日の試合を終えて、ゲレロが45本でトップを走り、それを大谷が44本、ペレスが43本と1本差で追う展開となっている。
激戦となっているのは、両リーグの首位打者争いも同じだ。ア・リーグはゲレロが.3155で本塁打とともに打率でも先頭を走っているが、2位のマイケル・ブラントリー(アストロズ)がわずか“5毛”の差で追撃中。さらに3位のユリエスキ・グリエル(アストロズ)も.314と続いており、二冠を目指すゲレロにアストロズ勢が迫っている。
また、一方のナ・リーグもトレー・ターナー(ドジャース)が.318でトップに立っているが、ここもニック・カステラノス(レッズ)が.314で2番手、フアン・ソト(ナショナルズ)も.313でその次と、こちらも独走を許しておらず、最後の最後まで目が離せない争いが続きそうだ。
メジャートップの打率ながらタイトルレースから除外?
そんな中、今回注目したいのが、本来であればいるはずの首位打者争いで「蚊帳の外」にいる男…。今季の打率が.322を誇るスターリング・マルテ(アスレチックス)である。
今季はここまで104試合に出場。打席数は455なので規定打席も満たしており、公式サイト『MLB.com』の「STATS」から打率でソートをかけると、メジャー全体で見ても一番上に名前が出てくる選手だ。
しかし、両リーグで唯一.320台の打率を残しながら、マルテが今季の首位打者に輝くことはない。
なぜなら、マルテは7月下旬にマーリンズからアスレチックスへ、リーグをまたぐ移籍をしているからだ。
移籍前のマーリンズでは打率.305。低迷するチームの中で孤軍奮闘と言えるはたらきを見せていた。
ところが、トレード期限を前にプレーオフを争うアスレチックスへと移籍。自身初となったア・リーグの舞台で、男は1カ月半の間に.345というハイアベレージを残し、新天地でも主軸の一人としてチームに貢献している。
ということで、今季成績「.322」(※現地14日時点)は両リーグをまたいでの成績。マルテはこのままメジャー全体トップの打率でシーズンを終えても、首位打者に輝く可能性はゼロというわけだ。
もしマルテの移籍先がナ・リーグのチームで、同様の成績を残していたら、今ごろは首位打者争いをリードする存在だった。しかし、こればかりはマルテにはどうすることもできない。
足でも魅せているマルテ
実はこのマルテ、両リーグでトップを誇るのは打率だけではない。
マーリンズで22盗塁に加え、アスレチックスでも23盗塁。合計45盗塁は、ウィット・メリーフィールド(ロイヤルズ)の40盗塁をおさえてこちらもメジャー全体トップの数字である。
ちなみに、リーグをまたいでの移籍によって、タイトルを逃したという選手は過去にもいる。
1997年には、あのマーク・マグワイア(アスレチックス→カージナルス)が両リーグ最多の58本塁打を放っているが、自身2度目の本塁打王とはならず。
それでも、マグワイアは翌年に70本塁打を放って当時のシーズン新記録を樹立。さらに2年後にも本塁打王に輝くなど、リベンジを果たしている。
来月に33歳を迎えるマルテは、これまで主要タイトルとは無縁…。
今季の“無冠”も確定的だが、せめて自身5度目となるプレーオフは経験しておきたいところ。アスレチックスをより高みへと導くような大暴れに期待がかかる。
文=八木遊(やぎ・ゆう)