残された時間はわずか…
9月も折り返し地点を過ぎ、“運命の一日”まで1カ月を切った。
今年は10月11日(月)に開催されるプロ野球のドラフト会議。先月までは高校生の躍動が大きな注目を集めたアマチュア球界だが、9月はその注目が大学へと移る。
北海道や東北では8月中から開幕しているところもある、大学野球の秋のリーグ戦。
今年はドラフト会議の開催日が例年と比べて早いため、プロ入りを狙う大学生のドラフト候補にとってアピールのチャンスはそう多くない。
ということで、ここからは1カ月後を盛り上げそうな大学生の注目ドラフト候補にフォーカス。今回は「投手」を紹介していく。
筑波大・佐藤と西日本工大・隅田が人気
昨年は早川隆久(早稲田大→楽天1位)に4球団が競合したのをはじめ、伊藤大海(苫小牧駒沢大→日本ハム1位)と入江大生(明治大→DeNA1位)が一巡目の入札で登場。
いわゆる“ハズレ1位”も含めると、鈴木昭汰(法政大→ロッテ1位)や平内龍太(亜細亜大→巨人1位)、木澤尚文(慶応大→ヤクルト1位)も加えた計6人の大学生投手が1位でプロ入りした。
その一方で、今年は高校生投手に好素材が多いこともあり、「上位指名間違いなし」と言い切れる選手は少ない印象を受ける。
そんな中で人気を集めそうなのが、佐藤隼輔(筑波大)と隅田知一郎(西日本工大)のサウスポー2人であるが、春のリーグ戦は少し対照的な結果に終わった。
佐藤は開幕戦こそ完封勝利をあげたものの、その後は調子を落としており、最終的には2勝4敗と負け越している。下級生時代の実績があるだけに、そこまで大きなマイナスとは感じないが、この秋も最初の登板で良いボールを投げ込みながら負傷降板と、今のところ不安を残す形となっている。
その点、隅田は大学選手権の初戦で敗れたものの、ソロによる1失点で14奪三振という見事なピッチングを披露。その相手が全国屈指の強豪である上武大だったということもあって、むしろ評価を高めたと言っていい。
今秋も上々の滑り出しを見せているだけに、こちらはそのまま評価を上げて1位指名の可能性も高くなってきた。
佐藤・隅田以外にも好左腕が多い
筆頭株として取り上げた2人以外にも、今年の大学生投手は“サウスポー”が豊作。山下輝(法政大)、鈴木勇斗(創価大)、黒原拓未(関西学院大)、桐敷拓馬(新潟医療福祉大)などが有力候補となっている。
なかでも、この春に結果を残したのが黒原と桐敷だ。
関西学院大の黒原は8試合に登板して5勝、防御率0.70と圧巻の成績。MVP・最優秀投手・ベストナインの投手三冠を達成している。
大学選手権でも2試合に先発して安定した投球を披露。上背はないが140キロ台後半のスピードもあり、躍動感溢れるフォームが魅力である。
また、新潟医療福祉大の桐敷は自己最多の5勝、71奪三振をマーク。大舞台での経験こそないものの、三振を奪えるサウスポーというのはやはり魅力だ。
このほか、法政大の山下はリーグ戦通算4勝と結果こそ出ていないとはいえ、スケールの大きさは抜群。
創価大の鈴木も、チームメイトの新型コロナウイルス感染によって春のリーグ戦は途中で出場辞退となる不運はあったが、昨年秋に見せたストレートの勢いは圧巻だった。ともにこの秋次第で浮上してくることは十分に考えられる。
右投手のドラフト上位候補は…?
一方、右投手で上位候補として名前が挙がるのが、椋木蓮(東北福祉大)、長谷川稜佑(青森大)、三浦銀二(法政大)、北山亘基(京都産業大)の4人だ。
なかでも春に評価を上げたのが長谷川と北山の2人。
青森大の長谷川は、最初の登板となった青森中央学院大戦で19奪三振の完封勝利と圧巻の投球を見せると、続くノースアジア大戦では最速155キロもマーク。
細かい制球力には課題が残るものの、ボールの威力は今年の候補の中でも1、2を争うレベルで、昨年秋からの急成長ぶりも高く評価できる。
京都産業大の北山も、開幕から2試合連続完封勝利をあげるなど自己最多の4勝をマーク。ストレートはコンスタントに150キロを超え、制球力とスタミナも申し分ない。
少し癖のあるフォームをどう評価するかがポイントとなりそうだが、関西ではNo.1と言える存在だ。
総合的に見て、最も高い評価になりそうな右投手は東北福祉大の椋木か。
リーグ戦では終盤に調子を落としたが、それでも大学選手権では最速154キロをマーク。コントロールの良さにも定評があり、リリーフであれば即戦力に近い投手だといえる。
また、実績という意味では、東京六大学で1年春から活躍している法政大の三浦がNo.1だ。
上背がなく、凄みには欠けるものの、安定感は大学球界でも屈指。春のリーグ戦では、大学日本一となった慶応大を相手に9回を無安打、1失点という快投も見せている。実績を重視する球団には、指名しやすい存在と言えるだろう。
ダークホース的存在も…
さらに右投手でもう1人、春から評価を高めているのが赤星優志(日本大)である。東都の二部で9試合に登板し、防御率は驚異の0.78をマーク。チームを一部昇格に導く立役者となった。
最速152キロというスピードよりも、あらゆるボールを操る器用さが持ち味。先発でもリリーフでも力を発揮しており、とにかく“実戦力”の高さを感じる。
この秋は初となる東都一部でのピッチングとなるが、いきなり初戦の国学院戦で完封勝利の離れ業。迫りくるドラフトに向けて、秋も良いスタートを切った。
この他にも、古田島成龍や山崎凪(ともに中央学院大)、小向直樹(共栄大)、森圭名(青山学院大)、川船龍星(拓殖大)、伊藤稜(中京大)、松井友飛(金沢学院大)などは、この秋次第で急浮上してくる可能性を秘めている。
彼らの最後のアピールにもぜひ注目してもらいたい。
☆記事提供:プロアマ野球研究所